これまでの放送

2017年12月28日(木)

なぜ福祉事業所の閉鎖が相次ぐのか

高瀬
「いま全国で障害者が突然、仕事を奪われる事態が相次いでいます。」

解雇された障害者
「会社が倒産して、ショックでした。
いっぱい苦しいことがあった。」

この夏、ある福祉事業所が突然、閉鎖され、154人の障害者が解雇されました。

「収入が入ってこなくて、経済的にはなかなか大変ですね?」

解雇された障害者
「おふくろに借りて借りてで。
あとは少しあった(貯金)分で。」

閉鎖された事業所には、社長の趣味とされる大量の仏像や掛け軸が残されていました。

解雇された障害者
「バカにしとるわ、みんなを!
俺、怒ったことあるか?」

高瀬
「今、全国で福祉事業所が閉鎖され、障害者の解雇が相次いでいます。
今年(2017年)の夏以降、500人以上が解雇されました。
これらの福祉事業所は、国が障害者の働く場を広げようと設けた『就労継続支援A型』と呼ばれる事業所です。」

和久田
「このA型事業所では、一般企業での就労が難しい障害者を雇い、原則として最低賃金以上の給料を支払います。
そして、事業所には、国や自治体から補助金が支給されます。
これは障害者をサポートする職員の人件費や事業の運営経費をまかなうためです。」

高瀬
「しかし、その補助金が本来の趣旨とは違うことに使われたことが原因で、A型事業所が閉鎖に至るケースが相次いでいます。
名古屋の事例を取材しました。」

閉鎖された事業所 社長の経営姿勢は

8月に閉鎖されたA型事業所です。
障害者が物品の仕分けやシール貼りなどの仕事を行っていました。

運営していた会社は、全国に6か所の事業所を展開していました。
閉鎖のひと月前、社長は突然姿をくらまし、今も3か月分の給料が支払われていません。
なぜ、閉鎖に至ったのか。
会社の内情をよく知る人物にたどり着きました。
野々村ふさ子さんです。
事業所の設立当初から、障害者を支援してきました。
社長の経営姿勢に、疑問を感じていたと言います。

元職員 野々村ふさ子さん
「(社長は)私利私欲に走ったよね。
申し訳ないけど、あなたのためにお金(補助金)あるんじゃないんだよって。
この子たち(障害者)のためにあるんだよって。
あなたのために国からお金(補助金)なんてもらえるかと思って。」

事業所内で撮影された写真です。
元職員によれば、社長は趣味の仏像や絵などを大量に購入していたと言います。

急増している「A型事業所」

A型事業所の制度が創設されたのは2006年。
以来、急増し、その数は20倍以上になりました。

株式会社など、民間からの参入が認められていることが大きな要因です。

さらに、A型事業所の立ち上げを後押しするコンサルタント会社の存在もあります。
「補助金によって、安定した高い収益が得られる」とうたっています。

こうしたなか、今回閉鎖した事業所も4年前から新たに参入してきました。

解雇された154人 再就職は

野々村さんは、障害者が行き場を失ったことに責任を感じ、再就職支援に奔走しています。
この日は、知的障害と聴覚障害のある女性を連れて、別のA型事業所へ面接に向かいました。

元職員 野々村ふさ子さん
「体力はある?OK?」

女性
「大丈夫です、元気。」

この女性は、かつて縫製工場など一般企業で勤めたこともありますが、どこも長くは働けませんでした。
そのため、A型事業所への再就職を強く望んでいます。

女性
「会社が倒産して、すごいショックでした。
すごい寂しかったし、悲しかった。
仕事を探すのは大変ですが、頑張ります。」

元職員 野々村ふさ子さん
「結局、1個ダメだったもんね。
会社、面接に行ったけど落ちちゃったもんね。
それもすごいショックだったし、とりあえず就職活動はしてました。」

突然の解雇からおよそ2か月、ようやく再就職が決まりました。
解雇された154人の障害者のうち、野々村さんが再就職につなげられたのは、この女性で5人目です。

補助金で給料を埋め合わせていた

なぜ、突然の解雇という事態に陥ったのか。
社長が開いた説明会の映像を入手しました。
社長は、障害者が行う仕事だけでは採算がとれず、行政からの補助金で障害者の給料を埋め合わせていたと説明しました。

社長
「1番の原因というのは(最低賃金)845円でみんなの給料を払えと、これはずっと(事業所)立ち上げの時から課題でした。
支援費(補助金)でみんなの給料を払うなと行政からの指導でやってきたんですけど、実は補助金でみんなの給料を払っていたのが現状になっていたんです。」

その後、社長とは直接連絡がとれなくなり、障害者に給料が支払われるのか、わからないままです。

事業収入だけでは給料をまかなえない状況

和久田
「取材にあたった白田ディレクターです。
この社長は、補助金で障害者の給料を埋め合わせていたと話していましたが、そもそも補助金を障害者の給料にまわすことっていけないことなんでしょうか?」

白田一生ディレクター(文化・福祉番組部)
「補助金は、職員の人件費や事業の運営経費に充てるべきもので、障害者の給料にまわしてはいけないことになっているんです。
障害者の給料は、障害者が働いたことで得られる事業収入からまかなうことになっています。
しかし、閉鎖した事業所では、事業収入を十分にあげられないなか、補助金によってなんとか経営を続けていたようです。
元職員たちは、社長にもっと経営努力をしてほしかったと話していました。
補助金の使い方について、社長にも取材を申し込みましたが、話を聞くことはできませんでした。」

高瀬
「そうしますと、“補助金の使い方のルールをもっと厳しくしていったほうがいいのでは?”ということに当然なりますよね。」

白田ディレクター
「実は、今年4月、厚生労働省は“経営を改善しない事業所は今後指定の取り消しもありえる”として、制度の見直しに踏み切りました。
一方で、事業所からは“真面目に努力しているにもかかわらず、障害者の給料をまかなうだけの収入をあげられない”という悲鳴の声が聞こえてきました。
実際に名古屋市が行った調査でも市内のA型事業所のおよそ8割が、事業収入だけでは障害者の給料をまかなえないという状況であることが判明しました。
福祉の理念なしに補助金に頼ってきた事業所に改善を促すことは必要ですが、障害者が働き続けられるよう国や自治体が事業の内容や取り組み状況をチェックし、経営の改善を前向きに後押しする方策を考えることも必要なのではないでしょうか。」

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