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2018年2月1日(木)

なぜ“人手不足倒産”が増えているのか

高瀬
「全国展開する大手ファミリーレストランです。
働き手が不足する中、去年(2017年)、大半の店舗で24時間営業をやめました。
昨日(31日)財務省が発表した調査でも、7割を超える企業が『人手不足を感じている』と回答しています。」

近江
「そして今、景気の回復で仕事は十分にあっても人手不足で立ちゆかなくなってしまう…。
いわば“人手不足倒産”という、より深刻な事態が相次いで起きています。」

「この3年 募集をかけても人がこない」

首都圏で40年以上続いた運送会社の元社長です。

元社長
「ここが、もともと倉庫に使っていた部分です。」

人手不足の影響で経営に行き詰まり、去年8月、破産を申請しました。
異変が起きたのは3年ほど前でした。
それまでは、ドライバーが退職してもすぐに補充できていましたが、応募がぱったりこなくなったといいます。

運送会社 元社長
「若い方ばかりじゃなく、60(歳)ぐらいまでの方に働いてもらえればと募集していたんですけど。
この3年、募集かけて全然入ってこない。
これは本当に初めて。」

「人がいれば続けていた 悔しいだけ」

当時、会社は景気の回復で仕事が増えると見込んでトラックを新型に買い替えました。
実際、取引先からの発注は増えていきました。
しかしその動きとは逆に、ドライバーの確保は難しくなり、仕事を受けられない状況に陥っていきました。

運送会社 元社長
「人がいてくれれば、あの仕事も行くことができるのにねっていう時に、受けたくても受けられない。
ふだんの時も人がいないから、予定していた仕事をこなすことができなくなって、売り上げの方が落ちていく。」

社員の高齢化などでドライバー不足はさらに深刻化。
ピーク時に16人いた社員は、破産直前には8人に半減しました。

会社は、トラックを売却するなど、身の丈を縮めてしのごうとしました。
しかし、売り上げが減り続けていく中、去年、経営が破たんしました。

運送会社 元社長
「人がいれば仕事をずっと続けていたし、いろいろと考えていたこともできた。
本当、悔しいだけですよ。」

人件費の負担で行き詰まるケースも

一方、売り上げが伸びても、人件費の負担が増えて経営に行き詰まるケースも起きています。
建設会社の元社長です。
6年前に会社を設立し、マンションの工事などを中心に事業を拡大していきました。
しかし、3年ほど前から、人手不足で現場を管理する技術者の確保が難しくなっていきます。
会社は給与の上限を50万円からさらに引き上げましたが、それでも応募がこなくなったといいます。

建設会社 元社長
「60万とか70万とかまで(上げて)、知ってる方に『紹介して』とか声かけをしたんですが、全然来なかったです。」

自社の技術者なら、1人に複数の現場を任せることもできます。
この場合、かかる人件費は1人分ですみます。

しかし、人材が確保できない中、会社は外部の技術者に頼らざるを得なくなりました。
その場合、現場ごとに人件費がかかってしまいます。

建設会社 元社長
「現場を管理する人が足りない状況の中で、どんどん予算的にオーバーした形で進んでいくと、積もり積もって大きな数字になっていった。」

受注が増えて売り上げも増加。
ただ、それ以上に人件費がかさんで赤字が膨らむ悪循環に陥り、会社は破産に追い込まれました。

建設会社 元社長
「人材はいくらでも確保できるという感覚でスタートした部分もあった。
想定もできていなかった。
どんどん時代が変わっていった。
どうにもこうにもいかなかった。」

