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2017年10月2日(月)

なぜ「残骨灰」の争奪戦が起きるのか

人生の終わりに行われる火葬。
遺族がお骨を拾いあげたあとには、多くの骨や灰が残されます。
「残骨灰」と言われ、自治体の責任で処理されています。
今、この残骨灰をめぐって、激しい争奪戦が起きています。


和久田
「どういうことなんでしょうか。
廣田アナウンサーです。」

廣田
「この『残骨灰』という言葉は聞いたことはありましたか?」

高瀬
「印象に残る言葉ですけれども、『残骨灰』知りませんでしたね。」

廣田
「『残骨灰』というのは、火葬場でお骨を拾った後に残る、骨や灰のことなんです。
関東のある自治体では、一体につき2キログラム近い骨や灰が残されると言います。
この残骨灰は、多くの自治体では処理業者に委託して、『骨』や『金属など』に分別するんです。
そうした上で、供養したり処理したりしています。
ところが今、その作業をわずか『1円』で引き受けるという業者が増えています。
そこには、残骨灰の中に眠る『高価な金属』の存在があります。」

残骨灰の貴金属取り出しが目的

80年以上残骨灰の処理を手がける、老舗の会社です。
全国の自治体から委託を受け、残骨灰の処理を行っています。
引き取られた骨や灰は機械に入れ粉砕し、お骨とそれ以外とに分別します。

阪神マテリアル 中道史和社長
「最終的に、ご遺骨のみになったものです。」

こうして取り出されたお骨は、自治体から手厚く葬るよう求められています。
この会社では、専用の供養施設を用意して、お骨をおさめています。

一方、お骨を分別した後には、棺おけに使われていた釘や、体内にあった金属などが大量に残ります。
これを薬品で処理すると、ある貴重な金属が出てくる場合があります。
金や銀などです。
多い時には数百万から数千万円に及ぶこともあり、精錬会社などに売却しています。

阪神マテリアル 中道史和社長
「だいたい歯科用、歯に使われる金属です。
金歯や銀歯は原型を残さない。
ですから、この中に混じってしまう。」

実はここ数年、金の相場は高騰。

2000年には、1グラム1,000円ほどだった価格は、その後上昇を続け、今では4,000円を超えるまでになっています。
こうした金相場の高騰を背景に、全国の自治体で1円での入札が相次ぐなど、激しい競争になっているのです。

阪神マテリアル 中道史和社長
「貴金属を取り出すことを目的にした業者が増えているということですね。
それで競争が激しくなった結果、1円入札がなされると思います。」

残骨灰の取り扱い 定められたルールなし

高瀬
「お骨から出た金や銀が売買されているということに、まず驚きますよね。
これは、遺族に返したりということはできないんでしょうか?」

廣田
「実は、高温で焼かれると、金銀というのはほとんど溶けてしまって、見分けがつかなくなってしまうんです。
それから残骨灰というのは、ひとまとめにして処理するので、ここからここまでが『お宅のものですよ』というふうにして返却することも難しいんです。」

和久田
「ただ、自治体は金銀が売却されていることについて、どう考えているんですか?」

廣田
「残骨灰の中に含まれている金・銀については、国などが決めた取り扱いのルールは定められていないんです。
そのため、自治体それぞれが、独自に取り扱いを定めているというのが現状なんです。
2つの自治体を取材しました。」

「条件付きで売却 収益を市民に還元」

市内4つの斎場で年間3万件の火葬が行われる、横浜市です。





横浜市 環境施設課 酒井啓彦課長
「今回で言えば、(残骨灰を)売却します。」





今年(2017年)、残骨灰を処理業者に売却する方針に転じました。
横浜市ではこれまで、業者にお金を支払って残骨灰の処理を委託してきました。
金や銀などの“混入は想定していない”との立場で、実際に業者がどう扱っているのか、把握していませんでした。
しかし今年からは、残骨灰に金・銀が含まれていることを前提に、お骨を適切に処理することを条件に「売却」=つまり灰を売ることにしました。
得られた収益は、市民に還元することにしたのです。

横浜市 環境施設課 酒井啓彦課長
「残骨灰をすべて追いかけるわけにはいかない、現実的に無理なので。
逆に売って、有価金属を抽出する行為を認め、それを前提にした契約をすることで、透明性を確保できるだろう。」

今年、売却額の入札を行った所、5か月分の散骨灰におよそ3,700万円もの値がつきました。
横浜市では、この売却益を火葬施設の改善などに使うとしています。
しかし、こうした対応に市民からは、「遺族に説明しているのか」「倫理上の問題があるのでは」などの声が寄せられています。

「金銀を取り出さず 骨と一緒に永久保存」

一方、残骨灰に含まれる金銀を利用しないとする自治体もあります。
京都市です。
長年、残骨灰を外部には出さず、行政自らが処理してきました。

これは、京都市が作った残骨灰の保管施設です。
金などが含まれる状態で納められているため、場所は一切明かせないといます。

京都市 中央斎場担当 野田太司課長
「人の目につきにくい所に設けておりまして、施錠のほうをしております。」

京都市では、今後も金銀の取り出しは行わず、骨と一緒に永久保存する方針です。

京都市 中央斎場担当 野田太司課長
「正直申しますと、業者からの問い合わせは何件かきております。
単なる有価物という形ではとらえていない。
遺族の意思が残っているものと考えているので、その部分をおそろかに扱うことは許されるわけはない。」

残骨灰 法律改正も含めて検討を

高瀬
「自治体によっても、残骨灰の金銀に対する考え方が違うんですね。」

廣田
「今ご紹介したように、例えば東京都では、残骨灰の分別だけを委託して、取り出された貴金属については返還してもらって、自治体が売却して、財政に組み込んでいるというケースもあるんです。
葬儀や火葬などに詳しい専門家は、残骨灰のあり方にもっと関心を向けていくことが必要だとしています。」

聖徳大学 長江曜子教授
「多死社会で、多くの方々の火葬をしなければいけない。
それだけの残骨灰が出ていて、どう処理したらいいかに関しても検討し、国民の理解をえられるように、法律改正も含めて検討をしてく時代になってくる。」


高瀬
「これは亡くなった方の尊厳、そしてその遺族の気持ち、そういったところに寄り添う、大事にするということが何よりも大事かなというふうに気がしますけれどもね。」

廣田
「私も2年前に父を亡くして、お葬式をしたんですけれども、その時に残骨灰がどうなっているかということは全く知らないし、考えもしないですよね。
これからは遺族に対しても、どんなふうに処理されているのかということを伝えていくことも、大切になるのかなというふうに感じました。」