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2018年6月3日(日)

是枝裕和監督 「万引き家族」はこうして生まれた

「パルムドール(最優秀賞)は、是枝裕和!」

世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭で最優秀賞のパルムドールに選ばれた是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督。

是枝裕和監督
「さすがに足が震えています。
この場にいられることが、本当に幸せです。」

“焦らずに、店員が減るのをずっと待つのがコツなんだよ。”

受賞した「万引き家族」。
貧しさの中、足りない生活費を万引きで稼ぐ家族を描いた作品です。
受賞を受けて、昨日(2日)、各地で先行上映が行われました。

観客
「よかった。
こんな絆があるのかと。
今の冷たい、声をかけなかったりする中で。」

観客
「強烈なメッセージがあるというより、見ているものを、それぞれの人が感じ取る映画。
長い間、心に残っていくものになるんじゃないかな。」

世界を虜にした「万引き家族」はどのようにして生まれたのか、是枝監督に聞きました。

先週水曜、カンヌから帰った是枝監督の事務所を訪ねました。

小郷
「わあー、きれい。
光ってますね。」

是枝裕和監督
「はい。
ちょっと持っていただいて。」

小郷
「いいですか。」

是枝裕和監督
「重いですよ。」

小郷
「…重い!
ものすごく重いですね。」

是枝裕和監督
「重いんですよ、これが。
ちょっとびっくりするんですが。」

小郷
「見た目以上に重いですね。」

是枝裕和監督
「そうなんです。
これ持って2時間ぐらいずっと、顔の近くに上げてくれって言われて、ずっとこうやってインタビューしてたもんですから、3日間ぐらい筋肉痛が。
ここ(腕)が固まっちゃって。」

小郷
「確かに、こういう写真、よく見かけます。」

作品で描かれるのは、祖母の年金を頼りに暮らす一家。
日雇い労働者の父親と、クリーニング店で働く母親。
貧しい家族は、生計を立てるため、万引きを続けています。

“どうしたの?”

物語は、虐待を受けていた少女を、父親が家に連れ帰るところから始まります。

“それ食べさせたら帰して来なよ。”

“今日、外、寒いんだよな。”

“誘拐だよ、あれ。”

家族ぐるみで犯罪を重ねるうちに、絆を深めていく一家。

“おばさんとおばあちゃん、好きか?”

“こうやって自分で選んだ方が強いんじゃない?”

“何が?”

“絆よ、絆。”

少女も、家族と心を通わせていきます。

小郷
「家族のつながりが犯罪で描かれてるというのも、すごく衝撃的に感じたんですが、この設定にした狙いというのは、どういうものなんですか?」

是枝裕和監督
「狙い、ですか…。
血縁を超えて家族になろうとする、父になろうとする、母になろうとする、そういう人たちを主人公にしたものをやってみようかなと思いまして。
血縁以外のつながりを持つということで、“犯罪”を思いついた。
それで出会ったのが、家族で万引きをするという、逮捕された後のニュースでした。
(『万引き家族』を)見ていると、犯罪以上のものでつながっているのが分かってくる。
見た人は、“でも犯罪者の集まりだ、断罪しなければ”という正義感のような気持ちと、“捕まらないで”という、どこかあの家族に共感してしまう気持ち、両方持ってほしいと思ったんですね。」

しかし家族は、ある事件をきっかけにばらばらに。
母親は、子どもを誘拐したととがめられ…。

“拾ったんです。
捨てたのは他の人なんじゃないですか。”

“家族”とは、“絆”とは何かを問いかけます。

是枝裕和監督
「“親子”って何だろう、“家族”って何だろうということだと思いますけどね。
それは、答えがあるわけではない。
多くの方たちが生きていく上で、子を持つ持たないに関係なく、一度は立ちどまって考える問いなのではないかなと思っているので。
血を超えて、家族になろうとする、親になろうとする、子になろうとする。
そういうものが描ければ、普遍的な問いとして見た方に届くのかな。」

カンヌでは、「見えない人々に声を与えた」という評価も。
貧困や虐待など、社会の片隅で見過ごされがちな人々の問題を「家族」という身近な題材を通じて、浮き彫りにしました。

是枝裕和監督
「(家族は)最小の共同体であることは間違いないので、そこにいろんな社会のひずみであるとか、しわ寄せというのは必ず注ぎ込まれてくるし、しみ出してきますから、そこから見ていく。
そこの視点から見えてくる社会を描きたい。
今、そういう(見過ごされがちな)人たちがどんどん不可視な状態に置かれていくというか、目に見えない状態に置かれていく。」

つながりが希薄になっている今、映画を通して、こうした人たちに想像力を働かせてもらいたいと是枝監督はいいます。

是枝裕和監督
「答えを出すのが映画の役割ではないと思っているので。
多分、固定観念に揺さぶりをかけるとか、別の選択肢を提示するとか、せいぜい、できてそのくらいなんじゃないですかね。
今見えてないものにも世界は広がっている、私たちの生というものがそことつながっているというのは、ずっと声にしていかないといけないことなのかなと思ってはいます。
そのことが豊かさにつながっていくでしょうし、複雑さにもつながっていくでしょうし。
それが大事なんじゃないですかね。」




新井
「映画って、テレビよりもメッセージ性が強いという印象があるんですが、監督は『映画は答えを出すのではない』とおっしゃっていましたよね。
おそらく、考えたり議論したりするきっかけになればということだと思うんですが、もともとテレビでドキュメンタリー番組を作っていらっしゃった是枝さんらしいなと思いました。」

小郷
「本当に、今の社会が見えてくるんですよね。
映画を見ていますと、犯罪でつながった家族なんですが、とても心豊かに幸せそうに暮らしていて、このまま一緒にいられたらいいのになと。
でもそういうわけにもいかない、本当に“家族って何なんだろう”“人と人とのつながりって何なんだろう”ということを、ものすごく考えさせられる、深い映画になっていました。
この『万引き家族』、今月(6月)8日から公開されます。」

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