これまでの放送

2017年11月6日(月)

“タンデム自転車”の意外な活用法とは

高瀬
「けさのクローズアップ。
今日(6日)お伝えするのは、こちら。
2人乗りの“タンデム自転車”です。
2人で息を合わせながらペダルをこいでいきます。
前の席の人がハンドルを操作するため、後ろの席なら視覚などに障害があっても乗ることができます。」

“タンデム自転車” 公道での走行も

和久田
「これまで、原則として公道を走ることが出来なかったのですが、ここ数年、観光客を呼び込もうと、サイクリングコースを整備する各都道府県が、公道での走行を認めるようになっています。」

高瀬
「こうした中、全国各地で普及が進むタンデム自転車は、自転車に乗れなかった障害者の可能性を広げています。」

タンデム自転車で公道を走ることができる愛媛県。
地元のNPOがタンデム自転車を貸し出して、乗ってもらう体験会を月に1、2回開いています。

足が不自由でも 目が見えなくても

参加者する人の多くは、自転車に乗ったことがない障害者です。
目が見えなくても、足が不自由でも楽しむことができます。

「気持ちいいですね。」

「風がすごくいい。」

タンデム自転車 NONちゃん倶楽部 津賀薫代表
「みんなが『自転車に乗れるなんて思ってなかった』『うれしい、うれしい』って言って、自分ができないと思っていたことができた喜びで、一歩踏み出せるっていう、きっかけになったらいい。」

車いすの男の子 タンデムに挑戦

体験会に初めて参加することを決めた少年がいます。
渡部颯人君、特別支援学校中学部の1年生です。
颯人君は脳性まひのため足が不自由で、車いすで生活しています。
家に帰ると、車いすを降りて真っ先に向かうのは、テレビの前のソファ。
学校が終わると、1人家に閉じこもり、ネットを見たり、ゲームをしたりして過ごしています。

母 美由紀さん
「本当はゲーム以外の外で遊んだりとか、元気に外で遊んでほしいんですけど。」

渡部颯人君
「外で遊べたら苦労はありません。
この足ですからね。」

小学生のころは、積極的に行事に参加していた颯人君。
しかし、一生懸命やっても、ほかの友だちについていけないことが多くなり、次第に何でもすぐに諦めるようになってしまったと言います。
そんな息子の姿を見てきた母親の美由紀さん。
颯人君には、失敗を恐れず、挑戦する気持ちを持ってほしいと願っています。

初めての自転車に緊張

そこで今回、タンデム自転車の体験会に申し込むことにしました。
これまで乗ったことがない自転車に挑戦することで、颯人君が少しでも変わればと考えたのです。

母 美由紀さん
「何でもまずできる、できないとか考える前にやってみて、できなかった時に、また考えるみたいな感じで、この子の考え方が変わっていってくれたらと、すごく思います。」



母親に連れられ、体験会にやってきた颯人君。
タンデム自転車への初挑戦を前に、表情がさえません。

渡部颯人君
「本当に乗れるのかがちょっと不安。」



会場となっている競輪場では、楽しそうにタンデム自転車に乗る人たちの姿がありました。

風を切って走る!

いよいよ、颯人君の順番がやってきました。

「怖い?
怖くないね?」

渡部颯人君
「深呼吸すれば。
もう大丈夫です。」

最初は緊張でこわばっていた颯人君。
しかし、しばらく乗っていると変化が…。

渡部颯人君
「風が集まってきているような。」

「もう一周いきます。」

さらに、颯人君は少しでも自分の力で前に進みたいと、懸命に足を動かすようになりました。

渡部颯人君
「僕も足、一応は動かしてますからね。」

風を切って前へと進む、初めての体験です。
颯人くんは、ゴールまで走りきりました。

「怖くなかった?」

渡部颯人君
「ちょっと怖かったです。」

母 美由紀さん
「やる前とやったあとの気持ちの変化あった?」

渡部颯人君
「やったら絶対けがする、怖いって思っていたんですけど、やってみたら全然そんなことなくて、安心しました。
きょうのことで、新しいことに挑戦してみるのもいいかなって思いました。」


母 美由紀さん
「すごい進歩や。」

サッカーにも挑戦!

タンデム自転車に乗れたことをきっかけに、颯人君に変化がありました。
自ら希望して、車いすサッカー部に入部したのです。




さらに、自分の足で歩きたいと階段を上る練習も始めました。
たとえ困難であっても挑戦しようという気持ちが芽生え始めています。

タンデム自転車だからできること

先日行われた体験会。
颯人君は今回、友だちを誘って、一緒に参加しました。
今では怖がる気持ちは消え、自ら進んでタンデム自転車に乗り、楽しめるようになっています。

渡部颯人君
「この風いけるかも。
この風に揺られながら、一気にスピードアップ。」




初めて感じた自転車の風。
障害がある人たちが一歩前へと進む力になっています。

16府県で“タンデム”公道走行可

和久田
「本当に清々しい表情で、颯人くん、よかったですよね。
何かにチャレンジすることの喜びって、その行動や気持ちまで変えるほど、本当に大きな力になるんだなということを改めて感じましたね。」

高瀬
「名前の通り、疾風のごとく風を感じて、いいコメント、いい表情がいっぱい出てきましたし、お母さんの気持ちがとっても伝わってきましたね。
このタンデム自転車で公道を走れる、つまり日常生活で使えるという都道府県は、現在16の府と県に上り、今後さらに増えていきそうです。
こうした、ちょっとした社会のルールの変更が、障害がある人たちの可能性を広げているんですね。」