働き手はさらに減り 状況は厳しくなる

高瀬
「取材した経済部の甲木記者です。
人手不足が原因で倒産というのは何ともやるせない気もしますが、状況は深刻なんですね。」

甲木智和記者(経済部)
「働き手は今後さらに減っていきます。
こちらは15~64歳までの『生産年齢人口』の推移です。

最も多かった1995年に比べて、直近ではおよそ1,000万人も減少しています。
そして、2050年にはさらに2,000万人以上減ると予想されています。」

近江
「そうなると“人手不足倒産”は今後さらに増えていくのでしょうか?」

甲木記者
「いわゆる“人手不足倒産”は年々増えていて、去年は106件に上りました。
働き手が確実に減っていく中、今後、状況はさらに厳しくなっていくと思います。
そうした中、企業の間では人材の争奪戦といった動きすら出ています。」

密着!人材争奪戦の裏側

リポート:甲木智和記者(経済部)

都内にある、人材のヘッドハンティングを請け負う会社です。
もともとは半導体の技術者やITの専門家などが主な対象でした。
しかし会社は3年前、建設業界を専門とするチームを発足させました。

「27~32歳ぐらいまで。」

すると、直後から中堅・若手の人材を求める依頼が殺到。
相談件数はこの3年間で2倍近くに増えたといいます。

プロフェッショナルバンク 呑田好和取締役
「やっぱり圧倒的な人手不足感。
20代後半でも“ヘッドハンティングでお願いします”というケースは増えています、確実に。」

ヘッドハンティングは周到に準備した上で行います。
例えば、現場を管理できる技術者の獲得を依頼された場合です。
所在地や売上高を参考に、該当する人材がいそうな会社をリストアップします。
その上で、それぞれの会社が手がける工事現場の表示などから現場を管理している人物を特定。
名前と会社名をもとに、アドレスを何パターンも作り、メールを送ります。

そして、メールでコンタクトが取れると面談。
本人の意向や能力を確認し、依頼主が求める条件に合っていれば紹介します。
紹介料は、成功した場合、1人あたり数百万円に上ります。
それでも、依頼してくる企業は後を絶たないといいます。
この日訪れたのは、従業員30人余りの建設会社です。
この会社には、これまでに30~40代の人材を4人紹介しています。
さらに今回、新たに2人を紹介してほしいと依頼されました。

建設会社 社長
「27~28(歳)、場合によっては30代、31~32(歳)くらいまでですかね。
なんとか1人でも2人でもお願いしたい。」

この建設会社では、人口減少が加速する中、将来を担う若い人材を確保していかなければ、さきざき立ち行かなくなると考えています。

建設会社 社長
「これからもう人材確保競争。
人がいなければ企業は成り立っていきません。
その必要な人を、将来、10年後に不足するなと思ったら、不足が生じる前に投資をしていく。
それはもう絶対必要だと思います。」

プロフェッショナルバンク 呑田好和取締役
「広く募って応募をしてこられるのを待つ時代ではなくなってきていると思う。
もっと加速すると思っています。
今以上に専門性の高い、ピンポイントの人材のニーズ・要望が増えていくのは確実だと思います。」

専門家に聞く 人手不足はどう解決する?

近江
「この人手不足をどうやって解決してけばいいのでしょうか?」

甲木記者
「こちらの3人の専門家に話を聞きました。

まず日本総合研究所の山田久さん。
退職したものの、意欲も能力もあるシニア世代に活躍してもらうことが当面の対策として効果的だとしています。」

高瀬
「確かに元気な高齢の方も多いですよね。」

甲木記者
「次に野村総合研究所の岸浩稔さんは、『AI=人工知能やロボット』の活用を挙げます。
すでにコンビニでは無人レジの導入に向けた動きが出ています。
また、開発が加速する自動運転車の活用も今後、期待できそうです。」

近江
「そして、『外国人労働者』ですね。」

甲木記者
「日本国際交流センターの毛受敏浩さんは、外国人の活用が欠かせないと指摘します。
今は、就労ビザを持たない多くの外国人が技能実習生などとして働いています。
こうした形ではなく、働き手として定住できることなどを真剣に考えるべきではないかとしています。
今回の取材では、全国各地で働き手が足りず、ぎりぎりの状態でしのいでいる現場がいくつもありました。
ますます深刻化していく人手不足をどう克服していくのか、喫緊の課題だと考えます。」

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