これまでの放送

2018年1月18日(木)

中国企業がロボット導入に走る理由

高瀬
「昨日(17日)から始まった、国内最大級のロボットの展示会です。」

和久田
「世界のロボット市場は人口減少による労働力不足から拡大が見込まれ、2020年には、およそ3兆円規模になると予測されています。
この市場を主導するのが、中国です。」

洋服たたみ スマホ初期設定もロボットで

“特命広報担当、アンドロイドロボットのミライ・マドカと申します。”

昨日から開催されている、産業用ロボットの展示会「ロボデックス」。
国内200のメーカーなどが最先端のロボットをアピールしています。

こちらは、洋服をたたむロボットです。
人手が必要なクリーニング工場などでの導入が期待されています。

さらにこちらは、スマートフォンの初期設定を自動で行ってくれるロボット。
これまで人間が行っていたさまざまな作業を、ロボットに任せることができるようになっています。

中国企業がロボットの“爆買い”?

山元康司記者(国際部)
「こうした日本の最先端のロボット技術に熱い視線を送っているのが、中国企業です。」

ロボット展には、多くの中国人ビジネスマンが詰めかけていました。

「(このロボットは)もっと小さな部品でも運ぶことができますか。」

中国によるロボットの導入はこの5年でおよそ4倍に急増。
ロボットの“爆買い”とも言える状況になってます。

ロボット買い付け業者
「従業員の数も減るし、きつい労働も減る。
ロボットが人に取って代わりますよ。」

この日は、中国最大手の家電メーカー・ハイアールの副総裁も姿を見せました。
日本のロボットメーカーとの関係を深めるためです。

ハイアール 陳録城副総裁
「自動化はますます広がります。
設計から生産やサービスまで、ロボットの応用はさらに広がります。」

背景に「一人っ子政策」による労働力減少

安い労働力を武器に、「世界の工場」として発展してきた中国。
今、国を挙げてロボットによる自動化に急速にかじを切っています。

中国 習近平主席
「イノベーションを推し進め、戦略的に科学技術の力を引き上げる。」

背景にあるのは、長年続いた「一人っ子政策」の影響。
労働力人口は、7年前から減少に転じています。
こうした中、注目されるようになったのが、ロボットです。
製造業やサービス業。
そして物流などの分野で、急速にロボットの導入が進んでいます。

製造ラインの人員 限りなくゼロに

リポート:山元康司記者(国際部)

今、中国企業は、さらなる無人化にしのぎを削っています。
総勢30人で展示会にやってきたこちらの企業。
中国・深セン市で、液晶パネルの製造を手がけています。
すでに、製造ラインの95%以上を自動化しています。

しかし、製品に不具合がないか調べる検品の工程などは、人の手に頼る部分が多く残っています。
製造部門の幹部が、ある展示品の前で足を止めました。

工場の機械にとりつけて不具合を感知するセンサーです。
機械のわずかな振動の変化をとらえます。
このセンサーで、製造中の液晶パネルに発生するひび割れなどの異常を検知できないかと考えました。

「液晶関係。」

「液晶のICを作るときに、間に異物をかんで、包み込んでしまったときにもAE(異常)が発生する。
それをとりましょう。」

「1システムはいくらですか?」

「だいたい200万円から300万円くらいです。」

こうした日本の最先端の技術を使って、製造ラインで働く人員を限りなくゼロに近づけようとしています。

液晶パネルメーカー 華星光電 幹部
「3年~5年後には、液晶パネルの製造で完全な自動化が実現するでしょう。
これから求められる労働者は現場での作業員ではなく、ロボットを管理できる専門知識を持つ高度な人材だけです。」

「中国は自動化に日本より熱心」

中国で急速に進む、無人化の波。
日本企業は、大きなチャンスとみています。
この大手機械メーカーは、去年(2017年)4月、中国で生産ラインを新設。
拡大するニーズに合わせ、増産を進める計画です。

