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2018年7月1日(日)

ため池が決壊 大繁殖ヌートリアの脅威

新井
「今、各地の川やため池などの水辺で、ある『外来種』の動物が深刻な被害をもたらしています。」

小郷
「一体、その動物とは?追跡取材しました。」

外来種“ヌートリア” 新たな脅威

ここ数年、その外来種の目撃情報が増えている山口県山口市。
連日、調査が行われています。

「ヌーが上がった跡です。」

市の職員たちの呼び名は、「ヌー」。
「ヌートリア」です。

大きいもので体長は70センチ。
国内で最も大きいネズミの仲間で、川辺や土手など、水辺の近くに巣穴を作ります。
南米が原産で、戦時中、毛皮を取るために輸入されたものが逃げ出して野生化しました。
当初は西日本を中心に目撃されていましたが、今では全国に広がっています。

繁殖に伴って、農作物の被害が拡大。

被害を受けた農家
「朝見てかじられている。
10本、20本くらいか。」

キュウリやトマトなどを栽培するこの農家。
畑の2割ほどが、ヌートリアによる被害を受けたといいます。
被害の額は、全国で年間およそ6,500万円に上っています。

畑の隣に建つ家では、こんな被害も…。

家に住む女性
「この真下。」

上からのぞくと…。
ブロック塀の真下からヌートリアが頭を出していました。
家の下に巣穴を作っていたのです。

家に住む女性
「何か動くのが見えた、下を向いたらヌートリアがいた。
ショックです。
家の下のほうまで巣穴が続いている。
最悪の場合、崩れるだろうなと。」

危機感を強めた山口市。
3年前からわなをしかけ、駆除に乗り出しました。

山口市の職員
「いますね。」

1日1頭ほどのペースで捕獲していますが、被害は増えるばかりだといいます。

山口市 有害鳥獣対策室 伊藤辰朗室長
「農作物被害の報告が増加している。
対策として、山口市としては積極的にヌートリアの捕獲を行っている。
異常な状態と思う。」

さらに、より深刻な被害をもたらす可能性も指摘されています。

全国各地でヌートリアの被害を調査している、立澤史郎さんです。
注目しているのは、ヌートリアの巣穴。

北海道大学大学院 立澤史郎助教
「手で掘るため、形状が三角形。
これだけの大きさで、まっすぐな巣穴を掘るとなると、ヌートリアしかいない。」

この巣穴が、堤防やため池の決壊につながると、立澤さんは指摘します。
その仕組みです。
ヌートリアは何世代にもわたって水辺で巣穴を掘り続けるため、土手には空洞が広がっていきます。
大雨などで増水すると、そこから崩れることがあるというのです。

過去には、兵庫県加西市で、ため池が決壊。
土手に穴が空き、そこから水が流れ出しました。

立澤さんはヌートリアの巣穴から広がったと考えています。
巣穴が見つかり、対策を迫られた地域も…。

ため池管理者
「堤防が崩れてしまう。
水が漏れることが、いちばんの心配事。」

住宅地のそばにある、このため池。
決壊すれば大きな被害が出るおそれがありました。
そこで住民たちは、数百万円かけて土手をコンクリートで固める工事を行うことにしたのです。

北海道大学大学院 立澤史郎助教
「外からは全く見えないが、中(の巣穴)がどんどん広がって、堤体自体が崩れて周りが水浸しになる。
長くヌートリアが定着している場所は、災害が起こるリスクが高まる。」

全国にあるため池は、およそ20万か所。
人気がない水辺を好むヌートリアにとって、ため池は絶好の住みかになります。
専門家は、過疎化によって人の目が届かないため池が増えれば、決壊のリスクも高まると指摘しています。

山口大学大学院 赤松良久准教授
「近年よくある豪雨のとき、水がどんどん上がっていく。
圧力が増えて、崩れやすくなる。
(ヌートリアが)どんどん増えていく可能性もある。
穴が増えれば増えるほど、どんどん危険になる。
注意すべき。」

取材:森 俊太(NHK山口)



小郷
「水害を引き起こすリスクがあるというのは、初めて知りました。」

新井
「取材した山口市では、3年で1,000頭近く捕まったそうですが、全国的な調査は行われておらず、詳しい数は分かっていないということです。」

小郷
「実態の把握など、早急な対策が必要ですね。」

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