これまでの放送

2018年4月16日(月)

熊本地震2年 子どもたちの言葉と“就学援助”

和久田
「こちらは、2年前の今日(16日)、熊本地震で崩落した阿蘇大橋です。
近くを車で走っていた大学生の行方が分からなくなり、家族の懸命の捜索で、およそ4か月後に遺体で見つかりました。」

高瀬
「悲しみの中にいる両親を支えたのは、息子がつないでくれた人々との出会いでした。」

「息子との時間は2年前で止まったまま」

リポート:吉元明訓

亡くなった大和晃さんです。
両親は今も、遺骨を手元に置いています。

大和晃さんの父 卓也さん
「“ここにまだまだいてほしい”という気持ちが強くて。」

どれだけ時間がたっても、息子を失った悲しみが癒えることはありません。

大和晃さんの母 忍さん
「晃との時間は2年前で止まったまま。
自分としても少しは前向きに頑張らなくちゃいけないのかなと思っても、なかなかそういった方にはまだまだ向けていない自分もいて。」

「当たり前のこと」の大切さに気づいた

卓也さんと忍さんの支えになっているのが、ある子どもたちとのつながりです。
去年(2017年)12月、2人は熊本市内の小学校に招かれました。

子どもたちが、晃さんの乗っていた車の色と同じ黄色いコスモスの花を育ててくれたことがきっかけでした。
“地震で失われた命を忘れない”という思いが込められています。
この日、晃さんを失ってはじめて気づいた「当たり前のこと」の大切さを子どもたちに語りました。

母 忍さん
「普通に生活している人たちが、とてもうらやましく思う。
普通に生活していた時が、どれだけ幸せだったのかをすごく感じる。」

父 卓也さん
「もう少し、子ども(晃さん)と話をうんとしておけばよかったと非常に思う。
自分の気持ちを伝える時には話をしないと伝わらないし、お父さんたちの気持ちを知るためにも、話をしないとわからない。
うんと話をしていってください。」

子どもたちの言葉が後押しに

この授業のあと、2人の元に子どもたち27人から手紙が送られてきました。

“普通の生活がいかに幸せか。”

“元気にすごしてください。”

あの日伝えた思いは、子どもたちにしっかり届いていました。

父 卓也さん
「“あの子はここにいた”という証しの1つでもあると思う。
あの子が、この子たちとの関わりを持たせてくれたと感じている。」

そして母親の忍さんにとっても、子どもたちからの言葉が何よりの励みになっています。
晃さんが出かけたときのままになっていた部屋を、地震後はじめて掃除しました。

母 忍さん
「子どもたちの言葉が後押しになって、子どもたちに“こんな形でおばちゃん頑張れたよ”と伝えられたらと思ってやったのが、この部屋の大掃除。」

息子への思いをありのまま受け入れる

今日未明。
2人は阿蘇大橋の崩落現場を訪れました。
整理のつかない晃さんへの思いを、ありのまま受け入れていこうと考えています。

父 卓也さん
「まだまだ思い出すと涙出る時もある。
でも、それはそれでいいんじゃないかなと。」

和久田
「2年がたって部屋の掃除ができた、これがどれだけ重く大きな1歩だっただろうと想像しますし、子どもたちにも、お2人の話を決して忘れないでいてほしいと思いますね。」

熊本地震2年 “就学援助”縮小の不安

高瀬
「熊本地震で被災した子どもがいる家庭では、教育への不安が広がっています。
それが、『就学援助』です。」

和久田
「経済的に厳しい家庭の小中学生に、市町村がそれぞれ基準を設け、学用品や給食などの費用を支給する制度です。
熊本地震の被災地では現在1,400人以上の子どもが制度を利用していますが、特例で、就学援助にかかる費用の3分の2を、国が補助しています。」

高瀬
「ところがこの春から、支援を受けられなくなるおそれがあることがわかってきました。」

学用品や給食などの費用を支給する“就学援助”

リポート:藤島温実(熊本局)
被害が最も大きかった益城町にある小学校。
双子の男の子が入学しました。
母親の橋本裕子さんです。
子どもの成長がうれしい反面、ある不安を抱えています。

この2年暮らしてきたのは、仮設住宅。
共働きで、双子の兄弟と小学4年生の長男を育てています。
震度7の揺れに2度襲われ、自宅は全壊しました。

橋本裕子さん
「その時は何も考えられない状態で、とてもじゃないけど住めない。」

家財道具の買い替えや、廃車した車のローンの支払いなどで、かさんだ出費は500万円。
住宅の再建にも、2,000万円のローンが必要です。
今残っているのは、頭金にあてる100万円だけ。
家計はぎりぎりだといいます。
それを助けたのが、「就学援助」です。
半壊以上の世帯が、特例を受けられることになったのです。
リコーダーなど、長男の学用品や給食の費用が支給されました。
国の調べでは、小学校でこうした費用に年間およそ10万円がかかります。

橋本裕子さん
「家計の負担が軽減されて、ものすごく助かりました。」

就学援助の対象が大幅に絞られる

この春からは双子の弟も加わり、かかる費用は3倍です。
今年(2018年)も利用したいと考えています。
ところが、取材すると、今年度から就学援助の対象が大幅に絞られることがわかりました。
地震後、所得が350万円の家庭まで対象が広がりましたが、今年度は元の基準に戻り、原則240万円までしか認められません。

昨年度、特例を利用した子どもは、県内で最も多い805人。
費用の3分の1は町の負担です。
インフラの復旧で財政が厳しい中、これを維持するのは難しいといいます。

益城町 学校教育課 福岡廣徳課長
「復旧復興には大変なお金がかかる。
皆さんに支給できれば一番いいが、町の持ち出しもある。
苦渋の選択というか、現状では致し方ない。」

被災した家庭への支援を絞るこうした動きは相次いでいて、特例を活用する11の市町村のうち、7つに上っていました。
就学援助を受けられるかどうか、通知が来るのは7月ごろ。
橋本さんの所得は基準ぎりぎりで、支援の行方が気がかりです。

橋本裕子さん
「これからお金がよりかかっていく。
この先やっていけるのか、不安はある。」

子どもの教育支援は後回しになりがち

専門家は、被害が大きい自治体ほど教育まで支援が回らない傾向があり、国の支援が急務だと指摘しています。

跡見学園女子大学 鳫咲子教授
「被災した子どもの教育支援というのは、一般的にはなかなか遅れているということが見えにくい部分で、どうしてもその支援が後回しになりがちだと。
国の支援をさらに拡充していく方向性が望まれると思います。」

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