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2017年11月22日(水)

金融危機20年 過熱する不動産投資

山一證券 野澤正平社長(当時)
「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから。」

20年前の11月、「山一証券」や「北海道拓殖銀行」が相次いで破綻、金融危機が起きました。
バブル崩壊で生まれた巨額の不良債権が原因でした。
その後、日本経済は長きにわたる低迷の時代に突入していきます。
金融危機から20年。
大規模な金融緩和もあって、株価は上昇。
日本経済は上向いてきましたが、はたして、その実態は…。

高瀬
「金融危機から20年を迎えた日本経済を、今日(22日)から3回シリーズで検証します。
1回目の今日は、不動産市場です。」

和久田
「こちらは東京・銀座の『地価』です。
かつて、地価の異常な高騰がバブル崩壊を招き、その後、金融危機を引き起こしました。
そして今。
不動産の価格は都心部を中心に再び値上がりし、銀座の地価は直近で3,890万円まで高騰し、バブル期を超えました。」

高瀬
「背景にあるのが、デフレ脱却を目指して日銀が続ける『大規模な金融緩和』です。
大量に供給されるマネーが、不動産市場に流れ込んでいます。
それを裏づけるように、不動産業向けの新たな融資は、このところ大きく伸びています。
今、不動産市場で何が起きているのでしょうか。」

あふれる“緩和マネー” 過熱する不動産投資

今月(11月)、都内で開かれた不動産投資セミナー。
会場はサラリーマンや主婦などでいっぱいになりました。
今、低金利を追い風に、銀行から多額の融資を受け、投資目的でマンションを購入する人たちが増えているといいます。

参加者
「チャンスを逃したくない。」

参加者
「金利が安いですし、今1棟持っているのですが、1棟じゃちょっと。」

都内に住む30代の会社員の男性です。
20部屋あるマンション1棟を所有しています。
手元に全く資金はありませんでしたが、銀行から、年収をはるかに上回る1億5,800万円を借りて購入できたといいます。

30代 会社員
「銀行は融資に積極的。
自分の資金を一切使わずに購入できたということは、1つの安心感。」

ローンの返済分を差し引いても、年間200万円の利益が出ているという男性。
銀行からさらに融資を受けて、新たな不動産に投資することを考えています。

30代 会社員
「いい物件があれば、ぜひ購入したい。」

活発な不動産投資によって、首都圏では新築マンションの価格がバブル期に匹敵する水準まで高騰しています。

不動産投資は、今や国内だけでなく海外にも向かい始めています。
この日、開かれていたのは、アメリカの不動産への投資を呼びかけるセミナーです。
バーチャルリアリティを使って、どんな物件なのか、イメージを膨らませてもらいます。

「玄関は1つ?」

「正面についているのは1つ。
裏口もあります。」

こちらは、テキサス州の戸建て住宅。
建物の広さは200平方メートルを超え、部屋の数はリビングやダイニングを含め6部屋。
日本円でおよそ3,900万円です。
アメリカの不動産を購入した50代の会社員です。

50代 会社員
「8,400万円、1億7,000万円、1億9,500万円。」

国内に5棟のマンションを所有。
すでに銀行からの借り入れ総額は6億円近くに上っています。

さらに今年(2017年)9月、金融機関から2,200万円を追加で借り入れ、投資目的で、アメリカ・オハイオ州の物件を購入しました。

50代 会社員
「利益が出るものでしたら、次はアメリカでもう1棟ぐらい買いたい。
できればアメリカ以外の国にも投資したい。」

金融機関の投資 なぜ不動産市場へ

高瀬
「スタジオした、経済部の峯田記者です。
銀行から何億円も借りて不動産に投資、それも海外にまでとは、驚きましたね。」

峯田知幸記者(経済部)
「今、銀行の融資が不動産に向かいやすくなっているという構図があるんです。
銀行にとっては、低金利のため、企業への貸し出しで『利ざや』が稼げなくなっています。
また国債などの運用でも『利回り』が低下し、収益をあげられなくなっています。
その一方で、不動産向けは借り手がいる上、土地や建物を担保にすることもできるので、リスクを抑えられるため融資しやすくなっているのです。」

高瀬
「だから、不動産にお金が回りやすくなっているんですね。」

峯田記者
「こうした現状について、金融の専門家は注意が必要だと指摘します。」

アジア開発銀行研究所 吉野直行所長
「銀行は不動産が担保になってますから、そこに貸し出しをする。
そうすると、また不動産の価格が上がってくる。
こういう状況が起こりつつあると思います。
これは1980年代後半、日本が経験したバブルに近い状況に行く可能性を秘めている。」

峯田記者
「取材では、過熱する不動産市場で、すでにひずみが生じている実情も見えてきました。」

ローンを返済できない こんなはずでは…

リポート:峯田知幸記者(経済部)

ローンの返済に苦しむ人たちの相談を受けている団体です。
投資目的でアパートやマンションを購入したものの、ローンを返済できないという人が最近、急増しているといいます。

全国住宅ローン救済・任意売却支援協会 佐々木延彦代表理事
「収益(投資目的の)物件の相談が激増しています。
とにかく事業計画、返済計画が、買ってから1~2年で崩れてしまう。」

特に相談で多いのは、地方のマンションやアパートに投資したケースです。
すでに物件は過剰になっていて、入居者が集まらず、赤字に陥ってしまうことが多いといいます。

年収600万円の50代の男性です。
これまでに銀行から全額融資を受け、アパート1棟とマンション3部屋を購入。
当初、ローンを返済しながらも利益が出ていたといいます。
しかし去年(2016年)9月、北関東でアパートを購入したところ、入居者が6割程度しか確保できず、見込んでいたほどの収入が得られませんでした。
そのため、全体で毎月20万円を超える赤字になっています。
残ったローンの総額は1億8,300万円。
返済のために、生活費を削り、定期預金も取り崩しています。

50代男性
「結局、バブルの再来とは言わないですけど、貸してくれるから借りるというのもある。
できれば最後は止めてくれれば、今の状況はなかったと思う。」

緩和マネー 日本経済にどう生かす

高瀬
「すでに、ほころびも出始めているんですね。」

峯田記者
「地域によっては、人口減少が進み経済が停滞しているにもかかわらず、不動産への融資が過剰になっているとみられるところもあり、日銀や金融庁は神経をとがらせています。」

和久田
「こうしたほころびを広げないためには、何が必要でしょうか?」

峯田記者
「緩和マネーが不動産市場などに偏るのではなく、新たな産業へと流れていくことが大事だと思います。

例えばアメリカでは、アップルやグーグルなど、世界市場をリードする企業が次々と生まれ、株価は史上最高値まで値上がりして、経済全体も押し上げています。
日本でも株価は回復していますが、ようやく金融危機前の水準に戻ったにすぎません。
勢いのある企業がなかなか出てこない、日本経済の実態を映し出しているともいえます。
あふれる緩和マネーが深刻なひずみを生まないようコントロールするとともに、新たな成長産業を生み出していくことが重要だと思います。」

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