これまでの放送

2018年6月15日(金)

ピアニスト フジコ・ヘミング「人々の心に響くように」

高瀬
「明日(6月16日)世界を魅了してきた、ピアニストのドキュメンタリー映画が日本で公開されます。」

60代でプロに 異例の遅咲きのピアニスト

ピアニスト、フジコ・ヘミングさん。
60代で注目され、プロになった、異例の遅咲きのピアニストです。
80代になったいまも世界で活躍を続けています。
人生を投影したような深みのある演奏。
映画では、その音色が生み出されるまでの苦難に満ちた歩み、そして、貫かれてきた生きざまが描かれています。

テンポのゆらぎ、豊かで哀愁漂う独特の音色

和久田
「今日(15日)は、おはよう日本一の音楽通、林田アナウンサーとお伝えします。」

林田
「おはようございます。
実は私、10代の頃は、本気でピアニストを目指していた時期があったんです。
そんな私が、子どもの頃に衝撃を受けたのが、フジコさんのピアノなんです。
それまでは、楽譜通り正確に弾かなければいけないと思っていたんですが、フジコさんは、『音楽は弾く人そのものが表れる、だから間違っても良い、完璧な人間なんていないんだから』と仰って、いてこういう演奏を目指したいと思っていたんです。」

高瀬
「私もCDを持っているんですが、哀愁漂うというか、独特の音色ですよね。」

林田
「そうですよね、フジコさんならではのテンポのゆらぎ、豊かな音色がすてきですよね。
そんなフジコさんですが、父親はスウェーデン人、母親は日本人。
現在はパリと東京を拠点に、世界中で年間60本ものコンサートを行っています。
間もなく、デビューから20年。
映画の公開を前に、お話を聞き、その魅力に迫りました。」

人生は乗り越えなくてはならない苦難がある

数奇な運命をたどったピアニスト。
そう呼ばれるフジコさんに、まず伺ったのは…。

林田
「スクリーンにご自身のドキュメンタリーが初めて映し出される。
改めて、これまでの人生をどのように受け止めていらっしゃいますか?」

ピアニスト フジコ・ヘミングさん
「“雨降って地固まる”と言う。
何も雨が降らなかったら、ばさばさの土かもしれない。
そういうのを乗り越えなくてはならないんじゃない。
人生っていうのは。」

絶望…若くして聴力を失う「それでも自分にはピアノしかない」

スウェーデン人の父と、日本人の母の間に、ドイツで生まれたフジコさん。
5歳で東京に移り住みましたが、父親は日本を去り、母子家庭の中で、ピアノ教師の母から厳しく弾き方の手ほどきを受けます。
戦後の暮らしの中で、ピアノで身を立てようと練習に打ち込み、東京藝術大学に入学しました。

ところが、プロを目指して学んでいた矢先に、若くして、病気で聴力を失ってしまったのです。

ピアニスト フジコ・ヘミングさん
「私は絶望しましたね、これでどうしようかと思った。」

治療を受けましたが、右耳は聞こえないまま。
左耳の聴力も40%しか回復せず、プロへの道は断たれてしまいました。
「それでも、自分にはピアノしかない」フジコさんは、ピアノを教えて暮らしを立てながら、長年注目されることなく、ひとり弾き続けてきたのです。

ピアニスト フジコ・ヘミングさん
「(ピアノは)私の一部のようなもので、やめられなかったですね。」

転機が訪れたのは、60代になってから。
フジコさんの演奏と、波乱に満ちた人生がテレビを通して多くの人に知られるようになりました。
コンサートのチケットは即日完売。
苦しみを乗り越えて奏でる音楽が、人々の心に響きました。

どんな環境にあっても心を豊かに

それからおよそ20年。
映画では、多くの苦難を乗り越えてきた、フジコさんの素顔が描かれています。

映画の中に度々登場するのがフジコさんが子どもの頃に描いた絵日記です。
戦後の東京で、お腹をすかせて配給を受けたことなど、当時の厳しい暮らしがかいま見られます。
しかし、フジコさんが多く描いたのは、目にした美しいものや楽しいもの。
どんな環境にあっても、自分なりの楽しみを見つけ、心を豊かに暮らしていたのです。
自分を決してあわれまない。
目の前にある幸せを見つめ、楽しんで生きる。
今も変わらないフジコさんの生き方です。

ピアニスト フジコ・ヘミングさん
「パリでも、毎日のように犬を連れて、コーヒー屋の外の座るところに座って、ずっと人を観察するのがすごく楽しい。
おしゃれな人がいっぱい通るのを見るがの好き。」

波乱に満ちた人生に響く「鐘」の音

先週、東京で演奏を披露したフジコさん。
奏でたのは、フジコさんのテーマ曲、「ラ・カンパネラ」。
イタリア語で「鐘」を意味します。
波乱に満ちた人生に響く、美しい「鐘」の音。
人々の心に響くようにと、フジコさんは奏で続けます。

ピアニスト フジコ・ヘミングさん
「まだ弾かないとなって。
どん底からてっぺんまで経験した、ずいぶんおもしろい人生だと思う。
ますます最近、私はうまくなってきたと思う。
昔より、分かってきたから。
自分がやってることが確かだと分かってきた。」


林田
「フジコさんは今も、毎日4時間ピアノに向かっているということです。
映画は明日から上映されます。」

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