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2018年6月9日(土)

非正規労働者 相次ぐ契約更新拒否 背景に法改正

新井
「今、全国で、労働者が雇用契約の更新を一方的に拒否されたという相談が相次いでいます。
訴えているのは、非正規の労働者です。
背景には、雇用契約の期間を巡る法改正がありました。」

相次ぐ 契約更新拒否 非正規労働者に何が…

真砂久晃(まなご・ひさあき)さんです。
日本大学で、28年間、非常勤講師を続けてきました。
これまでは、1年ごとの契約を更新してきましたが、今後は期限を定めない契約に変更できると期待していました。
その理由は、労働契約法の改正です。

雇用契約の更新を重ねて同じ企業で5年を超えて働いた場合、今年(2018年)4月から、本人が希望すれば、1年ごとなど期間を区切った契約ではなく、期限のない契約に切り替えられる制度が始まりました。
非正規労働者の雇用の安定のための制度で「無期転換」ルールと言います。
しかし去年(2017年)11月、大学が開いた説明会で、思いがけないことを告げられました。

音声:大学担当者
「本年度、平成29年度をもって、英語担当のすべての非常勤講師の先生方との契約を終了し、退職いただくことになりました。」

音声:真砂久晃さん
「それは何ともなりませんかね。
できればなんとか撤回してもらえないかとお願いしたい。」

音声:大学担当者
「なにとぞ、ご理解いただきますよう、お願いします。」

大学は、三軒茶屋キャンパスの英語講師について、無期転換の制度が始まる直前の3月をもって、契約を終えると告げたのです。
これからは契約の心配をせず、思う存分働きたいと考えていた真砂さん。
大学が、無期転換を意図的に避けたのではないかと考えています。

真砂久晃さん
「こんなにひどい扱いを受けるとは思わず、夜、眠れない日もあった。
非常勤講師を人とは思っていないような、駒のような、使い捨てができるものと考えているように思った。」

なぜ、長年勤めてきた講師との契約更新を突然拒否したのか。
日大は、NHKの取材に対し、「英語教育の見直しにともない総合的に判断した。無期転換権の発生とは関係ない」としています。
これに対して、非常勤講師の労働組合は、大学には明らかに無期転換を防ぐ意図があったと反論します。

日大ユニオン準備会 志田慎代表
「大学の内部で配付された資料です。」

組合が入手した日大の文書です。
非常勤講師の契約について基本的な考え方が記されています。

“非常勤講師の無期転換権発生を認めるということは、今後の大学運営に支障をきたす可能性が大きいことを考慮に入れる必要がある。”

少子化が進む中、日大は学生数の減少を見越し、授業科目を減らす方針を打ち出しています。
組合は、非常勤講師が無期転換すると、教員数の調整が難しくなるため、大学は契約を更新しなかったのではないかと見ています。

日大ユニオン準備会 志田慎代表
「大学の経営の都合だけ考えている。
雇用の安定が法律の趣旨としてあるが、まったくそんなことは考えていない。」

労働問題に取り組んできた法律事務所です。
今、全国各地から、無期転換を巡る相談が相次いでいます。

“無期転換してもいいが、賃金は大幅に下がると言われた。”

“転換するための試験が設けられ、合格できなかった場合は雇い止めになると言われた。”

その中に、無期転換を避けるために、法律に設けられた「クーリング」という仕組みの利用を持ちかけられたと見られるケースもあります。

労働契約法では、5年を超えて1つの企業で働いても、6か月以上の空白期間があると、それ以前の雇用期間はリセットされ、その時点での無期転換の権利がなくなるのです。

大学に10年以上勤めてきた女性です。
無期転換を希望していましたが、今年2月、大学からメールが届きました。

「“長期的に継続したいのであれば、きちんとクーリング期間を取ってください”。」

大学は、女性がクーリング期間をとり、無期転換の権利を放棄するなら、今後も有期契約で雇い続けてもいいとしたのです。
女性は大学に不信感を抱き、労働組合にも相談しましたが、結局、提案に従うことにしました。

「おかしいと思っても、事を荒だてて、半年後の再雇用がなくなってしまうんじゃないかという不安もあったので、大学側に“おかしい”と声をあげることはできなかった。」

労働問題の専門家は、無期転換にともなうトラブルを防ぐには、国が主導して、仕組みを作る必要があると言います。

弁護士 安西愈さん
「国は現在、個別の企業に踏み込んで行政指導していない。
細かい行政指導をする機関を設けていく。
中身に踏み込んで企業を指導するシステムが必要になってくる。」

新井
「こうしたケースが大学で相次ぐのは、非常勤講師など非正規労働者の数が多いことが理由の1つだとされていますが、同様の相談は、一般の企業からもあるということです。」

小郷
「労働者を守るための法改正にも関わらず、反対に、雇用がおびやかされることはあってはならないと感じました。」

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