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2017年10月27日(金)

井山裕太七冠 大胆さを取り戻した秘密に迫る

井山裕太(いやま・ゆうた)さん、28歳。
常識にとらわれない大胆な一手で相手を圧倒。
今、囲碁界で最も強い棋士です。
先週、7大タイトルの1つ「名人」を獲得し、自身2度目となる七冠に返り咲きました。

囲碁棋士 井山裕太さん
「自分らしく戦えたと思います。」

会見後…。

「今いちばん何がしたいですか?」

井山裕太さん
「何したいですかね…。
ビールが飲みたいです。」

ということで、今回、私たちは居酒屋で井山さんにインタビュー!

メニューを眺めるその姿…。
タイトル戦さながらです!

井山裕太さん
「シマアジ!」

「かつおのタタキ!」

「生2つ!」

大阪出身の井山さん。
関西弁で本音が次々!!

井山裕太さん
「やっぱり対局中って孤独やんか。
対局終わったら寝れんくなることも多くて。
やることといったら飲むか。」

若き天才棋士、その強さの秘密に迫ります!

「以前七冠をとった時よりも今の方が自分は強い」

高瀬
「井山さんと同学年で、かつて同じ囲碁のプロ養成機関に通っていたという吉岡ディレクターです。」

和久田
「今回、吉岡さんがインタビューをしてきたそうですが、井山さん、ビール片手にこれまであまり見たことがない姿でしたね。」

吉岡芙由紀ディレクター(おはよう日本)
「本当に忙しいスケジュールの中でしたが、今回時間をいただきました。
その話は後ほどゆっくり聞いていただくとして、まずは七冠がどれだけ大変かということをご説明します。
実は井山さん、1年半ほど前にも七冠を達成しています。
ただその後、半年後に『名人』を一度落として、六冠に後退しているんです。
ただ、そこから自分が元々持っていた6つのタイトル全てを防衛して、その後さらに名人戦の挑戦者を決めるリーグ戦を勝ち抜き、今回の七番勝負にも勝って、やっと七冠へと返り咲いたんです。」

和久田
「手強いライバルたちを相手に勝ち続けないといけないんですね。」

吉岡ディレクター
「そうなんです。
井山さんが今回、七冠を達成したあとの会見で『以前七冠をとった時よりも、今の方が自分は強くなっている』とおっしゃっていました。
今回じっくりとお話を聞くと、その理由が見えてきました。」

「絶対に負けられない」というプレッシャー

リポート:吉岡芙由紀ディレクター(おはよう日本)

偉業達成から1週間。
戦いを終えた井山さんに、まずは今回の対局について聞いてみました。

吉岡ディレクター
「今回の七番勝負は勝てると思っていた?」

井山裕太さん
「打つときは自信持ってやってたけど、でもやっぱり1局目負けたやんか。
やっぱり結構そういうので、不安になるねんな。
なかなかミスもしてくれへんし、強い相手は。」

率直な思いを語ってくれた井山さん。
ここに至るまでには、相手だけでなく自分自身との戦いがありました。
1年半前、初めて七冠を達成したあと、「絶対に負けられない」というプレッシャーが重くのしかかってきたといいます。

井山裕太さん
「防衛戦を続けていく中で勝たなければいけない、タイトルを守らなければいけない。
挑戦者は負けてもタイトルが減るわけでもないし。
でも目に見えて減っていくやん、タイトル持ってたら。
自分もほかの世界とか見てて、タイトル持ってた人が少しずつ減っていったら、ちょっとピーク過ぎたんかなと思って見てしまう部分はどうしてもあるから。」

その後、名人戦で敗退し六冠に後退。
負けてはいけないという気持ちから、持ち味である大胆な手を繰り出せず、守りに入ってしまったといいます。

井山裕太さん
「やはりどこかでリズムというか、歯車が狂っていた部分があったかな。
負けるべくして負けたっていう、そういう感じもあった。」

若手の一手から自分の発想を広げる

「タイトルを守ることにとらわれてはいけない」。
この敗戦をきっかけに、立ち返ったのは自らの原点でした。

そのために、井山さんが足を運んだ場所があります。
若手棋士たちによる勉強会です。
忙しいタイトル戦の合間にも、積極的に参加していました。

大橋成哉プロ
「みんな井山さんに教わる気持ちでやっているが、そういう感じは出さない。
実際そうだとしても、みんなの意見を聞いて『その手もありますね』みたいな感じで。
僕たちがしょうもない手を打ったとしても、それを真剣に考えてくれる。」

