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2017年11月8日(水)

災害時 入院患者たちに何が

和久田
「大都市を大地震が襲った時、医療はどうなるのか?
熊本地震から新たな教訓が見えてきました。」

高瀬
「今も増え続ける熊本地震の災害関連死。
熊本県内の市町村が認定したのは、192人に上ります。
一番多かったのが、『避難所や車中泊などのストレスによるもの』で、73人。
次が『医療機関の機能低下』。
病院が被災し、医療を続けることができなくなり、43人が亡くなりました。
こうした被害を防ぐために厚生労働省は東日本大震災以降、医療を継続できるよう、設備面などの対策として、医療機関にBCP=事業継続計画の整備を求めていました。
しかし、地震当時、熊本県では9割以上の病院がこの計画を整備していませんでした。
その現場では、何が起きていたのでしょうか。」

治療が続けられない

リポート:杉本宙矢(熊本局)

災害関連死と認定された宮﨑花梨ちゃん、当時4歳。
重い心臓病を患い、熊本市内で入院していました。

宮﨑花梨ちゃん
「退院したら一緒に遊ぼうね。
おもちゃでいっぱい遊ぼうね。」

花梨ちゃんが入院していた熊本市民病院です。
地震発生後、300人以上いた入院患者全員の避難を余儀なくされました。
その大きな要因となったのが、貯水槽の被害でした。
水が途絶え、医療の継続が難しくなったのです。

設備担当者
「中の水が上下ものすごい振動が起きて、天板を突き破って破損したのでは。
非常に致命的だったと感じている。」

娘を亡くした母の思い

この病院では災害時、井戸水を貯水槽にためて利用することにしていましたが、貯水槽が壊れるケースまでは想定していませんでした。
当時、花梨ちゃんは容態が悪化し集中治療室に入っていて、絶対安静を求められていました。
しかし、医療の継続ができなくなり、100キロ離れた病院に搬送されることになったのです。

熊本市民病院 髙田明院長
「『動かさないとだめですか』という意見の中で搬送いたしましたので、非常につらいものがあった。
最終的に病院避難になったことは、非常に重く受け止めている。」

転院先に到着して5日後、花梨ちゃんは亡くなりました。
転院時の移動の負担を理由に、災害関連死と認定されました。

花梨ちゃんの母親 宮﨑さくらさん
「全身がむくみがひどくて、本当に今まで見たことがないくらいだった。
病院にいるから安全だと思っていた。
そこから転院させる状況になるとは、多分誰も思っていなかった。」

搬送先の病院も被災

熊本地震では、病院が大きな被害を受けた後の計画がなかったことで、入院患者にとって深刻な事態が相次ぎました。
ライフラインが寸断し、46人いた入院患者全員が転院を余儀なくされた病院です。
東熊本病院は、災害があった場合に地域の中核病院に患者を搬送することを想定していました。
しかし、熊本地震では、そこが被災してしまったのです。
震度7の地震直後の写真です。
患者のほとんどが、寝たきりの高齢者でした。
建物が倒壊するおそれがあったため外に出されましたが、行き先が決まらず、明け方まで外で過ごしました。

患者が最初に搬送された病院の写真です。
スタッフや物資が不足していたため、ここでも十分な医療を行うことはできませんでした。

その後、患者たちは医療を求め、転院を繰り返します。
救急車が足りなかったため、自衛隊の狭い車に何人も乗せられ、長時間の移動を強いられました。

患者を処置した看護師
「寝たきり状態で自由に手足も動かせない方たちが、同じ体位で車に揺られて来られたので、無表情で顔が真っ青な状態で、かなりのストレスがかかっていたんじゃないか。」

東熊本病院 永田壮一院長
「病院避難を判断するうえで、マニュアルを作る必要がある。
患者さんに対する責任という面では、あまりうまくいった部分ではないと思う。」

東熊本病院から転院した46人のうち、17人が死亡。
少なくとも5人が災害関連死と認められています。

事業継続計画の整備は

和久田
「社会部・災害担当の清木記者とお伝えします。
なぜ、事業継続計画の整備は進んでいなかったのでしょうか?」

清木まりあ記者(社会部・災害担当)
「病院などに取材すると、東日本大震災以降、まずは病院の建物の耐震化が求められ、被災後の医療継続の計画までは着手できなかったと話していました。
実はこの計画の整備は、熊本地震の当時でも、全国でも1割ほどと進んでいなかったのが実情なんです。
そして地震が発生し、VTRのような課題が浮き彫りになったため、今年(2017年)3月に厚生労働省が災害拠点病院に計画の整備を義務づけたのです。」

高瀬
「具体的にはどういったことが求められるのでしょうか?」

清木記者
「まず望ましいのは、病院が被災しても医療が継続できるようなハード面での対策です。」

被災後の医療継続へ ハード面の強化

栃木県の災害拠点病院に指定されている、「足利赤十字病院」です。
総工費200億円以上をかけて、災害時の設備に力を入れました。
停電した場合、5日間は通常と同じ治療を続けることができる発電機を備えています。

断水時には地下水を使う設備を整え、貯水タンクは揺れに強い技術を取り入れています。

足利赤十字病院 小松本悟院長
「建物とインフラの設備があって初めて医療を継続できるということなので、病院のBCP(事業継続計画)も今後さらに病院機能を継続するためには大切だ。」

清木記者
「このように災害拠点病院にはハード面での対策が義務づけられていますが、規模が小さい病院では資金的に厳しい状況があります。
そこで求められるのが、ソフト面での工夫です。
東京では、首都直下型地震を想定して病院間のネットワークの構築が進められています。」

ネットワークで対策

このネットワークで想定しているのは、断水などの影響を受けやすい透析患者への治療の継続です。
地震のあと、情報収集に使うのは、専用のシステムです。
参加する250ほどの医療機関は被災状況や患者の受け入れが可能かどうかなど送信。
それを受け取った事務局が、情報を元に患者の受け入れ先を調整するのです。

関川病院 秋葉隆院長
「それぞれの透析施設が頑張って協力し合って、患者を守っていくしかない。」

高瀬
「大地震がいつ起きるか分からない以上、早急に対策を進める必要がありますね。」

清木記者
「病院の規模や役割、お金の面からも、それぞれの病院が必要な計画を作るのがポイントになってくると思います。
しかし、まだモデルケースが少ないので、計画を作り終えた病院で研修会を開くなどして、病院間が連携しながら作ることが大事だと思います。」