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2018年6月5日(火)

精神障害者が社会の大きな戦力になる

高瀬
「こちらをご覧下さい。
先月(5月)下旬に厚生労働省が公表した『障害者の就職件数』です。」

この5年で1.5倍 精神障害者雇用

和久田
「去年(2017年)は、年間97,000件余りで、過去最高となっています。
内訳を見てみると、身体障害者・知的障害者の雇用が増えていない一方で、精神障害者が、この5年で1.5倍に増えています。
今年(2018年)4月からは、障害者の法定雇用率が、2%から2.2%に引き上げられました。
身体障害者や知的障害者の雇用の横ばいが続く中、注目されているのが精神障害者なのです。

この場合の精神障害者は、うつ病や統合失調症などを患い、障害者手帳の交付を受けた人たちです。
働いた経験を持つ人が多く、環境が整えば、大きな戦力になる可能性を秘めています。」

高瀬
「こうした人たちをどう受け入れるのか。
雇用の現場を取材しました。」

従業員の8割近くが精神障害者

オフィスの一角にあるのは、仮眠スペース。
こちらの個室では、音楽をかけて、スマホを見ながらリラックス。
ここは、大手IT企業の子会社です。

障害者を雇うために作られました。
従業員の8割近くが精神障害者です。

「どんどん戦力化させていける」

人とのコミュニケーションが苦手な人や、勤務配慮が必要な人もいます。
その一方で、働いた経験があり、高度な技術を持つ人も数多くいます。
仕事の内容は、親会社が開発するゲーム画像の加工やプログラムのチェック作業など。
この会社では職場の環境を整えて、精神障害者を積極的に受け入れることにしています。

グリービジネスオペレーションズ 福田智史社長
「環境整備からはじめ、社員を雇用継続し、マネージメントできる状態を作っていきました。
これからもどんどん戦力化させていけると思っています。」

電話を置かず 連絡はすべてパソコン上

さらに、ストレスをかけない働き方ができるよう、力を入れています。
例えば、精神障害者の多くが電話や打ち合わせなど、コミュニケーションを負担に感じると言われています。
また、勤務が長時間になると精神的負担が高まる傾向があります。
そこで、この会社では…。

社員
「電話は自席に基本ありません。」

電話を置かず、連絡はすべてパソコン上で行うことにしました。

休憩は自由に 有給休暇は時間単位で

休憩などを自由にとれるよう、工夫もしています。
男性社員が入力しているのは、休憩の申請です。
休みたい時にパソコンに入力。
上司の許可を得る必要はありません。
この会社では、昼休み以外にも30分の休憩を自由に取ることができます。
さらに、体調の急変などに対応できるよう、有給休暇を時間単位で取る制度も作りました。

社員
「気持ち的にだいぶ落ち着くといいますか、慌てて仕事をしなくて済む。
非常にありがたいと思っています。」

職業訓練・就職した後のサポートも

精神障害者の就労を支援する動きも活発になっています。
全国60か所以上に拠点を持つ、福祉事業所です。
支援を受けている人は5,000人ほど。

ここではまず、職業訓練など仕事に就くための支援を実施します。
そして、就職した後のサポートにも力を入れています。
この日、半年前に就職した女性の面談が行われました。
企業の人事担当者も同席し、体調面や仕事の様子など、状況を共有します。

支援スタッフ
「最近どんな感じですか?」

「ぼちぼちです。」

人工知能で分析し ストレスの程度を「可視化」

コミュニケーションが苦手な人が多い中、少ない言葉から状況を正確に把握することが求められます。

りたりこ ライフネット支援室 浅見淳室長
「“大丈夫ですか?”と聞かれて、“大丈夫です”と答える人が実はすごく多い。
人知れず追い込まれていく人も中にはいる。」

そこで、この事業者は人工知能の活用を始めました。
利用者本人や、雇用している企業の担当者から聞きとった情報をパソコンに入力。
精神障害者の心理状況を学習させた人工知能で分析し、ストレスの程度を「可視化」します。

例えば、こちらの面談記録の場合。
「不安定」や「不安感」などの言葉が出てきます。
精神障害者は、こうした後ろ向きな表現を多く使う傾向があります。
どれくらい深刻なのか。
人工知能は、「吐き気」や「動悸」など体に出た症状。
さらには、「原因がわからない」といった混乱を表す言葉にも注目し、ストレスの度合いを数値化するのです。

担当者は、ストレスの状態を本人にも確認し、雇い入れた会社に伝え、業務内容や仕事量の調整、必要に応じて、通院を促すなどの助言しています。

就職後にもサポートがあることが雇用の決め手

このサービスを利用しているエステサロンです。

過去に精神障害者を雇ったことがありましたが、接し方が分からず、安定した雇用にはつながりませんでした。
今回は、就職後にもサポートがあることが雇用の決め手になったといいます。

エステサロン 人事担当 前田奈々さん
「“こういう障害特性があるので、こういう風にお仕事を依頼して”とか、具体的な助言があったからこそ、今、安定的に就業してもらえている。」

「これまで潜在していた労働力を活用できる」

専門家は、「次々と受け入れ体制を整える今の状況が続けば、精神障害者が社会の大きな戦力になる」と分析しています。

法政大学 現代福祉学部 眞保智子教授
「精神障害者は手帳を取っていない人も入れれば300万人いる。
どんな業務に向いているのか、一定のノウハウは確立してくる。
これまで埋もれていた、潜在していた労働力を活用できる。
社会としては望ましい。」

この機会にうまくマッチングして雇用につながると良い

和久田
「眞保教授によりますと、こうした就職後の支援は、全国の福祉事業者に広がり、さまざまな特徴あるサービスが生まれているということです。」

高瀬
「進む障害者の雇用ですが、法定雇用率という面では、去年の調査で、対象となる企業のおよそ半分が、達成できていないという現実があります。
精神障害がある人で、“働きたい”と求職活動をする人は年々増えていますので、この機会に、うまくマッチングして雇用につながると良いと思います。」

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