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2018年1月20日(土)

トランプ大統領 就任から1年 ~好調なアメリカ経済のリスク~

小郷
「こちらは、アメリカ、ホワイトハウスの大統領執務室です。」




高橋
「このあるじ、ここにふだんいるトランプ大統領ですが、20日で就任から1年になります。
その節目を前に、集会で演説をしました。」

アメリカ トランプ大統領
「経済は絶好調で多くの企業がアメリカに戻り、株価も最高だ。」





この1年の業績を自画自賛したトランプ大統領。

集会の参加者
「私は熱烈な支持者。
(大統領は)やるべきことをやっていて、国を変えようとしている。」

集会の参加者
「(この1年は)企業には歓迎すべきものだったが、社会の分断は深まり、団結が難しくなっている。」

1年前に就任したトランプ大統領。

アメリカ トランプ大統領
「アメリカを再び偉大にする。
アメリカファースト!」




アメリカ第一主義を掲げ、国内外にさまざまな波紋を投げかけてきました。
一方で、経済は絶好調。
企業の業績はよく、失業率も低下しています。

大幅な法人税の引き下げで、企業の業績向上への期待感から、株価は最高値を更新。
IMFは、今年(2018年)のGDPの見通しを、2%台後半まで大幅に上方修正する方針です。
しかし、その好調なアメリカ経済も不安要素を抱えています。
保護主義的な政策が、成長の足かせになるというのです。

経済好調の理由は?

小郷
「ワシントン支局の田中記者とお伝えします。
田中さん、アメリカ経済、なぜこんなに好調なのかということなんですが、トランプ大統領の成果といえるんでしょうか?」

田中健太郎記者(ワシントン支局)
「確かに税制改革の実現は評価されると思います。
ただ、トランプ大統領は自らの成果を強調していますが、実際にはそうとも言えません。
といいますのも、アメリカ経済は10年前のリーマンショックの後、オバマ前政権の財政出動や金融緩和によって緩やかに成長を続けてきました。
トランプ政権は、この流れにうまく乗って、経済の好調を維持してきたと言えます。」

注目はNAFTA見直し

小郷
「一方で、TPPから離脱するなど、保護主義的な政策を掲げていますよね。」

田中記者
「そうなんです。
今、焦点になっているのが、カナダとメキシコとの間で行っています、NAFTAの見直しです。
トランプ政権は、極めて厳しい要求を突きつけていることから協議は難航していまして、交渉の行方次第では、好調なアメリカ経済に水を差しかねない状況になっています。」

高橋
「そのNAFTAなんですが、アメリカ、メキシコ、カナダ、この3か国の間で、互いに関税をゼロにするという協定です。
日本を含めて世界各国の企業がこのNAFTAの枠組みを活用しまして、人件費など、製造コストが低いメキシコで工場を作って、関税ゼロで、安く、大きな市場であるアメリカに製品を輸出しているんです。」

小郷
「田中さん、トランプ政権は、このNAFTAに不満があるということなんですよね。」

田中記者
「トランプ大統領は、メキシコに雇用を奪われたとして、お互いにとって利益がある公正な協定に見直すべきだと主張しています。
このため、自動車分野では、新たなルールとして、『アメリカ製の部品を50%以上使わないと関税をゼロにしない』と迫っています。
これに対して、メキシコやカナダは強く反発していますが、トランプ政権は、こうした要求が通らなければ、NAFTAから離脱すると主張し、強硬な姿勢を崩していません。
こうした姿勢には、アメリカ国内からも慎重な対応を求める声が強まっています。
さらに、メキシコをアメリカへの輸出基地として活用している日本企業にも不安が広がっています。」

NAFTA見直しに懸念

田中記者
「インディアナ州にある、エンジンを製造するメーカーです。
アメリカの製造業も、NAFTAの再交渉の行方に懸念を強めています。」



エンジンの製造に欠かせないのが、メキシコ製のこの部品です。
関税がかからないため、低コストで仕入れることができます。

エンジン事業の部長、メリットさんです。
エンジンの製造には、650種類の部品が必要です。
トランプ政権が要求するように、アメリカ製の部品を増やせば、製造コストが上昇する可能性があります。
そうなれば、国際的な競争力が低下し、トランプ大統領の狙いとは逆に、雇用の維持が難しくなりかねません。

カミンズ エンジン事業担当 メリット部長
「エンジンはメキシコをはじめ、世界各国の部品で作られているので、自由貿易はわれわれに欠かせない。」

NAFTAのメリットを活かして、メキシコに進出した日本企業も影響が深刻になっています。

プラスチックの自動車部品を製造している工場です。

社長の多田晃久さんです。
日本国内の競争が厳しい中、4年前、初めて海外に進出しました。

サンショー メキシコ法人 多田晃久社長
「われわれは中小企業なので、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで進出してきた。」

