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2017年10月3日(火) NEW

最期は必ず誰かが見送ってくれる

高瀬
「誰にもみとられることなく、1人亡くなり、しばらくたってから発見される『孤立死』。
65歳以上の高齢者で『孤立死』する人の数は『年間およそ3万人』にも及ぶと推計されています。」

和久田
「『孤立死』する人の多くは、すでに家族との関係が断たれているため、その後、葬式すらあげてもらうことなく、行政によって火葬されることになります。」

高瀬
「こうした中、孤独に生きてきた人たちの最期を見送ろうという取り組みが始まっています。」

身寄りなくても 葬式に50人参列

リポート:岡田孝弘(おはよう日本)

日雇い労働者の街、大阪・西成区。
さまざまな理由で家族との関係が途絶えた人たちが数多く暮らしています。

区内にある公民館です。
近所から次々とお年寄りたちがやってきます。
行われていたのは、70歳で亡くなった男性のお葬式です。
男性は、20年前からひとり暮らしで身寄りはありません。


しかし、葬式には50人が参列していました。
そのほとんどは、親族でも親しい友人でもありません。
参列したのは、「釜ヶ崎見送りの会」のメンバー。
いずれも亡くなった男性と同じように家族との関係が断たれた人たちです。


会の代表で、僧侶の杉本好弘(すぎもと・よしひろ)さんです。
葬式では、孤独に生きてきた故人に必ずメッセージを送ります。

釜ヶ崎見送りの会 代表 杉本好弘さん
「あなたはひとりぼっちになることはありません。
仲間たちに囲まれた旅立ちになるのです。」

葬式の最後は、亡くなった男性のもとに集まり、身寄りがない人同士で温かく送り出します。

釜ヶ崎見送りの会 代表 杉本好弘さん
「ひとりきりでは、旅立たせない。
現実にたったひとりで旅立つ人はものすごくいる。
それは寂しい。」

葬式を「委任」 メンバーの交流も

杉本さんが「見送りの会」を立ち上げたのは5年前。
きっかけは、身寄りのない高齢者たちの声でした。
その多くが、誰にも見送られない最期に不安を感じていたのです。

釜ヶ崎見送りの会 代表 杉本好弘さん
「とにかく誰かに自分が死んだときに見送って欲しい。
自分が死んだということを確認して欲しい。
できたら自分が生きた人生についても思い出して欲しい。
お葬式をあげるための行動を呼びかけた。」

「見送りの会」の仕組みです。

入会すると、会に葬式を任せる「委任状」を提出します。
それを受けて、会では、本人が亡くなった時、行政や病院など、関係機関に必ず会に連絡するよう要請します。
もし、亡くなった場合、連絡が届き、会がメンバーに参列を呼びかけて葬式を行います。
その費用は、本人の貯蓄や生活保護費からまかなわれます。

「見送りの会」では、月1回、例会を開いています。
葬式に参列する時、心を込めて見送りができるように、生前にメンバー同士で交流を深めるためです。



「そのうちポコッと逝くかもしれませんので、その時は、葬式よろしくおねがいします。」

釜ヶ崎見送りの会 代表 杉本好弘さん
「お互いに体には気をつけて、年末の忘年会まではお元気で。」

「せめて来年の花見までは生きたい。」

釜ヶ崎見送りの会 代表 杉本好弘さん
「(お互いを)知っているというだけでも違う。
みんな、ひと事ではなくなります。
気持ちに血を通わせて、お悔やみをしたい。」

自分の最期を見送ってもらえるからこそ…

「見送りの会」に入ったことで、生き方が変わったという人がいます。

吉本正樹(よしもと・まさき)さん、66歳です。
現在、吉本さんは、西成区にある4畳半1間のアパートでひとり暮らしをしています。
4年前まで、大阪市内の宿泊施設で働いていましたが、リストラされました。
その後、体を壊して働けなくなり、現在、生活保護を受けています。
離婚した妻と子どもがいるものの、20年以上関係が途絶えている吉本さん。
自分はひとり寂しく死んで行くしかないと絶望していたといいます。

吉本正樹さん(仮名)
「人生終わってもいいと、ドンドン思い詰めていました。
死んだ後は、だれにも見送られないで、すぐに火葬されて、それで当然だと思っていました。」

そんな吉本さんの気持ちが変わったのは、去年(2016年)6月。
「見送りの会」に入り、葬式に参列したことがきっかけでした。
自分が亡くなった時も、みんなにあたたかく送り出してもらえると知り、気持ちが明るくなったといいます。

吉本正樹さん(仮名)
「死んだ後、ちゃんとお葬式をあげてもらって。
みなさんが丁寧に焼香してくれる姿を見て、すごく安心しました。」

以前は、自宅にひきこもりがちだった吉本さん。
今は、積極的に外に出かけるようになりました。
地域の草刈りを行うボランティアにも参加するようになっています。



「これがお金だったらいいのに。」

吉本正樹さん(仮名)
「そんなん言うたらいかん。」

自分の最期を見送ってくれる人たちができたことで、その時まで恥ずかしくない生き方をしたいと思うようになったといいます。

吉本正樹さん(仮名)
「(自分の人生が)少しでも役に立てたらと、いまはすごく思っています。
見送りの会に出会ったからこそ、生まれてきた気持ちだと思います。」

家族との関係がたたれた人たち同士が見送る葬式。
孤独な最期への不安を和らげ、残りの人生にも変化をもたらしています。

和久田
「最期を必ず誰かが見送ってくれるという安心感があることで、じゃあ、それまでどう生きようか、どんな人生にしようかと考えるきっかけにもつながっているんですね。」

高瀬
「もちろん孤独にさせない、孤立死させないための取り組みというのも大事だと思うんですけれども、こういう、いわば最後のセーフティーネットというんですかね、そこがあることで、その前の段階が好転していくという力があるのかなというふうに感じました。」