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2017年11月1日(水)

“やさしい日本語”が見直される理由

森田
「今日(1日)のテーマはこちら、『やさしい日本語』です。
今、国際化が進む日本で注目を集めているんです。」

弘前大学が、災害を想定し、留学生に行った実験です。

“落下物に備えて頭部を保護してください。”

高瀬
「特に反応がありませんね…。」

この言葉を理解した人は、全体の10%ほど。
少し言い方をかえてみると…。

“危ないので帽子をかぶってください。”

和久田
「これは伝わったみたいですね。」

今度は、95%が理解しました。

森田
「このように、難しい単語を使わないなど、外国人のためにわかりやすく工夫をしたものが『やさしい日本語』なんです。
阪神淡路大震災をきっかけに、災害の時にコミュニケーションするために考え出されました。
一方、国立国語研究所が日本に暮らす外国人に行った調査では、“英語がわかる”と答えた人が4割なのに対して、“日本語がわかる”人は6割を超えていたんです。」

和久田
「ちょっと意外ですね。
外国人だから英語、というわけではなくて、日本語をうまく使った方がいいということですか?」

森田
「そうなんです、今、防災以外の分野で、『やさしい日本語』を使う動きが広まっているんです。」

「以上」と「異常」聞きわけるの難しい

製造業が盛んな滋賀県長浜市です。
工場で働く人など、3,000人を越える外国人が暮らしています。

ブラジル人
「言葉、ちょっと難しい。」

ブラジル人
「『以上』『異常』とか、ひらがなは一緒だけど、発音で意味が変わるから難しい。」

これまではブラジル人など南米系の人が中心でしたが、最近は中国人やベトナム人が増えてきました。

市役所が作った、外国人向けパンフレットです。
4カ国語に対応しています。
窓口には通訳も雇っていますが、多国籍化に追いつかないといいます。

市の職員
「全ての言語に対応するのは、財政面でも人材面でも不可能。」

そこで注目したのが「やさしい日本語」。
先月(10月)、市の国際交流協会が勉強会を開きました。
仕事で外国人と関わる人やボランティアで日本語を教える人などが参加しました。

まず、難しい言葉をやさしく言いかえる練習から始まりました。

「育休中」あなたならどう説明?

「『育休中です』って難しいですよね。
どう頑張って説明するか、ちょっと話し合ってください。」

「『子育てに専念しています』。」

「『休職中です』。」

「『休職中』…無理かな、やさしくないかな。」

「『子どもを育てるために仕事を休んでいます』。」

「(説明が)長くなりますね。」

和久田
「皆さん、苦戦していますね。」

森田
「なかなか難しいでしょう?
『やさしい日本語』には正解はないんですが、外国人に通じやすい表現はこちら。」

“赤ちゃんがいます。
今、仕事を休んでいます。”

ポイントは、漢字の熟語はできるだけ避けること。
さらに、短い文章に分け、意味をわかりやすくすることです。
実際に「やさしい日本語」を使う場も用意しました。

「似合う」はどう伝える?

参加者
「紅葉という言葉がわかりますか?
紅葉は難しい?」

簡単な言葉に言いかえます。

参加者
「山の葉っぱの色。
色が変わりますね、赤くなったり、黄色くなったり。
皆さんはあの色を見てどう思いますか?」

「きれい。」

こちらは…。

参加者
「似合ってますね。」

「…?」

和久田
「『似合う』という言葉が難しいでしょうか?」

参加者
「かわいいです!」

「ありがとうございます。」

このように、それぞれの人に通じる単語を探すことも大切なポイントです。

参加者
「単語・熟語をどこまで理解されているか、お互いのレベル合わせが難しい。」

参加者
「外国人も日本語でしゃべろうと頑張ってくれるし、こっちも日本語でいいと思うと気持ち的には楽です。」

やさしい日本語で外国人をおもてなし

「やさしい日本語」をセールスポイントにする観光地も出ています。
福岡県柳川市です。

「カメラ、写真、いちばんきれい。」

2015年に柳川市を訪れた外国人旅行者は、およそ15万人。
そのうち8万人が台湾からの観光客でした。

観光客
「おいしい。」

「日本語勉強したことがある」6割も!

インターネットの調査では、台湾の人の6割以上が「日本語を勉強したことがある」と答えました。

そして、多くの人が「日本語で話してみたい」と回答しています。
日本語ならば町をあげておもてなしできると、去年(2016年)から本格的に取り組み始めました。

柳川市観光協会 副会長 高橋努武さん
「日本語を話すことは、観光事業者以外に、一般の方々、幅広い方々が対応できる。
おもてなしできるっていうのが大きなメリットだと思います。」

まずは観光業者が「やさしい日本語」を使うことにしました。
変えたのは、日本人に使うこんなフレーズ。

店員
「お召し上がりください、どうぞ。」

店員
「ご試食いかがですか?」

敬語や「いかがですか?」といったあいまいな表現は、伝わりにくいんです。

店員
「まったく敬語を使わなくていいというので、おもてなしになるのか、とても不安があった。」

「いらっしゃいませ。」

単語とわかりやすいストレートな言い方で接客を始めました。

店員
「あまい、からい、おいしい。
食べてみてくださーい。」

実際にモノを見せながら話すこともポイントです。

店員
「お土産の袋は、小さいのと大きいの。」

観光客
「大きいのでいい。」

観光客の反応は…。

観光客
「楽しいです。
(日本語が)通じるからおもしろい。」

観光客
「日本語が好きだから勉強した。
(日本語を使えて)うれしいです。」

「やさしい日本語」に「やさしい気持ち」を

森田
「私たちが身につけた日本語が、観光資源になるということなんですよね。
『やさしい日本語』を話すためのポイントを、簡単に2つ。

『熟語や敬語はさける』。
それから『一文は短く』とありますが、私たち、何かとだらだら文章を続けて話してしまいますが、『~です、ます、でした』と短く文章を切るということも伝わりやすさのポイントなんです。」

和久田
「話し方も関係があるんですね。」

森田
「この『やさしい日本語』ですが、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、消防庁も取り入れることを検討しています。」

高瀬
「もう1つ、『やさしい気持ち』も大切だと思いましたね。」