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2018年3月30日(金)

医療保険制度 “日本で安く治療” 実態は…

高瀬
「日本の医療保険制度を、今後、揺るがしかねない事態が起きています。」

和久田
「病気になった人の治療費を安く抑える医療保険。
1人1人が日頃から保険料を支払って支え合う制度です。
ところが、日本にやってきた外国人がこの制度を巧みに利用し、安く治療を受けているケースが相次いでいることが分かってきました。」

扶養の実態 実際は医療目的の来日

70代の中国人の男性です。

中国人男性
「痛いけど、大丈夫。」

去年(2017年)来日したあと、医療保険に入り、心臓病を治療する手術を受けました。

「お会計はここですか。」

男性の治療費は90万円でしたが、保険によって8万円ほどに抑えられました。

外国人が治療を受けるために日本へやってきた場合、原則、保険に入ることはできません。
なぜ保険に入れたのでしょうか。
ポイントになるのは、来日した目的です。
実は、扶養などの目的で日本にやってきた人は、保険に入ることが可能です。

男性には日本で暮らす娘がいます。
娘に会うといって来日し、その後、日本で養ってもらうことになったと申請して滞在期間を延長。
保険に加入したのです。

ところが男性は、日本に来る前から病院の予約を取っていて、病院側は、実際は医療目的で来日し、扶養の実態は無かったのではないかとみています。
男性は、治療が終われば娘夫婦の元では暮らさず、中国に帰ると話していたということです。

揺らぐ 制度への信頼感・公平感

こうした、外国人が保険を利用するケースはどこまで広がっているのか。
年間2万人近くの外国人が治療を受ける国立国際医療研究センターです。

「外国人の患者のファイルです。」

病院は、医療保険を利用した外国人の患者を調査しました。

「こちらの方は、もともとは中国に住んでいた。
日本に住んでいる息子さんの扶養に入っていて。」

その結果、昨年度、医療以外の目的で来日したのにすぐに保険に入るなど、保険取得のいきさつに疑問のある外国人患者が、少なくとも140人いたことが分かりました。
中には、がんや肝炎など、100万円を超える高額な治療を受ける人も少なくないといいます。

国立国際医療研究センター 堀成美さん
「ねらったかのように高額な医療の人たちが来るときに、なぜ保険証を持って、こんな高い医療を受けているのだろうと。
このような形で利用される人が増えたら心配。」

こうしたケースについて専門家は、保険料を払い続けている人からすると納得できないのではないかと指摘します。

早稲田大学法学学術院 菊池馨実教授
「“公平じゃないよね、そういう制度でいいの”という、制度への信頼感、公平感にかかわる。
信頼があるからこそ、保険料を払って(制度を)支えようとする。
そこの根幹が揺らいではいけない。」

なぜ?健康保険証が… 制度が使われる実態

高瀬
「取材にあたった山屋記者とお伝えします。
保険を支払っている人からすると、おかしいと思うような実態でした。
疑問が生じているのは、どのようなケースが多いんでしょうか?」

山屋智香子記者(社会部)
「まずは、日本にいる家族の扶養に入るケースです。
ここでは“本当に扶養されているのか”という疑問が出ているんです。
ほかにも、日本に3か月以上滞在して保険に加入するケースがあります。
この中には、留学や仕事などで来て、保険に加入しても何らおかしくない人もいるんですが、一方で、医療目的を隠して、別の名目で来日している人もいるのではないかとみられています。」

和久田
「こうした人たちは、どれくらいいるんでしょうか?」

山屋記者
「実態は分かっていません。
ただ、VTRでご紹介した病院だけでも、去年(2017年)100人を超えているので、決して少なくはないと考えられます。
多くのケースは中国から来た人たちだということです。
病院はこうした疑問を感じていても、患者が来れば治療を拒むことはできないんですが、国などに実態を調べるよう求めているんです。
さらに取材を進めると、保険証を取得する方法を教えたり、手続きを代行する業者などがいることも分かってきました。」

制度の抜け穴 多くの代行業者が…

中国の大手検索サイトです。
私たちが「日本」「治療」「保険」と打ち込むと、数多くのホームページが出てきました。
その中には…。

“日本で病気を無料で治療する方法を教えてあげるよ”

手続きを代行する業者などが、日本の保険を使って治療を受ける方法を紹介していました。

“3割だけ負担すればいい、高額治療保険制度も利用して、毎月9万円を超えた分は日本政府(公的機関)が負担してくれる。”

私たちは業者に話を聞きました。

「保険に加入する方法はありますか?」

業者
“条件さえ満たせば大丈夫。
日本に来たあと、『病気になった』と言えば治療は受けられる。
目的は治療でも、来る前はほかの理由を言うのです。”

また、中国と日本で業務をしている業者の1人は、扶養とは別の手法を紹介してきました。

業者
“会社経営という方法、法律の範囲ぎりぎりで合法的にやる。
不動産を買い、貸し出せば、会社運営になる。”

会社を立ち上げることで、保険が手に入るというのです。
その手法は、まず一定額以上の不動産を購入します。
そして会社を設立し、不動産を貸し出すことで事業の体裁を取ります。
すると「経営管理」というビザが取れて、3か月以上の滞在資格が得られ、保険に加入できるというのです。

業者
“日本の制度には抜け穴があります。
新しくきた人に対して厳しい規制がないんです。”

制度の基盤も揺るがす事態に

高瀬
「こうした事態について、国はどう考えているのでしょうか?」

山屋記者
「国も危機感を強めています。
厚生労働省は先週、扶養の審査を強化するよう健康保険組合に求めました。
扶養の審査は、保険組合によって方法がまちまちで、中には公的な書類がなくても認めるケースもあったということです。
このため厚生労働省は、本人の収入が本当に少ないのか、また、仕送りを受けていた事実はあるのか、きちんと書類を提出させて厳密に審査するように求めています。」

和久田
「とにかく、不公平な事態は避ける必要がありますよね。」

山屋記者
「今、高齢化で医療費が増え続け、厳しい財政に陥っている健康保険組合は少なくありません。
こうした中で、本来取得できないような人が保険を次々に利用すれば、制度の基盤も揺るがす事態につながりかねないと思います。」

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