川崎重工業 ロボットビジネスセンター 橋本康彦センター長
「(中国は)非常に決断が早くて、自動化に関して日本より熱心。
ありとあらゆる分野で、中国の皆さんはロボットを使いたいと思っている。
それに応える意味でも、われわれは良いロボットを提供したい。」

「労働争議」の増加も懸念材料

高瀬
「ここからは、中国経済に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授にお聞きします。
こちらに中国の労働人口の推移を用意しました。
中国は労働力が豊富にあるというイメージがあったんですが、実は減ってきているんですね。
どういったことが要因になっているのでしょうか?」

神田外語大学 興梠一郎教授
「『一人っ子政策』の余波もあり、急速な少子高齢化が進んでいるということですね。
企業にとっては今後、労働人口が減っていくだろうという懸念があります。

そして『労働争議』。
仲裁機関に訴えた件数ですが、右肩上がりになっています。
こちらも企業にとっては懸念材料になっています。」

高瀬
「このあたり(2008年頃)から急激に増えていますね。
これはなぜですか?」

神田外語大学 興梠一郎教授
「リーマンショックですね。
中国は欧米への輸出が中心でしたので、そうした産業が打撃を受けて、農村からの出稼ぎ労働者、組み立てに携わっている人たちが解雇されたり企業の倒産などが起きたと。
もう1つは、当時の中国政府は権利意識というものを悪い意識と捉えずに積極的に教えていこうとしたんですね。
そうした意識の高まりもあって、かなり抗議行動なども増えていた時代です。」

和久田
「企業としては、そうした面も含めて無人化を進めたいということなんですね。」

神田外語大学 興梠一郎教授
「そうですね、ロボットならそういう問題は起きないだろうということです。」

中国の「ブーム」は必ず政府が旗振り役

和久田
「ロボットを導入する動き、中国政府も後押しをしているんですね。
どういった思惑があるんでしょうか?」

神田外語大学 興梠一郎教授
「急にこうしたブームのようなものが起きているというのは、必ず政府が旗振り役になっているということです。
補助金を出したり、支援をしています。

習近平政権になってからは『中国製造(メイドインチャイナ)2025』を打ち出して、“製造強国”を目指しているんです。
これは、従来、中国の製造業というのは組み立て中心の『労働集約型』で、ここに大量に農村から若い労働力が来ていたと。
ところがそれだと利益があまり多くの企業に落ちない。
ブランドはだいたい海外製品だということで、自分で作れるようにしたい、ブランドを作りたい。
そのためにはやはりAIやロボットなど、先進国の製造業が取り入れているものを自分たちも導入して、『技術集約型』にシフトすると。
そこでロボットに注目が集まっていて、特に日本が先進的な技術を持っているということで、熱い視線を送っているんです。」

日本企業は冷静な対応が必要

高瀬
「日本企業にとっては大きなビジネスチャンスともいえますが、どう向き合っていけばよいのでしょうか?」

神田外語大学 興梠一郎教授
「中国が作れないものを作れるので、そういう意味では“爆買い”という現象が起きていると思うんですね。
ただ、この『中国製造2025』の最終目標は、ロボットの『国産化』です。
いずれは自分たちも作れるようになりたい、でないと利益が落ちませんので。
そのため永遠に“爆買い”が続くか分からない。
また、大量の労働者の失業が発生する可能性があります。
そうすると社会不安が起きて、中国政府がどこかで歯止めをしなければいけなくなってくる。
すでに地方などではロボットという掛け声の下、かなり過剰な生産も始まっていると聞いていますので、その調整がいずれ起きる可能性もある。
もう1つは、日本の技術に注目しているということは、その技術がほしいわけですね。
日本企業側としては今、短期的には“爆買い”ということで売れていますが、技術流出の問題にも気をつけなければいけないところで、冷静に対応する必要があると思います。」

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