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2018年1月13日(土)

シリーズ冬点描 三江線の駅ノート

小郷
「シリーズでお伝えしている『冬点描』。」

二宮
「けさは、島根県と広島県を結ぶ、JR三江線です。」


小郷
「今年(2018年)3月には廃線になってしまうのですが、今、全国から、このように鉄道ファンですとか、懐かしい思い出を持った方が大勢集まっているんですよね。」

二宮
「三江線の駅の多くは無人駅なのですが、廃線が決まってから、駅の片隅にノートが置かれるようになりました。」

小郷
「そのノートから見えてきたのは、訪れた人たちが触れた人々の温かさでした。」

三江線 最後の冬 駅ノートの“ぬくもり”

JR三江線です。
島根県江津市から広島県三次市までを結ぶ、全長108キロの路線です。

江の川沿いにゆっくり走る車窓には、山あいの、のどかな風景が広がります。
昭和5年に開業、以来地域の暮らしを支えてきました。
川を船で行き来していた住民にとって、待望の鉄道だった三江線。
都会への憧れや、出会いと別れ。
人々のさまざまな思いと共に走り続けてきました。

「母親と一緒に映画を見に行くのが楽しみで、いちばんの思い出になっています。」




「(夫が車窓から)乗り出して別れたのが最後だった。
兵隊にいくのにね。
三江線を忘れられん、本当。
なくなっても忘れられん。」



山に囲まれた集落にひっそりとたたずむ川戸駅です。





この駅舎の片隅に、乗客が置いたノートがあります。
そこには、この駅に降り立たった人たちの忘れられない思い出が刻まれていました。

“人の心も、山の景色も、すばらしい一日でした。”

“優しくて、あたたかく出迎えてくださいました。
ただただ感謝です。”

“ご自宅から「さといも」も出してきて、惜しげもなくくださいました。”

“手を振る子どもの姿が心に残っています。”

乗客が目にしたのは、地域の人たちの優しさがにじむ沿線の風景でした。
かつて旅行で訪れた女性は、こんなメッセージを残しています。

“かどや商店さん、朝早くから開店していて嬉しいです。”

川戸駅前にある「かどや商店」です。





毎朝5時に店を開けるのは、山﨑宏明さんと妻の好子さんです。
50年変わらず、三江線の始発が来る前に店を開けてきました。

山﨑好子さん
「昔はシャッターを開けると、目の前に(お客さんが)おられたこともあるけど。
だから、その習慣ですね。」

今は、朝早くから来るお客さんはほとんどいませんが、毎朝の準備は欠かしません。
体が続く限りは、この店を続けていきたい。

廃線になっても、山﨑さんは、変わらず地域の人たちの暮らしを支えていこうと思っています。

山﨑宏明さん
「かぜ、ひきなさんなよ。」



山﨑宏明さん
「年寄りと話をするのが好きだし、喜んでくれる。
いまの通り、簡単でもあいさつが出来るでしょう。
いい正月迎えなさいとか。
それでやっているようなもの。」

当たり前の日常の中に、旅人が感じたぬくもり。

“かどや商店さん、あたたかい笑顔をありがとう。”

冬、列車を待つ乗客を温めるのは、1枚の毛布です。

“東京から来ました。
ベンチに敷かれたタオル、すごく温かい気持ちになれました。
またここに来たいです。”



毛布を置いたのは、近所に住む女性たちです。
誰に頼まれるわけでもなく、駅の手入れを40年間ずっと続けてきました。
駅を使う誰かのために。



「廃線になるからといって、私たちは、ばたばたしませんので、いままでどおり、40年変わらず。」




「どこ行くの?」

「一緒に江津、行きます。」

「気をつけてね。
お父さんによろしくね。」

三江線は、まもなくその役目を終えます。

“いつも時間に追われるようにして過ごしていましたが、忘れかけていた大切なものを思い出せたような気がします。”

三江線とともに過ごした暮らし。
いとしい記憶の中に、いつまでも、いつまでも。

小郷
「廃線になっても、こうしたあたたかさがずっと残っていくといいなと思いますよね。」

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