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2017年10月22日(日)

旬体感 粘り強く守る幻の“悪戸いも”

千葉
「今回の旬体感は、こちら!
大きな鍋で煮て楽しむ、山形のソウルフードです。」



二宮
「山形のソウルフード?」

千葉
「芋煮です!」

千葉
「今回訪ねたのは、山形市です。
実は私、山形放送局が初任地だったんですけれども、秋になると山形では、家族ですとか、職場の仲間みんな集まって『芋煮会』を楽しみます。
その芋煮の主役が里芋なんですね。
今回は、地元の人でもめったに口にすることがないという『幻の里芋』に出会いました。」

山形 粘り強く守る 幻の“悪戸いも”

朝9時。
山形のスーパーで、この時期にしか見られない光景があります。
店の前にずらりと並べられたのは、レンタル用の大きな鍋。



「1セット分、追加になります。」





開店と同時に、次々と貸し出されていきます。
皆さんが、鍋を持って向かった先は…。

千葉
「ああ、いいにおい。
ことしもやってますね。
見てください、河原に大勢の人。
いろんなところで煙が上がってますね。」

山形名物の「芋煮」です。
収穫したての里芋や牛肉などを、しょうゆと砂糖、酒で煮込んで楽しみます。
山形では、秋になると、河原で「芋煮会」をするのが定番なんです。

「外なので、開放感があって、結構のびのびと。
無礼講でやってます。」





「シーズンで、家も含めれば5、6回は食べてるんじゃないですかね。」

私も芋煮をいただいちゃいました。

千葉
「ホクホク、おいしいですね。
しっかり中まで味がしみこんでます。」


こちらは、高校の合唱部の仲間たち。





「3年生なので来て食べてもらってます。」





夏に引退した3年生を芋煮でねぎらうのが、毎年恒例の行事なんだそうです。
調理は1年生が担当します。

締めにはカレー粉を入れて、カレーうどんにするのが人気。
地域や家庭でそれぞれ自慢の味付けがあるのも、山形の芋煮の特徴です。




千葉
「きょうの1年生のお味は?」

3年生
「おいしかったです。」

千葉
「誰から作り方を教わったの?」

1年生
「祖母が作っていて、『こうかな』みたいな。
祖母の教えです。」

山形では、江戸時代から河原で行われていたという芋煮会。
水運が盛んだった最上川で、船乗りたちが休憩中、河原で里芋を煮て食べたのが始まりだと言われています。
いい匂いに誘われて地元の農家なども集まるようになり、今のように大勢で鍋を囲むようになったんだそうです。
実は、山形には、なかなか市場に出回らず、地元の人もほとんど食べたことがない「幻の里芋」があるんです。

向かったのは、山形市郊外にある、村木沢・悪戸地区。
「幻の里芋」は、この地区でしか生産されていないといいます。




千葉
「こんにちは、どこにいますか?」

『悪戸いも』生産農家 向田孝一さん
「はーい。」

向田孝一さん。
この地区で400年以上作られている「悪戸いも」の生産農家です。




千葉
「背が高い。」

『悪戸いも』生産農家 向田孝一さん
「ことしは本当に大きくなりました。」

悪戸いもの特徴は、大きな葉と長い茎。
一般的な里芋と比べると、高さは2倍近くあります。
葉が大きいことで、光合成で作るデンプンも多くなり、味の濃い芋が育つといいます。

千葉
「塊なんだ。
ついてる、ついてる。」

『悪戸いも』生産農家 向田孝一さん
「いっぱいついてる。」


これが幻の里芋、「悪戸いも」です。
見た目や大きさは普通の里芋とあまり変わりませんが、1つ、特別に切っていただくと…。

千葉
「真っ白。
ちょっとびっくりする。
ネバネバしてます。」


デンプンが多いため、普通の里芋より強い粘りけがあります。
悪戸いもには、もう1つ、おいしさの秘密があります。

水分を大量に含むため、みずみずしいんです。
このみずみずしさを生むのが、土壌です。
川に面した悪戸地区。
昔はたびたび水害に見舞われ、「悪い場所」という意味で「悪戸」という名前が付いたと言われています。
しかし、大量の水分を含んだ土壌は、悪戸いもの栽培には最適でした。
こうした環境が、独特の味や食感を生み出しているんです。

『悪戸いも』生産農家 向田孝一さん
「食感も味もこっちのほうがずっといい。
煮崩れはしないけど、非常にやわらかい。」

そうなると気になるのは、そのお味。
収穫したばかりの悪戸いもをゆでていただきました。

千葉
「つるんとむける。
ゆでても粘りけがありますね、糸引いてます。」



ゆでた悪戸いもは、向田さんオススメの「ゴマ塩」でいただきます。

千葉
「ねっとり。
口当たりがとってもいいので、お餅みたい。
おいしい。」

食感はなめらかなのですが、弾力があって、芋の甘みがふわっと口の中に広がりました。
水分を多く含んだ土壌は、おいしさを生む一方で、土が重くなり、農作業は重労働です。
水気が多く、柔らかい悪戸いもは傷みやすいため、収穫作業の多くで、機械を使うことができません。
表面の毛を取る作業も普通の里芋は機械で行いますが、ひとつひとつ手作業で取り除きます。
こうした手間もあって、今では生産農家は7軒だけになっています。

千葉
「がんばれる原動力は?」

『悪戸いも』生産農家 向田孝一さん
「この芋そのものがおいしいから、昔からある在来のものを途切らせないで、次の世代に継いでいかなきゃいけない。
自然が与えてくれた、すばらしい宝物。」

来年(2018年)植えるための種芋の管理にも、細心の注意を払います。
悪戸いもは寒さに弱いため、1年を通して温度が一定に保たれる手掘りの穴蔵に保存します。
地道な努力で、悪戸いもは守られてきました。


収穫が一段落した先週。
今年(2017年)の出来を確かめるため、悪戸いもを生産する農家が集まって、芋煮会が開かれました。

悪戸いもの生産農家
「もちもち。」





千葉
「(出来は)どうでした?」

悪戸いもの生産農家
「ことしは大きめ。
雨降りが多かったせいか、豊作。」

千葉
「おいしい。
とろっとしてますね。」

『悪戸いも』生産農家 向田孝一さん
「昔から伝わってきた芋なんで、次の世代、また次世代とつないで、このおいしい芋を食べていただきたい。」





♪:“手塩にかけた〜 悪戸いも〜”

悪戸いものように粘り強く、伝統を守り続ける人たちに出会った旅でした。

小郷
「いいですね。
芋煮で身も心も温まりそうですね。
ねっとりとした、お餅のようなとおっしゃっていましたけど、そんなに普通の里芋とは違いますか?」

千葉
「全然違いますね。
粘り気がとても強いので。」

小郷
「地元の人でもなかなか食べられないということでしたけど、買うことってできるんですか?」

千葉
「なかなか生産量が少ないので、スーパーなどでもあまり見かけないんですけれども、一部のJAの直売所などでは買うことができます。
また、生産農家の中にはネット販売しているところもあります。」

二宮
「お母さんたちも歌っていましたが、『手塩にかけて』育てているんですね。」

千葉
「一時は生産農家が減って、絶えてしまう危機もあったんですけれども、最近は『悪戸いもを作りたい』という若い農家さんも増えてきて、生産量は徐々に増えているということでした。」

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