これまでの放送

2018年5月11日(金) NEW

“変わる就活” なぜここに人材が集まるのか

高瀬
「今、来年(2019年)春に卒業する『新卒学生』の就職活動が本格化しています。」

和久田
「『就活』は今年(2018年)も学生優位の『売り手市場』。
新卒者は引く手あまたで、争奪戦が激しくなっています。
こうした中、採用に悩む企業の間で、あえて『新卒』ではない人材に目を向け、積極的に獲得しようという動きが出ています。」

全社員の「人脈」を使って「転職潜在層」を見つける

都内にあるIT関連のベンチャー企業です。
知名度が低く人材確保に悩む中、踏み切ったのが、社員の人脈をフル活用する、新たな採用戦略です。

会社はWEB上の掲示板で、マーケティング担当やエンジニアなど、求めている職種を全社員に周知。
クリックすると、ほしい人材の具体的な「人物像」まで詳しく示されます。

社員は、条件に合いそうな知り合いにアプローチ。
これを繰り返すことで、ほかの企業で働く「転職潜在層」を獲得しようという手法です。

freee採用担当 栗林由季さん
「全社員の人脈を活用して、(応募を)待たずにいい人を見つける採用に切り替えています。」

給与や処遇 ざっくばらんに伝える

会社では、社員の紹介で「これは」という人は、一度来てもらえるよう働きかけます。
この日招いたのは、他のIT企業で働く女性。
仕事の内容のほか、給与や処遇などについて社員とざっくばらんに話をしてもらいました。

社員
「実際、給与がどれくらい伸びていくのか、とか。」

他のIT企業で働く女性
「確かに聞きづらい。」

社員
「休みは取れるんですかとか、そういうところを後でこそっと。」

他のIT企業で働く女性
「働かないとやっぱりわからないから、事前にわかるとすごくうれしいです。」

採用に至れば、社員に報奨金を支給。
これまでにおよそ50人を獲得し、今後も社員の人脈を最大限活用していくといいます。

グーグル、フェイスブック、外食産業などが 相次ぎ導入

和久田
「取材した経済部の甲木記者とお伝えします。
全社員の人脈を採用に活用するなんてユニークな取り組みですね。」

甲木智和記者(経済部)
「こうした手法は、英語で『紹介」を意味する「リファラル(referral)採用」と呼ばれ、アメリカではグーグルやフェイスブックなどのIT企業をはじめ、広く取り入れられています。
日本でも、外食産業など人手不足に悩む多くの企業が、この数年、相次いで、このリファラル採用に乗り出しているんです。

そしてさらに今、企業が注目している人材が『新卒一括採用』に乗り切れなかった若者たち。
いわば『埋もれた人材』です。」

企業と若者が意見交換 「埋もれた人材」を掘り起こす

先月(4月)開かれた、就職希望者と企業とのマッチングイベントです。
集まった若者は皆、私服。

参加者
「今はフリーターやってます。」

参加者
「一応、新米主婦です。」

参加者
「ニート、やっております。」

仕事の話ではなく、テーマに沿って、とことん意見を交わすのが特徴です。

「“時間がたつことを忘れるような体験”。」

参加者
「本当に好きな小説だと、何百ページとか読み終わるまで他のことできなくなる。」

企業 人事担当
「人と話すのが好きなので、もっと深く話したいと思って、質問を重ねているときとかは気づいたら時間忘れて。」

企業側の参加者は経営者や人事担当の幹部。
2日間、6時間にわたる議論を通じ、「埋もれた人材」を掘り起こそうというのです。

企業 人事担当
「出身大学や応募時点での能力で測りにくい、本人の価値観や理念みたいなところで、いい人材がいるんじゃないかと思いながら来ています。」

「想像しなかった人が入社してくれた」

都内で訪問介護事業を営む、森道章さんです。
人材難に悩む中、マッチングイベントに積極的に参加してきました。

森アン 代表 森道章さん
「(イベントに参加して)びっくりするくらい反応があったかなというふうに思っています。」

森さんが出会った1人が、去年(2017年)9月に入社した山本静江さんです。
山本さんは、はじめ、介護の仕事には興味がありませんでした。
しかし、イベントで森さんと知り合い、その後も会話を重ねる中で、考えが変わっていったといいます。

山本静江さん
「普通の新卒の就活とは結構違うかなと。
一緒に働きたいなと思う気持ちを持てたのは、すごい自分にとっていいことだったなと思います。」

元々、社員が6人しかいなかった森さんの会社。
イベントを通じ、この2年で9人の若者を見つけ出し、採用にこぎ着けました。

森アン 代表 森道章さん
「(イベントで)うまくいかなければ先は無いかなと、そのぐらいのつもりでいました。
参加前には想像しなかった方々が入社してくださったなというふうに思います。」

新たな取り組みの背景に「採用難」「雇用慣行」

高瀬
「介護事業はなかなか人が集まらないと聞きますが、2年で9人、若者を採用とは驚きですね。」

甲木記者
「このマッチングイベントは5年前にスタートしたばかりなのですが、参加する若者はこの間、8倍に増えました。
また、参加企業ものべ100社にまで増え、確実にニーズが高まっています。

その背景には、深刻な人手不足による採用難。
そして、『新卒』のチャンスを逃すと就職のハードルが急に高くなるといった、日本の雇用慣行があるといえます。」

限られた人材をいかに生かしていくのか

和久田
「取材に合わせて、今回NHKで、就職活動について広く意見を募ったところ、『新卒でないということで応募すらできない』『大学の勉強より就活を優先しなければならない。』『留学すると就職活動と時期がずれてしまって参加できない』といった声が寄せられました。」

甲木記者
「今の新卒一括採用に違和感を覚える意見は、取材でも多く聞かれました。
この制度は長年、続いてきたものですが、ここにきてさまざなひずみが生じています。
今後、日本は労働人口が急速に減少し、人手不足のさらなる深刻化が懸念されます。
それだけに、限られた人材をいかに生かしていくのか。
そのために必要なことは何なのか。
考えていかなければならないと思います。」

Page Top