これまでの放送

2018年1月31日(水)

「超・低価格」の不動産が急増する理由

高瀬
「けさのクローズアップ、井原アナウンサーです。」

井原
「今日(31日)のテーマは『不動産』なんですが、こんな言葉をご存じですか?」

不動産が…“「負」動産”に

『ふどうさん』と読みます。
持っているだけで維持費や税金などの負担が大きい。
負担の『負』をあてて『負動産』と呼んでいるのです。
こうした負動産は、これまで主に地方で売りに出されていました。
例えば、インターネットの不動産情報を調べてみると…。

北海道の室蘭市では築50年の一戸建てが10万円。
熊本県の水俣市では、駅の裏にある住宅が3万円という値段が付けられていました。
実はこうした超低価格化の流れは、ここ数年、首都圏でも広がっているのです。」

高齢化で物件を手放す人が増加

東京から車でおよそ1時間半。
空き地が目立つ千葉県の住宅街です。

今、多くの不動産が売りに出されています。
こちらは、この周辺のおよそ30年前の映像。
バブルで都心部の地価が高騰したため、郊外に大量の住宅が作られました。

しかし、今は持ち主が高齢化し、物件を手放す人が増えています。

固定資産税、解体費…「一刻も早い売却を」

櫛毛光三さん
「久しぶりです。
昔はもっときれいな家だった。」

家の売却を検討している、櫛毛光三さん・69歳です。
持ち主だった叔母が亡くなったため、東京で暮らす櫛毛さんが管理することになりました。
櫛毛さんは、この家の固定資産税を毎年負担しています。
さらに、家を解体すれば100万円程度の解体費がかかる見込みです。

櫛毛光三さん
「これが終活の記録です。」

櫛毛さんは、2年前にがんを患いました。
子どもたちに迷惑をかけたくないと、一刻も早い売却を考えています。

櫛毛光三さん
「子どもたちも土地は“いらない”と。
なんとか処分しなないといけないと、だんだんクローズアップされてきた。」

利益を度外視 それでも売れ残ることも

櫛毛さんが売却を持ちかけた、地元の不動産会社です。
実は同じような相談が相次いでいます。

「引き取ってほしいということで。」

人口減少で郊外の不動産価格が下がる中、売却依頼が急増し、価格低下に拍車がかかっています。

不動産会社 担当者
「一斉に造られた分譲地ですから、皆さん一斉に手放したくなる。
それが今、波になってきているという実感があります。」

この不動産会社は、地域全体が荒廃すると今後の仕事に影響が出ると考え、利益を度外視して営業をかけることにしました。
近所の住民を訪ね、駐車場や畑の用地として買ってもらえないかと呼びかけます。

不動産会社 担当者
「とにかく、いくらでもいいから手放したいということで。」

住民
「多いですよね。」

不動産会社 担当者
「そうなんです、多くて。
畑を広げる予定とか。」

住民
「ないですね。」

不動産会社 担当者
「ないですか、なるほど…。」

粘り強く交渉を続けていますが、多くの土地が売れ残ったままです。

手数料が低すぎて不動産会社が断るケースも

高瀬
「身につまされますね。
こういった現象が全国で起きているということですか?」

井原
「特に都市の郊外に開発された住宅地では、広く起きていることなんです。
実は、売れにくいもう1つの理由があるんです。
不動産会社がもうからないということです。
例えば100万円の物件であれば、不動産会社は価格の最大5%の手数料を売り手と買い手から受け取ることができます。
この場合は合計10万円ですね。

実際、これよりも安い不動産もありますよね。
ですからもうからないということで、不動産会社も取り扱いを断るケースが多いということなんです。
そこで国は今月(1月)から、価格が低い不動産の仲介手数料を引き上げました。
少しでも売れやすくするためです。

こうした中、買い手を見つけるための新たな方法も生まれています。」

所有者が自ら物件の情報を投稿

父親が残した家を売りに出している、40代の男性です。

男性
「ヘビとか気をつけてください。」

築およそ20年の庭付き住宅。
しかし、家は荒れています。
地元の不動産会社はとりあってくれませんでした。

そこで男性が利用したのが、相次いで誕生している新たな不動産サイトです。
特徴は、物件の情報を所有者が自ら投稿し、値段も自由につけることです。

このサイトでは、まず、個人どうしで物件に関するやりとりを行います。
そして、商談がまとまった後で、運営している不動産会社が契約をとりもちます。
営業の手間が省けるため、低価格でも利益が出るという仕組みです。

売り方は自由 意外な反応も

このサイトの場合、売り方も自由です。
例えば、父親が使っていた家具。

男性
「全く手つかずで、置いたままになっています。」

不動産会社を通す場合、一般的に売り主が処分してから販売しますが、多額の費用がかかると男性はためらっていました。
そこで、「家具ごと引き取ってほしい」と掲載しました。
すると、問い合わせは100件以上。
「費用が節約できて助かる」といった反応も寄せられました。

今月開かれた内覧会。
訪れたのは、若い親子連れでした。
格安の不動産があると知り、子どもが遊べる別荘にしたいと考えています。

男性
「朝とかかなりきれいです。
このとおりに一望できる。」

家が古くても、自然が豊かですぐに暮らせることがポイントでした。

「長い休みの時とかでしょうね。
遊びに来て使えたりするといい。」

サイトへの掲載をきっかけに、複数の人が名乗り出て、商談を進めるまでになりました。
男性
「不動産屋さんが鼻にもひっかけてくれなかったのに。
夢物語を見ている感覚。」

「本当は使える 市場に出すことが重要」

不動産の専門家は、こうした情報発信の手段が新たなニーズの掘り起こしにつながると期待を寄せています。

日本大学 清水千弘教授
「価格が安いが故に買える人たちがいる。
本当は使えるものも結構ある。
使える物件を流通させることにより、いわゆる社会的な価値を維持する。
そのためには最低限物件を市場に出していくことが重要。」

買う側の注意すべき点は

近江
「売る人も買う人も、お互い満足となる仕組みであればいいですね。」

井原
「特に買い手にとっては、売り手が気づいていなかったメリットもこの物件にあるかもしれないということで『買いたい』という意思表示をして、お互いウィン・ウィンの関係になることもあるわけです。
そのためには、買う側に注意すべき点があると、先ほどの清水さんは指摘しています。

例えば、重要事項の説明です。
不動産の取り引きでは、雨漏りやシロアリなど建物の状況。それから建て直しができるのかなどの説明が義務づけられています。
しかし個人どうしのやりとりでは、こうした情報が十分に伝わらないまま話が進んでしまう可能性があると話していました。
話がまとまる前に資格をもった専門家に入ってもらい、状況を確認してもらうことを勧めたいということです。」

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