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2018年7月20日(金)

介護現場で広がるハラスメント

和久田
「介護の現場で広がる深刻な問題です。」

職員7割「ハラスメントを受けている」

腕にできた、大きなアザ。
介護施設で働く職員が、利用者から受けた暴力によるものです。

介護職員
「顔を殴られたり蹴られたりは日常茶飯事。
本当に不条理だ。」

こうした暴力やセクハラなどのハラスメントについて、全国の介護職員らで作る労働組合が、およそ8万人を対象に大規模調査を実施。
先月(6月)その衝撃的な結果が明らかになりました。
利用者などからハラスメントを受けていると答えた職員が7割以上にのぼったのです。

労働組合 事務局長
「率直にここまで多いということは考えていませんでした。
異常としか言いようがない。」

いま介護の現場で、何が起きているのでしょうか。

介護施設職員「不条理だと思う」

ハラスメントの実態はどのようなものか。
今回の大規模調査に答えたある介護施設の職員に話を聞くことができました。

介護職員
「顔を殴られたり首をぐっとつかまれたり、内出血になったりはよくあります。」

暴力を受けるのは、入浴の介助にあたる時が多いといいます。
例えば、認知機能に衰えがないある男性を介助した時。
服を脱がせようとすると、突然、殴る蹴るの暴行を繰り返し受けました。

介護職員
「やめてといっても全然聞いていない。
聞き入れてもらえない。
怖いと思った。」

そして最も苦しんでいるのは、一部の男性利用者たちからのセクハラ。
密室になってしまうトイレで多いと言います。

介護職員
「抱きつかれたり胸を触られたりは日常茶飯事。
陰部を触れと男性の客に言われたのは耐えられない。
本当に嫌でした。
お客様として対応しなければならない、ルール、決まり。
本当に不条理だと思う。」

ハラスメント 原因は?

和久田
「取材した、金沢放送局の河西ディレクターとお伝えします。」

高瀬
「暴力やセクハラの実態は深刻だと思いましたが、そうした行為をしてしまう人は、状況が分からない認知症の方などが多いのでしょうか?」

河西大樹ディレクター(NHK金沢)
「そうでもないんです。
実は今回の組合の調査では、認知症の人によるハラスメントの事例はわずかということも分かりました。
利用者の多くがハラスメントを行っているということではなく、一部の人が複数の職員に対してハラスメントを行なっているということが、7割以上の職員が被害を受けているという衝撃的なデータにつながっていると組合はみています。」

和久田
「介護の現場でこうした暴力やセクハラが起きてしまうというのは、どうしてなんでしょうか。」

河西ディレクター
「はい、こちら。
ハラスメントの実例の研究を続けている、城西国際大学の篠﨑良勝准教授に話を聞きました。
先生によりますと『生まれ育ったところから施設に移るなど、環境の変化にストレスを感じていたり、出来ていたことが出来なくなりプライドが傷つくなどしてストレスを抱えてしまい、こうしたストレスを身近な職員に、はけ口としてぶつけてしまっていることが背景にあるのではないか』とみています。
服を脱がすときに起きている暴力なども、このような心理が働いているのではないかということです。
こうした原因と向き合い、ハラスメントを減らそうする模索を取材しました。」

ハラスメントを防ぐカギは

石川県にある介護施設です。
ここでは “利用者のストレスを減らせば、ハラスメントを防ぐことができる” と考えました。
そのために始めたのが、介護を行う前のコミュニケーションの取り方を工夫することです。
これから行う介護についてこれまで以上に細かく説明したり、気持ちがほぐれるように目をあわせながら一人一人にあった話題作りを心がけました。
その結果、利用者からの暴力やセクハラが大きく減りました。

介護施設 管理者 八田直子さん
「しっかり何をするか伝えるのは大事。
(利用者との)信頼関係ができる。」

改善しない時 行政へ相談も

こちらは、デイサービスや訪問介護など複数の事業所を運営している都内の会社です。
自分たちで解決できない場合の、ハラスメントの対処方法を新たに決めました。
現場の管理者が情報を集め、実情を家族に細かく説明。
積極的な協力を求め、ともに改善をめざします。
それでも改善しない場合、事業所を管轄する行政に相談します。
その上で、最悪の場合、会社の判断で退去をしてもらうことも視野に入れ、職員を守ろうというのです。

介護事業会社 熊谷恵津子さん
「(ハラスメントは)仕事をしていく上で起きること。
会社や事業所としてどういうふうに当事者(職員)を支えていくのかは重要。」

施設と家族 歩み寄り協力を

高瀬
「ただでさえ厳しい労働環境であると言われる介護職が、こういったハラスメントによってますますなり手が減ってしまうことが非常に心配されると思うのですが、どういった解決策が考えられますか?」

河西ディレクター
「利用者のストレスを和らげ、ハラスメントを減らすために重要だと言われていることが、“施設と家族が歩み寄り協力していく”ことです。
施設側は自分たちの取り組みを真摯に見直し、一方の家族側も施設に任せっぱなしではなく、協力して解決する姿勢を持つことが重要です。
実際に、家族から利用者の情報を聞き出し、介護や声かけなどに生かしてハラスメント行為を減らした事例も多くあります。
ただ、この問題は簡単なものではありません。
調査にあたった労働組合では、相談窓口の充実や対処法のマニュアルの作成などを国や自治体に提言し、対策の仕組み作りを目指していくことにしています。」

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