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2018年1月12日(金)

小さな駄菓子屋 50年続く理由

高瀬
「シリーズでお伝えしている『冬点描』。」

和久田
「今日(12日)の舞台は、山形です。」

厳しい冬。
子どもたちの姿が絶えない、小さな駄菓子屋さんがあります。
今日の主人公・山川昭子さん、74歳。
子どもたちを遠慮なく叱りつける名物おばちゃんです。

山川昭子さん
「こら!言うこと聞かねぇと、いいか!」

山川昭子さん
「『てめぇ』なんて言葉つかったら、だめだ!」

おばちゃんと子どもたち。
ひと冬のふれあいを追いました。

「店に来る子は自分の子 自分の孫」

取材・撮影:小川耕平(山形局)

山形県山形市。
例年よりも気温が低く、雪の多い冬を迎えています。
氷が張った大きな池の隣に、おばちゃんの駄菓子屋さんはあります。

6坪の小さな店内。
置いてあるのは、子どもたちが大好きな安い駄菓子です。
店の名前は「はじめや」。
50年前、おばちゃんが店を開いたときに名付けました。

子育てをしながら商売がしたいと、家を建てると同時に店を構えました。
日用品から始めた店でしたが、子どもたちのために、少しずつお菓子を増やすようになりました。
1日の売り上げは数百円程度。
それでもおばちゃんは、1年中、店を開けています。

『はじめや』のおばちゃん 山川昭子さん
「みんな来る子は自分の子ども、自分の孫っていうようなかたちで、商売は二の次みたいなもんだね。」

「話しやすい お菓子に囲まれていると落ち着く」

市内で暮らす小学6年の加藤愛結ちゃん、12歳です。
保育園から「はじめや」に通う、常連の1人です。
両親は共働きのあゆちゃん。
その日の学校での友だちのこと、勉強のこと、あゆちゃんにとって、なんでも話すことのできる大事な場所です。

山川昭子さん
「優秀だね、ちょっと見せて。
見たって分からないんだけどよ。」

加藤愛結ちゃん
「あと1問だったんだよ、惜しい惜しい。」

山川昭子さん
「95点だもの、すごいじゃん。」

加藤愛結ちゃん
「話しやすい。
お菓子に囲まれていると落ち着く。」

悩みもおばちゃんに相談します。
春には中学生になるあゆちゃん。
難しくなる勉強についていけるのか、不安を打ち明けました。

加藤愛結ちゃん
「先生が『中学になると寝る時間も省いて(勉強)やれ』とか言うの。」

山川昭子さん
「そんなこと言うのか、先生。」

先生の中には、おばちゃんがかつて叱った子どもたちもいます。

山川昭子さん
「何かあったときは(私が)言う。
中学の先生ならお友だちいっぱいいるから。
心配ない。」

愛結ちゃん、ほっとひと安心。

おばちゃんが大切にしてきた流儀

50年間、おばちゃんが大切にしてきた流儀があります。
優しいおばちゃんですが、店の流儀を守らない子どもには、カミナリ!

・流儀その1 “片づけをする”

山川昭子さん
「そこさ、ごみ散らかしたの誰でしょうか!」

・流儀その2 “乱暴な言葉はダメ”

山川昭子さん
「ほら、くそ野郎じゃないべな、くそ野郎って言ったらだめ!」

・流儀その3 “暴力をふるわない”

山川昭子さん
「こら!だめだって、頭たたいて!」

でも今、おばちゃんをいちばん困らせているのは、子どもたちが熱中するゲーム。

山川昭子さん
「今度、これ持ち込み禁止にすっから。
分かった!?」

昔、子どもたちがみんなで遊んだ、めんこやコマ。
今はゲームに代わりましたが、おばちゃん、ちょっと寂しげです。

山川昭子さん
「ある程度の時間になると『やっぱりだめだ』って言う。
昔の方がよかったような気がするけどね。」

「自分の孫が結婚するみたいなもの」

子どもたちが帰った夕方6時。
思わぬ来客がありました。

澤田雄介さんです。
専門学校卒業後に山形を離れ、今は札幌で働いています。
物心つく前から通っていた澤田さん。
小学生の頃は、毎日のようにここで遊んだといいます。
明日、初めて親に彼女を紹介します。
実は、その緊張をほぐすために、おばちゃんに会いに来たんです。

山川昭子さん
「奥さん大事にするよな。
(澤田さんが)変なことしたら、おばちゃんが往復ビンタ。
『この野郎、何やってんだ』って。」

澤田雄介さん
「おばちゃんに会うと元気をもらえますし、(背中を)押されましたね。」

山川昭子さん
「本当にうれしいです。
自分の孫が結婚するみたいなものだからね。」

50年の節目 背中を押されて

まもなく50年の節目。
実は今、おばちゃんは店を畳むかどうか悩んでいました。

山川昭子さん
「年も年だから、明日大丈夫かなって思うときもある。
だから区切りのいいところで辞めた方がいいのかなって。」

迷いながら迎える年の瀬です。

成人式の日。
晴れ着姿の若者たちが店に集まってきました。
かつて店に通った子どもたちです。

「花束です。」

山川昭子さん
「私があげなきゃいけないのに。」

「50周年、お疲れさまです。
これからも頑張ってください。」

山川昭子さん
「私も振り袖着てくればよかった。」

店を続けていくことに不安を抱えていたおばちゃん。
今度は子どもたちから背中を押してもらいました。

山川昭子さん
「まさかこんなことをしてもらえるとは、本当にうれしいです。
変わらない、今までどおりにやりたいです。
今から来る子どもたちも、悪いことをしたらガンガン怒鳴りつけるし。」

山川昭子さん
「ゲーム一時休憩して。
分かったか!」

山川昭子さん
「ちゃんとお片づけしなさいよ!」

真冬だけど、あたたかい。
今日もにぎやかな、おばちゃんと子どもたちの駄菓子屋さんです。

和久田
「こんなに愛情深いおばちゃんがいて、近所の子どもたちが、なんだかうらやましいですね。」

高瀬
「まだこんな場所があるんだなという感じがしましたね。
自宅以外にほっとできる場所があるっていいなと、改めて感じました。」


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