しかし、トランプ政権がアメリカ製の部品の使用を求めていることで、今後の受注に影響が出ないか、不安を募らせています。

営業担当者
「不安がある。
みんなどうなるか分からないので、(取引先は)いまの生産量を増やさない傾向。」



先月(12月)から始めるはずだった第2工場の建設も見送りました。
中小企業は投資の財源も限られるため、大手メーカーのように工場を移転することは簡単ではありません。

サンショー メキシコ法人 多田晃久社長
「生産拠点を移すことはできない。
ここで生き残りをかけて成功する以外はない。」

アメリカ 輸出産業は?

田中記者
「多田さんのように、いわば背水の陣でメキシコに進出している日本企業は1,000社以上あります。
経営者にとっては、トランプ大統領の発言、ひと言ひと言が気になる状況です。
また、今回の取材を通じて、アメリカの製造業もNAFTAの見直しを歓迎していないことを強く感じました。」

小郷
「そうなんですね。
もし、関税がかかることになりますと、アメリカの輸出産業もダメージを受けることになりますよね、高橋さん。」

高橋
「そうなんです。
今まではアメリカ産のものをメキシコに輸出する時、関税かかりません、関税がゼロだったんですが、関税がかかるようになりますと、その分、価格を上げざるを得ないため、売り上げにも影響が及ぶ可能性が出てきています。」

田中記者
「今、その影響を最も懸念しているのが、農業界です。
交渉が決裂して、NAFTAから離脱すれば、アメリカの農産物の競争力が失われると危惧する声が高まっているんです。」

NAFTA見直しに懸念

年明けに開かれた、全米最大の農業団体「米国農業連合会」の総会です。

参加者がつけているのは、「NAFTAを支持する」と書かれたバッジ。
NAFTAにとどまるよう求めています。
アメリカの農業は、NAFTAによって輸出を増やしてきました。
とりわけメキシコへの輸出量は多く、豚肉は最大、牛肉は2番目の輸出先です。
メキシコへの輸出が減少すれば、経営が立ちゆかなくなると懸念しているのです。

米国農業連合会の副代表、バンダーウォルさんです。
トランプ政権のNAFTAへの姿勢を見極めたいと、25年ぶりに大統領を総会に招くことに成功しました。

米国農業連合会 バンダーウォル副代表
「大統領が農業界に前向きなメッセージを送ってくれると期待している。」



総会に現れたトランプ大統領。
農業関係者を前にどんな発言をするのか。
参加者は、固唾を飲んで耳を傾けました。

アメリカ トランプ大統領
「メキシコやカナダがNAFTAでもうけているので、交渉は簡単ではないが、みなさんにとっては公正な内容に見直すつもりだ。」

農業界に配慮したのか、NAFTAからの「離脱」については言及しませんでした。
バンダーウォルさんたちは、ひとまず安どしながらも、いつ大統領が離脱を切り出してもおかしくないとして、NAFTAの重要性を引き続き、政権に訴えることにしています。

米国農業連合会 バンダーウォル副代表
「トランプ大統領はNAFTAから離脱しないと思う。
そう願っている。」

“保護主義”の行方は?

小郷
「アメリカにとって、本当に大事な農業政策ですけれども、田中さん、トランプ政権は今後どうしていくんでしょうか?」

田中記者
「アメリカにとって重要な輸出産業である農業をトランプ大統領が見捨てることはありません。
不安を強める農業界を意識して、トランプ政権は日本に対して、2国間の自由貿易協定の交渉をはじめるよう要求し、農産物のさらなる自由化を迫る可能性もあります。」

小郷
「トランプ大統領が態度を軟化させるということは考えにくいんでしょうか?」

田中記者
「それどころか、ますます態度を強硬にしていきそうなんです。
特に、批判の矛先を向けているのが、中国です。
中国から輸出される安い太陽光パネルや、知的財産の侵害などをめぐる問題で、何らかの措置を発動するかどうか、近く判断すると見られています。
アメリカでは、11月に議会の中間選挙が予定されています。
これに勝利するためにも、トランプ大統領は自らの支持者が求める、各国との貿易不均衡の是正に本腰を入れる見通しです。
ただ、こうした姿勢は、各国との間で貿易摩擦を産みかねず、好調な世界経済を腰折れさせるリスクがあることを注視しなければいけないと思います。」

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