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2017年11月17日(金)

高齢者が“キレる”!? その実態は

和久田
「皆さんは、こうした場面に遭遇したことはありますか?」

私が駅のホームで電車を待っている時でした。

「若いのに、何を座っているんだ。
年寄りのイスだ、譲れ!」

私は現在、近くの薬局のレジでアルバイトをしています。

「お支払いはカードでよろしいですか?」

「待てよ!
不機嫌そうな顔をしやがって、お前の対応はどうなっているんだよ!
何ですぐ謝らないんだ!」

薬局アルバイト
「60代か70代くらいだと思います。
何で怒っているのかさっぱりわからなかったので、かなり怖かったですね。
どこでスイッチが入って、どうキレられるか分からないので。」

NHKに数多く寄せられたメール。
怒りを抑えきれず爆発させてしまう、“キレる”高齢者の目撃情報です。
お年寄りに今、何が起きているのでしょうか。

「“キレて”しまうことはありますか?」

和久田
「中澤アナウンサーです。」

高瀬
「こちらが怒られているような気がして、気持ちが滅入ってしまいそうになりましたね。
もともと『雷オヤジ』という言葉もありますし、怒りやすいお年寄りって昔からいましたし、高齢者の人口全体が増えていますから、そうなるのではという気もするんですが…。」

中澤
「今回、NHKでは65歳以上の人を対象にアンケートを行いました。
『最近、日常生活の中で感情が抑えきれずに“キレて”しまうことがありますか?』と尋ねました。
結果はこちら。

回答した487人のうちの半数が、『よくある』や『たまにある』と答えています。
さらに、『年齢とともに感情のコントロールが難しくなっている』という人が3割に達しているんです。」

和久田
「年を重ねると丸くなるというか、我慢強くなったり寛容になったりするイメージもあるんですが、そうとも限らないんですね。」

中澤
「私たちも実際にカッとなってしまうことはありますが、今日(17日)は、今なぜ高齢者の怒りが爆発するのか、3つのポイントで考えていきます。

まずはこちら、『なぜ、我慢できない?』。
街で聞いてきました。」

もう我慢できない! 怒りの背景には

向かったのはお年寄りが集う街、東京・巣鴨です。
ここにも、最近キレてしまったという方がいました。

「パートで働いているんですけど、きつい言葉でバーッと言われると、『そこまで言わなくても!』ってキレちゃうことがあります。」

「店員が無愛想な時は、すごく頭きますね。
『無愛想なこと言っているんじゃない!』
許せなくなっちゃう、キレちゃうんですよね。」

カッとなり、気づいた時にはすでに爆発…。
そうした声がありました。
年を重ねるにつれて「怒り」のコントロールが難しくなる現象。
実は脳科学者の間では、以前から自然なこととされています。
「怒り」の感情は、脳の「大脳辺縁系」というところで作られます。
その「怒り」を抑制する役目を果たすのが、「前頭葉」です。

ところが前頭葉は、年齢とともに機能が低下することがあります。
怒りを抑える力が弱まり、感情が制御できなくなるというのです。

加藤俊徳医師
「知らない間に『前頭葉』の働きが衰えて、感情の抑制ができなくなっている。
“脳は知らない間に衰えている”、これを自覚することがとても大事。」

高瀬
「感情のコントロールができなくなるのは、脳の変化が関係しているということなんですね。」

中澤
「加藤医師によると、脳機能が低下することで、この他にも耳が遠くなったり、記憶力が衰えたりもします。
その結果、他人の話がうまく理解できず、感情の爆発につながる面もあると指摘しています。
ただこうした脳の機能の低下は、高齢者全員に起きるわけではありません。
続いて、2つ目のポイント。
高齢者の怒りが爆発する原因、違う観点に注目している方もいます。
社会学の専門家は、『生活環境が大きく変わること』も“キレる”ことにつながっていると指摘しています。
どういったケースなのか、ご覧ください。」

つい“カッとなる” 人生の節目に注意

リポート:管野彰彦(ネットワーク報道部)

木村悦治さん、68歳。
9年前に定年退職し、今は子どもも独立して妻と2人暮らしです。
現役時代は、大手メーカーで管理職をしていた木村さん。
職場で声を荒らげることはほとんどなかったといいます。

木村悦治さん
「人間関係というのは、上に行けば行くにしたがって周りの人は自分のことを理解してくれていて、『あいつがこう言ったらこうやって流しておけばいい』と周りで分かっていて、非常に柔らかく、温かく見守っていてくれる。」

妻の美智子さんです。
退職後、木村さんが小さなことで怒る場面を目にするようになりました。

妻 美智子さん
「退職後は一緒に過ごす時間が増えたので、その時に気が短いとは思っていなかった。」

最近も、金融機関の窓口で「書類に不備がある」と一方的に指摘されたことに腹を立て、怒りを爆発させてしまったといいます。

木村悦治さん
「会社を辞めてリタイアして、新しい別の社会にポンと出た。
そこではただのじいさんで、思い切りバカにされたと思ってしまう。
その時に、めちゃくちゃキレる。」

専門家は、退職などでこれまでの人間関係が大きく変わる時に怒りを感じやすくなると指摘します。

立正大学 小宮信夫教授
「(退職後は)年功序列が崩れてきて能力主義ということなので、高齢者が昔、年上の人に接していたやり方を、今の若者たちはやってくれないと思ってしまう。
なぜ自分がやってきたように接してくれないのか。
過去と現在のミスマッチ、糸の引っ張り合いが起きているから、(高齢者は)非常に不安定な状況に置かれているといえるのではないか。」

“気づいた時には…” 暴力や犯罪の危険も

感情を爆発させてしまった結果、暴力や犯罪につながったケースもあります。

関西地方の刑務所に服役する、74歳の受刑者です。
町工場の職人として、40年以上、仕事に打ち込みました。
ところが8年前、高齢を理由に突然リストラを通知されました。

受刑者
「会社から解雇されて、自分自身がイライラしていた。」

その後の仕事探しもうまくいかず、追い詰められていた受刑者。
かつての職場を訪ねた際、怒りがわき上がり、気付いた時には会社の建物に火をつけていたといいます。

受刑者
「どうしてもストレスはたまる。
1人でじっとしていたら、感情的になってストレスがたまって、発散するところもないから犯罪にはしったと思う。」

あふれる“怒り” どう向き合う?

中澤
「小宮教授は、インターネットやスマートフォンなど『急速に進む情報化やIT化』というのも、高齢者のストレスにつながっていると指摘しています。」*

高瀬
「今の社会は高齢者にとって、キレてしまいかねない要因がたくさんあるということなんですね。」

中澤
「置いていかれてしまうのではという不安もあるかと思うんです。
では実際にどうしたらいいのかいうことで聞いてきたのが、『怒りをどうコントロールすればいいか』。

日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介代表理事によると、カッとなった時、『6秒待つ』のが大事だということです。
この6秒という時間は、前頭葉が怒りを抑制するのに必要な時間としていて、この時間を過ぎると、怒りがある程度収まるとされているんです。
老いも若きも、怒りすぎてもいいことはありません。
怒りすぎには皆さんご注意ください。」