これまでの放送

2018年6月8日(金)

利益があるのに路線廃止 バス業界に何が?

高瀬
「私たちの生活に身近な移動手段である、バス。
今、そのバスに異変が起きています。」

路線減は都市部でも 背景に深刻な人手不足

和久田
「国土交通省が、全国のバス会社を対象に行った『運転手不足に関する調査』では、回答した350社のうち、実に8割が運転手不足に陥っていることが、NHKの取材で明らかになりました。」

高瀬
「その影響で、利益を上げている都市部の路線までも減らさざるを得ない、という新たな実態が見えてきました。」

ルート縮小・便数大幅減 戸惑う利用者

全国有数の大都市、福岡市。
バスは1分に1本は来ると言われ、市民の生活には欠かせない存在です。

運行するのは、およそ1,800台ものバスを保有する西鉄です。
この会社も、深刻な運転手不足に直面。
この春、「利用者が多く利益を上げている路線」を見直す、苦渋の決断を余儀なくされました。
1つは、福岡市内の中心部を回り、「バスの山手線」と言える、循環バスの見直しです。
屋台が並ぶ繁華街「中洲」を中心に走り、1日8,000人あまりが利用する黒字路線でしたが、ルートを縮小し、便数も大幅に減らしました。

さらに、通常の2倍の料金を稼げる、11路線の深夜バスの廃止にも、手を付けざるを得ませんでした。

市民
「仕事で遅くなったりとか、飲み会で遅くなった時、困っている。」

市民
「帰れないです、家に。
バスお願いします!」

「バス事業全体が壊れてしまう」苦渋の決断

この会社では、ここ数年、離職者が増加傾向にあり、全体の運行本数を減らす必要に迫られました。
公共交通機関として、郊外の赤字路線の減便は、利用者への影響が大きいと考え、利益が出ている路線を減らしたのです。

西日本鉄道 自動車事業部本部長 清水信彦さん
「本数を落とすのは収益も減るので好ましくはないが、何とかしないとバス事業全体が壊れてしまうような危機感を持っていましたので。」

「5社に1社」減便・路線廃止を検討せざるをえない

高瀬
「取材した牧野記者です。
これまで郊外のバス路線を廃止するという動きはありましたが、都市部で利益が出ている路線にまで影響が広がっているんですね。」

牧野慎太朗記者(NHK宮崎)
「はい、こうした状況は福岡だけではないんです。
国土交通省のアンケート調査では、運転手不足と答えた企業のうち『5社に1社』が減便や路線廃止を検討せざるをえないと回答しているのです。」

和久田
「民間企業といえど公共性が高いと言うことで、各地でこうした苦渋の判断を迫られているということですね。」

過熱する人材争奪戦

牧野記者
「そうなんです、こうした中で、限られた運転手をめぐって争奪戦も過熱しています。
こちらは先月、都内で開かれた、バスの運転手を募集する就職イベントです。
首都圏をはじめ、愛知や兵庫など各地のバス会社が参加していました。
高齢化した大勢の運転手が大勢退職する一方で、新たな担い手が非常に少なく、慢性的な人手不足に陥っているのです。」

高瀬
「問題を解消していく方法はあるのですか?」

牧野記者
「あの手この手で、業界に人材を呼び込もうという動きも出てきています。
キーワードは、『女性の獲得』そして『連携して人材育成』です。」

注目は女性運転手 働きやすい職場環境を

運転手不足に悩む、都内のバス会社が注目しているのが、女性です。
制服は、女性運転手が選んだデザインを採用。
さらに、運転免許の取得費用を負担したり、早朝や深夜の勤務に配慮するなど、女性が働きやすい環境を整えました。

女性運転手
「早く帰れるし朝も少し遅いので、女性には働きやすい。
夕飯を作らないといけないので、そこは助かってます。」

この会社では、男性の採用が伸び悩む中、この2年間で4人の女性を獲得。
今後もさらに増やしていきたいとしています。

日立自動車交通 バス事業部 副部長 西窪裕光さん
「まだ男性の仕事というイメージがすごく強い業種ですので。
新しい風を…女性の方にたくさん入っていただきたい。」

ライバル同士で協力 異例の人材育成プロジェクト

バス会社と行政が協力して、全国的にも珍しい、運転手の訓練校を立ち上げる動きも出ています。

「『地域で1つ』というふうに考えていかないと、(バス会社の)体力的にも厳しい。」

訓練校の設立に資金を出したのは、県内の自治体と7つのバス会社。
通常、それぞれの会社が行う運転手の育成を、ライバル同士で協力して行う異例のプロジェクトです。

この日、訓練用の大型バスを使った、講習が行われました。
元々トラックの運転手だったという男性に、熟年の教官がマンツーマンで指導します。
乗客がいることを意識した運転の技術を学んでいきます。

教官
「この先のカーブ、急カーブだから。
このまま大きく回ってもらわないと。
徐々に(ハンドルを)切ってください。」

プロジェクトでは、官民一体となって1人でも多くの運転手を育成したい考えです。

庄内運転者育成学園 小林薫さん
「地域の力を結集して、バスドライバー不足を解消していきたい。
これがうまく回っていけば、地域のためになっていくのかなと思う。」

「運転手争奪戦ますます激しく」 強まる危機感

高瀬
「どの業界でも人手不足が深刻だと言われる中で、バスの運転手を確保していくのは、一筋縄ではいかなそうですね。」

牧野
「各社、地道な取り組みを続けています。
ただ、外国人観光客が増え、バスの需要が年々高まっている上に、東京オリンピック・パラリンピックでは、バスが、選手や観客を会場まで輸送する、主要な交通手段となることから、多くの事業者は、『今以上に、運転手の争奪戦が激しくなるのではないか』と危機感を強めています。
バス会社だけではなく、行政や利用者を巻き込んだ議論が求められると感じました。」

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