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2018年1月16日(火)

親の不安や悩み「早い段階」で解消する道

高瀬
「今日(16日)は、子どもの身体や言葉の発達の遅れについてです。
『うちの子はまだ歩かない』とか、『言葉をなかなか話さない』といったことで悩んでいる親は多いのではないでしょうか。」


和久田
「子どもの発達の遅れは、虐待に至る原因の1つとして考えられています。
親は、ほかの子どもに比べ、発達が遅れていると感じることで、悩みを深め、子どもとの関係が悪化していく可能性があるためです。」

高瀬
「こうした中、特に『言葉』の発達の遅れに着目し、その後、健全な親子関係が築けるよう支援する取り組みが注目を集めています。」

発達の遅れが虐待につながるケースも

大分県、中津市にある小児科クリニックです。

院長の井上登生(いのうえ・なりお)さんです。
これまで、30年以上にわたって、虐待防止活動を行ってきました。
関わってきた中には、発達の遅れが虐待につながったケースも少なくなかったといいます。

小児科医 井上登生さん
「ほとんどのケースで子どもの発達の状態と、その子の状態に不適切な関わり(があって)子どもと親の関係が、どんどんひどくなっていってしまう。」

1歳6か月健診で「話せる言葉」確認

こうした事態を防ぐために井上さんが大事にしているタイミングが、全ての子どもを対象にした1歳6か月健診です。
詳しく見るのは「言葉の発達状況」。
子どもが4つ以上、意味ある言葉を話せるか、丁寧に確認します。

母親
「物を見てワンワンとかニャンニャンとかは、まだ言わないです。」

小児科医 井上登生さん
「音として聞こえるのは“はーい”のみでいいですか。」

母親
「はっきり言うのはそうですね。」

小児科医 井上登生さん
「単語は“アンパンマン”だけかな?」

母親
「そうなんです。」

話せる言葉の数が少ない場合、親が子どもへの関わり方に苦しんでいる可能性があるといいます。

小児科医 井上登生さん
「お母さんたちが、自分の関わりが悪いので、子どもの言葉が遅れたのではないか、何かほかの要素が悪いので、言葉が遅れたのではないか、自分の中で責任があるという気持ちで、不安でいっぱいになっている。」

支援1:親子関係をチェック・継続的に支援

井上さんは、話せる言葉の数が少なかった子どもと親を呼んで、詳しく検査していきます。

これは、検査の映像です。
子どもが不安を感じる場面を作り出し、親子関係がしっかりと築けているかどうかチェックします。

母親と子どもが遊んでいるところに、見知らぬ大人が入ってきます。
代わりに母親が出ていきます。
母親がいないことに気づいた時点で、子どもがどんな反応を示すのかを見ます。


そこに、母親が帰ってきます。
不安になった子どもが母親のもとに駆け寄ります。
これは、健全な反応です。
この検査で問題があった場合、地域の保健師などと連携して、継続的に支援することにしています。

支援2:言葉の遅れの改善方法を伝える

さらに井上さんは、言葉の発達の遅れを改善するため、映像を見ながら親にアドバイスしています。

親子が一緒におもちゃで遊んでいる場面。
母親は、子どもが遊んでいるのを静かに見守っています。
ここで、井上さんは、もっと子どもが発する声や音を繰り返すように伝えました。


小児科医 井上登生さん
「目の前のボール動くやんか。
僕たちね、あれに合わせて声をかけるんよ。
ゴロンゴロンゴロンゴロン、ゴロリーンって。
そしたらさ、動きに目が合わさるやろ。
そういう感じで声かけていってあげる。
ゴロンゴロンゴロンゴロン、ゴロリーン、出たね〜!っていって、ボールを渡してあげる。」

この時期、子どもの興味に合わせて、親が話しかけてあげることは、言葉の発達を促す上で大事だと言います。

「教えていただかないと気づけないところもある」

井上さんからアドバイスを受けたことで、変わったという親子がいます。

吉田愛(よしだ・あい)さんと、2歳9か月になる、昂之佑(こうのすけ)君です。
1歳6か月の時には、ひと言もしゃべることが出来ませんでした。
当時、愛さんは、言葉の発達が遅れている息子にどう接すればいいのかわからず、苦しんでいたと言います。

吉田愛さん
「なんでこの子はできないんだろう、そればかり思って、押しつけようとする。
座りなさい、ママと言ってパパと言って、押しつけるというか、言わせようとする。」

これは、1歳6か月健診の後に受けた検査の映像です。
昂之佑君がボールで遊んでいるにもかかわらず、愛さんは積み木で遊ぼうと誘っています。
この場面で、井上さんからあるアドバイスを受けました。

吉田愛さん
「おもちゃを本人の興味のある物に一緒に乗ってあげるというのと、言葉になっていなくても、本人がワーと言ったらワーって言ってあげる、アーと言ったらアーと言ってあげる、同じ言葉を繰り返し同じように話してあげる。」

アドバイスを受けて、愛さんは、息子への接し方を変えました。
昂之佑君の興味に合わせて、声を掛けながら遊んであげるようにしたのです。

昂之佑君
「あーお。」

吉田愛さん
「あーお。」

昂之佑君
「なーに?」

吉田愛さん
「あーお。」

昂之佑君
「あーお。」

すると、2歳を過ぎたころから言葉を一気に話すようになりました。
発達の遅れがなくなったことで、愛さんの悩みは解消していったといいます。

吉田愛さん
「教えていただかないと気づけないところもある。
自分がしているつもりでも、そうじゃなかったりもする。
井上先生に検査を受け、お話いただいて、本当によかったなと思います。」



この時期、言葉の発達の遅れを手がかりに、きめ細かく親子を支援することは、健全な親子関係を育んでいく上で大切だと、井上さんは考えています。

小児科医 井上登生さん
「早い段階で気づくと、適切な関わりによって、困っていた要素を取り除くことができる。
大変な状態になる前に、何らかの形で、子どもたちを救っていくために必要。」


高瀬
「子どもが小さいときには、親が子どもの興味にあわせて言葉をかけるということが、子どもの発達という面でも、その後の親子関係を築く上でも大事になってくるんですね。」

和久田
「井上さんたちの取り組みは、現在、全国各地で行われている虐待防止のシンポジウムや、厚生労働省の専門委員会などでも報告されるようになっています。」

高瀬
「こうした動きが、さらに広がっていくといいですね。」

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