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2017年12月22日(金)

キタサンブラックが強い理由

歌手・北島三郎さんがオーナーの「キタサンブラック」。
今、この馬に熱い視線が注がれています。
最も格が高いG1レースで6勝。
最多勝利記録まであと1勝に迫っています。
その記録を達成しているのは、シンボリルドルフ、ディープインパクトなど4頭。
いずれも記録にも記憶にも残る名馬たちです。
こうした馬に今、キタサンブラックは肩を並べようとしています。

武豊騎手
「スピードもありますし、スタミナもありますし、名馬と言っていいと思う。」

取材を進めると、キタサンブラックの強さは、並外れた身体能力にあることがわかってきました。

清水靖之獣医師
「通常の馬に比べたらバテにくい。」

明後日(24日)行われる「有馬記念」を最後に引退するキタサンブラック。
その強さの秘密に迫ります。

デビュー戦から「体幹」が強かった

高瀬
「スタジオは、すっかり競馬場の雰囲気になりましたね。」

和久田
「青々とした芝が広がっています。
けさは、元騎手で競馬ジャーナリストの細江純子さんとお伝えします。」

高瀬
「細江さんはデビュー当初からキタサンブラックに注目していたそうですが、どんなところに注目してきたんですか?」

競馬ジャーナリスト 細江純子さん
「デビュー戦の時にまっすぐ走っていて、体幹の強さを感じたんですよね。
通常ですと、若い馬はまだ成長過程なのでフラフラしてしまうんですが、キタサンブラックはちゃんと上体が起きて走っていたんです。
きゅう舎にすぐ見に行ったんですが、その時は今よりも体重が30キロくらい少なかったので、馬というよりは、どちらかというとキリンみたいでした。
管理される調教師さんもそうおっしゃってましたね。」

和久田
「こちらに、キタサンブラックを再現してみました。

先月(11月)のレースの時の体重は542キロ。
この時の出走馬の平均は490キロだったので、かなり大きいですね。
今日(22日)は細江さんに、このキタサンブラックの強さのポイントを挙げていただきました。
まず1つ目は、『驚きの身体能力』です。」

【強い理由(1)】鍛えるだけ強くなる「驚きの身体能力」

キタサンブラックは当初、ほとんど無名の存在でした。
父も母もG1レースで勝ったことはなく、あまり注目されていませんでした。
そんなキタサンブラックが強くなった理由は、厳しい調教にあります。
トレーニングセンターにある、距離およそ1,000メートル、高低差32メートルの上り坂、ここを何度も走ることで体を鍛えてきました。

普通の馬は、ここを走ると激しく疲労するため、通常1日1本にとどめます。
ところがキタサンブラックは、なんと1日3本も走ってきたのです。
ほかの馬をはるかに超えるハードなトレーニングを重ね、キタサンブラックは筋骨隆々の体になっていったのです。

清水久詞調教師
「(この馬を)使うごとに、本当に強いな、強いなって思わされた。
鍛えたら鍛えるだけ強くなるんじゃないか。」

今回、キタサンブラックの体を調べたところ、並外れた心肺機能も備わっていることが明らかになりました。
通常の競走馬の心拍数が1分間に40回ほどなのに対し、キタサンブラックは28回だったのです。

清水靖之獣医師
「通常の馬と比べたら心拍数が少ない。
1回の拍動で多くの血液を全身に送ることができる。
心臓の負担が少ないので、バテにくい。」

スタミナ、スピード、もうひとつのギア…

高瀬
「ほかの馬も同じように鍛えれば強くなるものではないんですか?」

細江純子さん
「その可能性もありますが、馬は大きな体を細い足で支えていますよね。
それだけ負荷をかけると、馬の足元の腱などを痛めてしまって、けがにつながりやすいんです。
キタサンブラックはそれに耐え得る体を持っていたということですね。」

和久田
「そんな強じんな肉体を持つキタサンブラックならではのレースが、去年(2016年)のジャパンカップ。
距離は2,400メートルです。」

高瀬
「キタサンブラックはスタートから先頭を走っていますね。」

細江純子さん
「スタートが良かったというのと、1歩が大きいので、スムーズに先頭に立って、武豊騎手のうまいエスコートもありましたが、何といっても見ていただきたいのは、最後の直線なんです。

通常は、最初に先頭に立った馬というのは、前半のリードを保って最後をしのぐという形なんですが、なんとキタサンブラックはここから後続馬を引き離すんです。
スタミナ、スピード、そしてもうひとつギアがあったという、今までのレースの中でもこのジャパンカップが私はいちばん強かったなという印象です。」

和久田
「やはりバランスがいい馬なんですか?」

細江純子さん
「バランス、そして心臓もいいんだと思います。」

和久田
「そして、細江さんが挙げたもう1つの強さのポイントは、『折れない心』です。
それを実証したレースがこちらです。」

【強い理由(2)】アクシデント乗り越える「折れない心」

G1レース、秋の天皇賞です。
このレース、いきなり、スタートでキタさんブラックはゲートに頭をぶつけてしまい、出遅れました。

普通の馬なら、ここでやる気をなくすところですが、キタサンブラックは諦めずに走り続けます。
さらに、この日は激しい雨。
コースは田んぼのようにぬかるんでいました。
多くの馬は、はじかれた泥が顔にかかると、走る気力をなくしてしまいます。
そのため、馬場が荒れている内側を避け、外側を走ろうとします。

しかしキタサンブラックは、あえて条件が悪い内側へ進み、ひるまず駆け抜けたのです。
最後まで諦めなかったキタサンブラック。
「折れない心」で勝利をつかんだレースでした。

「すばらしいレースを期待」

高瀬
「馬といえども、勝ちたいという強い気持ちが大切なんですね。」

細江純子さん
「私はいちばん心が、メンタルが強いというのがいちばん大事だと思います。
今のレースでも、ゲートで突進してしまうアクシデントがあったけれども、しっかりと自分を持っていた、リズム良く走れた。
この前のレースの宝塚記念では、実はキタサンブラックは9着と大敗しているんです。
通常ですと、勝っている馬が大敗した後というのは、『もう走らなくてもいいんだな』と、ちょっと気持ちがマイナスになってもおかしくないんですが、それをさらに乗り越えた。
あの(上り坂を走る)3本の調教に耐えられたというのも、そうだと思います。
多くの馬は3本も走ると、その坂路に向かうのを嫌がって逃げてしまったりもするので、真面目に耐え抜いたというその精神力も、キタサンブラックの強さだなと思いますね。」

高瀬
「明後日の有馬記念、細江さんはキタサンブラックのどんなところに注目して見たいですか?」

細江純子さん
「本当にすばらしいレースを期待したいですし、とにかく無事に走ってきてほしいなと思いますね。」

細江
「ぜひ有終の美を飾ってほしいですね。」

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