トップ棋士の対局にはない若手棋士の大胆な一手から、自分の発想を広げようと考えていたのです。

井山裕太さん
「若い世代は非常に考え方も柔軟で、特に10代の前半の棋士だと、まだまだ自分の碁や考えが完成していない。
だからこそ、いろんな発想が出てくる。
純粋にそういう考え方もあるのかと刺激をもらうことも多い。」

セオリーを完全に無視した一手を徹底的に研究

さらに、攻めの一手を生み出すため井山さんが目をつけたのが、人工知能です。
井山さんをはじめ世界のトップ棋士たちを次々と撃破しています。
その人間のセオリーを完全に無視した一手を、徹底的に研究することにしたのです。

井山裕太さん
「“悪い”と決めつけられていた考えられないような手だったので。
どうしても人間強くなってくればなるほど、こうでなければという固定観念が出てくるが、だめだと思われている手でも、やってみると可能性がある手だったりすることがある。」

「自分が納得する一手を」

“攻めの一手”を追い求めることで、持ち前の大胆さを取り戻した井山さん。
タイトルを守ろうという意識は消え、今はまったく違う境地にたどりついたといいます。

井山裕太さん
「自分が納得のいく碁を打ちたいというのがいちばんかな。」

吉岡ディレクター
「どうやったら納得いく?」

井山裕太さん
「難しいけど。
納得いかへんと思うわ、ずっと。
納得いくっていうのは、極端にいうと完璧なものが残せたっていう時やから、たぶん無理やろねとは思う。
できるだけ、そこにちょっとでも近づきたい。」

井山さん!厳しい戦いが続くけど、七冠守ってや!

井山裕太さん
「めちゃめちゃツライ。」

井山さんでも不安やプレッシャーを感じている

和久田
「関西弁をしゃべるとこういう感じなんですね。
井山さんでも不安に思ったり、もがきながら取り組んでいるんだなという、本音が見えましたね。」

高瀬
「不安になって守りに入って、負けられない気持ちは大きくなるんだけど、それを解決するには攻めるんだという気持ち。
頭ではみんな分かるんですけど、この世界のこの頂上でそれをやるということって、囲碁を学んだ吉岡さんから見ても、それは並々ならないことなんじゃないですか?」

吉岡ディレクター
「できないですね。
全然何も知らないときは自由に打てていたんですが、やはりだんだん学んでいくにつれて、『こういう手はダメだ』とか『こういう手を打っていては強くなれない』ということを教えられたりするので、自分でも『こういうところは打っちゃダメ』なんだなと、どんどん守りに入っていくと思うんです。」

和久田
「今回こういう形でじっくりとお話してみて、学生時代の印象と比べてどうでしたか?」
高瀬
「結構ざっくばらんに聞いてましたよね。」

吉岡ディレクター
「学生時代は、私から見たら実力もかけ離れていましたし、雲の上の人という感じだったんですが、今回は気さくに話してくださったので、ちょっと聞いてしまおうと思って聞きました。
今回、井山さんでも不安やプレッシャーを感じているんだなというのは意外な発見でした。」

和久田
「七冠に返り咲いた井山さんですが、もう次の戦いが始まっているんですよね。」

吉岡ディレクター
「はい、もうすでに『王座戦』と『天元戦』の防衛線が始まっています。
さらに、これからは国内の戦いだけでなく、世界での戦いも待っています。
11月には、日本・中国・韓国が参加する国際大会に参加することが決まっているんです。
これまで日本は中国や韓国に勝てていないのですが、ここで井山さんが日本代表としてどんな戦いを見せてくれるのか期待されます。」

高瀬
「井山さんの、さらなる活躍を楽しみにしたいと思います。」

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