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2017年9月30日(土)

よみがえるゴッホ“幻の作品”

小郷
「こちらには、ゴッホの作品が並んでいます。」

二宮
「私も好きな画家の1人ですが、展覧会に行ったりしますが、独特の画風がいいですよね。」

小郷
「私も美術にそんなに詳しくないんですけれども、ゴッホはやっぱり親しみがありますよね。
今、ゴッホ展が札幌で開かれているんですが、そこでは、ゴッホの『幻の作品』を現代の画家の手で復元しようという試みが行われました。

その『幻の作品』のスケッチが、こちらです。
友人に宛てた手紙に書かれていたものなんです。」

二宮
「川のほとりを歩く男女と橋が書かれていますね。
ゴッホがこの作品を最後まで仕上げていたら、一体どんな絵になっていたのかということを復元しようということなんですね。」

小郷
「今回、その復元作業に2か月密着しました。
復元の鍵となったのは、あの『浮世絵』の色彩でした。」

ゴッホ“幻の作品” よみがえるか!?

リポート:山下美咲(NHK大阪)

幻の作品の復元に挑んだのは、画家の古賀陽子(こが・ようこ)さんです。
ゴッホをテーマに、全編を油絵で描いたアニメーション映画に、日本人として唯一参加したことがきっかけで復元に取り組むことになりました。

*画家 古賀陽子さん
「初めは『私なんかでいいんですか』という気持ちだったんですけど、『絶対にやりたい』という気持ちになった。」

復元する上で、古賀さんにアドバイスをするのは、世界的なゴッホ研究者、大阪大学の圀府寺司(こうでら・つかさ)教授です。
今回、復元しようとしている作品は、ゴッホが完成させていたか定かではありません。
しかし、作品の一部だけは、何と日本に現存していました。

川のほとりを歩く男女の部分です。
古賀さんは、この残されている画を手がかりに復元作業に取りかかることにしました。

画家 古賀陽子さん
「やっぱり実物は全然違いますね、練習したけど。」

大阪大学 圀府寺司教授
「ぴっと筆遣いが、一筆書きみたいな。」

*画家 古賀陽子さん
「何回も練習します。」

大阪大学 圀府寺司教授
「ファン・ゴッホの一番脂がのっている時期の作品の全体像をひとつ明らかにする。
とても大きな意味があると。」



いよいよ制作開始。
現存している画から、ゴッホの表現方法を読み取っていきます。
ゴッホは、さまざまな筆使いのタッチを幾重にも重ねて表現するのが特徴です。
波打つ川は、繊細なタッチで穏やかな動きを表していました。

画家 古賀陽子さん
「ゴッホは何も知らなかった時は、ただただ思いつきで、勢いだけで書いていると思った。
ひとつひとつのタッチに魂がこもっていたり、リズムがあって、かつ単調ではない。
それはやっぱり、すごいところですね。」

古賀さんと圀府寺教授が、もう1つ手がかりにしたのは、スケッチに書かれていたメモです。

ゴッホが色のイメージを書き残していました。
中でも、圀府寺教授が注目したのが、黄色の空の色です。
自然の色から離れ、極めて鮮やかな色彩を取り入れようとしていたのです。

大阪大学 圀府寺司教授
「真っ黄色の空を描こうとしていたというのは、とても革新的なんですね。
もし作品が残っていたら、とてもすぐれた作品だったと思う。」

この時期、ゴッホは新たな色彩の実験を繰り返していました。
その背景にあったのは、ゴッホの日本への憧れでした。
ゴッホは、この手紙にこんな言葉を記しています。
『この土地の瑞々しい雰囲気と色彩の豊かさは、日本と同じように美しく見える』。

実はゴッホは、日本から渡ってきた浮世絵の模写を通して、西洋にはなかった構図や色使いを学んでいました。
はっきりとした輪郭線と、意外性のある色を使って描く景色。
心に刻まれた新しい風景は、ゴッホの新たな境地でした。
今回の絵も、浮世絵の影響を強く受けていたと考えられます。
目指すのは、ゴッホが憧れた浮世絵の表現です。
大胆な色使いで、コントラスト豊かな風景を浮かび上がらせます。

大阪大学 圀府寺司教授
「もうちょっと明るくてもいいけどな。
ファン・ゴッホの描く空っていうのは、ぼわんとちょっと暗めで、このへんは、ぼわんと明るめっていうのが圧倒的に多いんですよ。
今のままだと(ゴッホ)らしくないな。」


古賀さんは、色彩の検討を重ねます。

参考にしたのは、後に描かれたとされる絵でした。
色味だけではなく、力強いタッチで空の明るさを際立たせていました。

画家 古賀陽子さん
「もっとゴッホらしいタッチであったり、ディテールであったり、ニュアンスであったりっていうのは、まだまだ、ひと息ふた息っていうことです。」

試行錯誤すること、およそ4か月。

ついに、幻の作品がよみがえりました。
思い切って筆を走らせ、躍動感を出しました。

*大阪大学 圀府寺司教授
「だいぶ力強くなりましたね。
かなりラディカル(革新的)なものが、ちゃんと見えるようになると、だいぶ(ゴッホの)印象が変わりますよね。」

今月(9月)20日、ゴッホの作品と並んで、古賀さんが復元した絵が展示されました。




来場者
「インパクトがすごくて、印象にすごい残る絵だなと思います。」





来場者
「色の使い方がちょっと想像できなかった。
空の黄色なんていうのは、なかなかすごいなと。」

浮世絵の手法を取り入れたゴッホの転換点を象徴する作品です。

画家 古賀陽子さん
「ゴッホはこれを表現したかったのかと。
この時期は(ゴッホの)生涯で一番希望にあふれていた、一番明るい時期だったので、そういう時代にゴッホはどういう絵を描いていたか、そういうところを見て欲しいです。」

ゴッホとの共同制作 時空を超えた“名画”

小郷
「こちらが、今回復元したゴッホの作品です。」

二宮
「見事に再現されていますが、やはり色ですよね、空の黄色。」

小郷
「印象的ですよね。
希望を感じるような色合いですよね。
この作品が展示されている『ゴッホ展』は、10月24日から東京、そして来年(2018年)1月20日から京都でも開かれます。」

二宮
「色味とか、筆遣いがどういうふうに復元しているのか、実際に見てみたいですね。」

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