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2018年6月16日(土)

赤ちゃんを救う 胎児治療

おなかの中の赤ちゃんに重い病気があるとわかった時、あなたならどうしますか?

「決断力はいると思うけど、産むという選択をするのかな。」

「すごく悩む。
産むことが、その子の幸せになるかどうか。」

訪れる不安と悩み。
小さな命と家族にとって救いとなるかもしれない、新しい医療が出てきています。

新井
「それがこちら、『胎児治療』です。
生後すぐに亡くなる重い病気や、すぐに治療しても重篤な障害が残るおそれのある赤ちゃんを、おなかの中にいる間に治療する最先端の医療です。」

小郷
「胎児治療を行い、2年前に男の子を出産した、ある家族を取材しました。」

赤ちゃんを救う 胎児治療

リポート:池端玲佳記者(科学文化部)

元気いっぱいに遊ぶ兄弟。
弟の光生(みつき)くん。
生後まもなく亡くなってしまうおそれがある、極めて重い病気でした。

母親の貴子さんが光生くんの病気を知ったのは、妊娠6か月の時。
妊婦健診で受けた超音波検査がきっかけでした。

当時お腹の中にいた、光生くんの画像です。
肺が小さく、発育していません。
胃や腸が肺を圧迫していたためです。
横隔膜に穴があいていて、胃や腸が胸まで上がってきていたのです。
病名は、「先天性横隔膜ヘルニア」。
肺が発育せず、自力で呼吸ができない難病でした。

生まれてから手術をしても、90日間生きられる確率は、半分以下の40%。
助かったとしても、重い障害が残る可能性が高いと告げられた貴子さん。
苦しい日々を過ごしたといいます。

母親 貴子さん
「この子が元気に生まれてくるなら、自分はどうなってもいい。
できることなら何かしてあげたい、でもできないという葛藤。
すごくつらかったのが、何もできない時だったかな。」

そんな時、紹介先の病院で医師から提案されたのが、「胎児治療」でした。
その治療法は、貴子さんが驚くようなものでした。

まず、母親のおなかを通して、内視鏡のカメラがついた細い管を赤ちゃんの口から入れます。
そして、管の先につけたバルーンと呼ばれる小さな袋をふくらませて、気道を塞ぎます。

こうすることで、分泌される液体を肺にため、肺をふくらませるのです。
およそ1か月後にバルーンを外し、生まれてすぐに横隔膜の穴を塞ぐ手術をすることで、自力で呼吸ができるようになるというものでした。

国立成育医療研究センター 左合治彦医師
「やはり肺の発育が悪い子は、いくら生後手術をしても助けられない。
胎児治療がうまくいけば、(助からないケース)を避けられる。
うまく助けられるとともに、場合によっては人工呼吸器を使わなくても生きていける可能性があると、(胎児治療)を提示した。」

妊娠8か月で、胎児治療の手術を受けた貴子さん。
そして…。
手術は成功し、光生くんは無事誕生。
自力で呼吸し、障害も残りませんでした。

「胎児治療」は、光生くんと家族の運命を大きく変えました。

母親 貴子さん
「こんなに元気になると思わなくて。
大きい病気をしていたことを忘れてしまう。
(胎児治療が)選択肢としてあれば、妊娠中の心の支えになる。
前を向ける希望になっていくと思う。」

国内の胎児治療

小郷
「スタジオには、取材にあたった科学文化部の池端記者です。」

新井
「この『胎児治療』では、どのような病気を治すことができるんでしょうか?」

池端玲佳記者(科学文化部)
「こちらは、国内で胎児治療の対象となっている病気です。
一部ですが、公的な医療保険が適用される病気もあります。



そして、VTRにあった光生くんの『先天性横隔膜ヘルニア』については、現在、国際的な臨床試験の一環として治療が行われています。

さらに、欧米ではダウン症などの染色体や遺伝子の異常で起きる病気に対しても治療できないか、研究が進められています。」

小郷
「この『胎児治療』は今後、広がっていくのでしょうか?」

池端記者
「『胎児治療』は母体の安全管理も含め高い技術がいる新しい医療なので、国内でできる施設は限られています。
ただ、妊娠中におなかの赤ちゃんの病気を見つける『出生前検査』の技術は飛躍的に進歩していて、人工妊娠中絶につながると懸念されています。
世界的には、こうした懸念の解決策の1つとして『胎児治療』が進歩していて、イギリスなどは選択肢の1つとして、すでに一般に浸透してきているといわれています。
対象となる病気はいずれも重篤なものに限られますので、専門家は『検討する際には、まずは医師とよく相談してほしい』としています。」

小郷
「私もこれまでこの『胎児治療』という言葉すら知らなかったのですが、これから新たな選択肢として子どもを救う方法ができるとなると、本当に希望になりますね。」

池端記者
「この『胎児治療』で、新しい命が少しでも救われる方向に向かってほしいと思います。」

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