これまでの放送

2018年6月18日(月)

“DIYバイオ”自宅で手軽に生物科学の研究!?

和久田
「続いては廣田アナウンサーとお伝えします。」

廣田
「まずは、こちら。
『DIY』と『バイオテクノロジー』がくっついた、『DIYバイオ』についてお伝えします。
生物科学の実験や研究を、自宅などで手軽にする人が、今、アメリカを中心に増えているんです。」

トマトに牛肉のうまみの遺伝子=ステーキ味!?

高瀬
「自宅で何をするんですか?」

廣田
「例えば、こちら。
カリフォルニア州に住む18歳の男性。
この微生物は『光るクラゲの遺伝子』を組み込んだことで、光るんです。


こちらは、酵母の遺伝子を改変した『光るビール』です。

さらに、この男性が作り出したトマトは、牛肉のうまみの元になる遺伝子を組み込んでいて、ステーキ風の味がするそうです。」

和久田
「どんな味がするんでしょう。
まさに、部屋のベッドの隣でやっていましたけど、こんなことをできてしまうんですね。」

廣田
「こんなことをやっている方もいます。
共同実験室で市民グループが取り組んでいるのは、糖尿病の治療薬『インスリン』を安く作る研究です。
発展途上国の患者などを救いたいと考えています。」

高瀬
「単なる理科の研究ではなく、実にさまざまな研究をしている人がいるんですね。」

廣田
「DIYバイオ、日本でもユニークな挑戦をしている人たちがいます。」

細胞を培養し食肉を作るプロジェクト

週末、都内の雑居ビルの一室に集まった人たち。
真剣に議論しているのは…。

「自宅で肉を培養する方法とか、そんなことやってます。」

牛や鳥の細胞を培養して、食肉を作ろうというプロジェクトです。

プロジェクトの代表 羽生雄毅さん
「今の畜産が抱える問題を解決しようという大きな流れ。
なんですがゆくゆくは『自宅で肉を育てる』みたいなものを実現しようとしている。」

培養肉ハンバーグ 最先端の再生医療技術を応用

「そんなこと出来るの?」と思ってしまいますが、実は5年前(2013年)、オランダの大学教授が、世界で初めて培養した肉を披露したんです。
これが、培養した肉のハンバーグです。

科学ジャーナリスト
「本物の肉みたい。」

培養したのは、牛の筋肉から取った幹細胞。
最先端の再生医療の技術を応用することで、実現しました。
牛を殺すことなく食肉を作り出せる、画期的な技術の誕生です。

今、世界中のバイオ・マニアやベンチャー企業が、こぞって研究に乗り出しています。
将来、食糧革命を起こせると、投資家たちも期待を寄せています。

アメリカの投資会社 アレックス・コベリアンさん
「ハンバーグ1枚分のコストは、大きく下がったとはいえ、2,000〜3,000ドルかかるので、まだ市場に参入できるレベルではありません。
でも、将来的には普通の肉と同じか、それよりも安い価格になるでしょう。」

扇風機を遠心分離機に 自宅で手軽な実験

日本で挑戦しているのは、「ショウジンミート・プロジェクト」。
精進料理から取りました。
メンバーは、高校生から会社員、主婦まで、およそ40人です。

その一人、会社員の杉崎麻友さん。
大学院でバイオテクノロジーを専攻していました。
杉崎さんの実験室は、自宅のマンション。
リビングの一角で、鶏肉の細胞を培養しています。
平日は外資系の企業でITコンサルタントをしている杉崎さん。
帰宅して細胞の成長を見るのが、一番の楽しみです。

杉崎麻友さん
「細長い形のこういったところが生きた細胞です。
頑張って伸び伸び育とうと、生きようとしてくれているのがけなげでかわいいなと。」

杉崎さんは、今は莫大なコストを下げるために、いろいろな工夫を試しています。
高価なものは、1台数百万円する培養装置。
杉崎さんは、簡易的なものをネットショッピングで5万円で買いました。
培養に大切な二酸化炭素の量は、重曹水を使って調整します。
細胞を取り出すときに使うのは、扇風機。

遠心分離機の代わりです。
この日、培養の土台にできないか試した「しみこんにゃく」を見ると…。

杉崎麻友さん
「やばい臭いがする。
これは失敗かな。」

手軽な実験で大きな成果を生み出せるかもしれない。
杉崎さんは多くの人に参加して欲しいと考えています。

杉崎麻友さん
「みんなで培養肉を作るための技術をどんどん磨いてきましょう。
効率よく細胞が増えていけるような実験系を確立させていきたいと思う。」

DIYバイオ ビジネス面でも注目

培養肉などのDIYバイオには、ビジネスとしての注目も集まっています。
この日開かれた、DIYバイオのセミナー。
商社や投資家など、およそ70人が参加しました。

「培養した細胞そのものが商品・製品になるパターンです。
150兆円の食肉市場を目指しているといった段階にあります。」

参加した投資家
「非常に大きな産業になると思っている。
バイオにおけるアップルなりマイクロソフトみたいな会社が、すでにそういった会社が(DIYバイオから)生まれてるのかもしれない。」

生命倫理にかかわる実験 個人で行うリスク

高瀬
「いやぁ、食肉・培養肉…。
やっぱり抵抗感がありますが。
ただ、いろんな人が取り組めば、画期的な技術が生まれてくる可能性もまた広がるということですね。」

廣田
「DIYバイオこれからどんどん聞くことも増えていくと思います。
今VTRに出てきた日本の人たちは法律にのっとっているんですが、急激に広がっているアメリカではこんな人も現れました。
これは、去年(2017年)You Tubeに公開された映像です。
腕に注射しているは、この男性が自分で設計した遺伝子。
筋肉を増強する可能性があるというものです。」

和久田
「大丈夫なんですか?」

廣田
「今のところ体に影響は出ていないそうですが、批判の声など、世界的な反響を呼びました。」

高瀬
「個人でヒトの遺伝子にまで手を出せるとなると、心配ですね。」

廣田
「この分野に詳しい早稲田大学の岩崎秀雄教授は、
「遺伝子改変には、思わぬ副作用の危険性や倫理的な課題もあり、慎重で真摯な姿勢が不可欠」
と指摘します。

今後、生命倫理に関わる実験を、個人が行うようになると大きなリスクを伴いますので、それをどう規制するのか、今から検討する必要がありそうです。」

和久田
「このDIYバイオについて、来週25日月曜日よる10時からの『クローズアップ現代+』で詳しく放送する予定です。
ここまで、廣田アナウンサーとお伝えしました。」

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