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2017年9月16日(土)

なぜ悲劇は繰り返されるのか 〜検証・面会交流殺人〜

小郷
「けさのクローズアップは、離婚をめぐる親と子についてです。
『面会交流』。
離婚などで別々に暮らす親子が会うことをいいます。

父親
「久しぶり、元気だった?」

子ども
「パパへのプレゼント。」

父親
「ありがとう。」

この親子は、月に1回の面会交流の場で、楽しい時間を過ごしています。
夫婦が別れても親子の関係を継続させることで、ともに子どもの成長を見守っていきたいという親が増えています。

二宮
「そんな中、今年(2017年)4月、面会交流中に父親が4歳の娘を殺害し、自らも命を絶つという事件が起きました。
なぜこのような悲劇が起きてしまったのでしょうか。

離婚後も「子どもに会いたい…」 トラブル相次ぐ“面会交流”

リポート:堀内新記者(神戸局)

亡くなった松本侑莉ちゃんです。
事件が起きたのは月1回、離れて暮らす父親と会う「面会交流」の日で、侑莉ちゃんは楽しみにしていたといいます。

侑莉ちゃんの母親
「お気に入りのお洋服着てウキウキしながら、『夕方迎えに来るから、ちゃんとお利口さんにしてね』って、朝10時に送って行きました。」

面会交流が終わる時間になっても父親からは連絡がなく、母親の通報を受けた警察が、2人が死亡しているのを見つけました。
事件のあと母親は、父親が離婚後にうつ状態になり精神科に通院していたことや、会社を休職していたことを警察から知らされました。
離婚後、1人で暮らしていた父親の精神状態については、誰も知り得ませんでした。

侑莉ちゃんの母親
「娘が変わり果てた姿、いろんなことを考えるじゃなくて、『ごめんね』しか出てこなかった。」

事件には至らないまでも、面会交流をめぐるトラブルは絶えません。

兵庫県在住の山田とも子さんです。
離婚後、幼稚園に通う息子と暮らしています。
父親が息子に会いたいと家庭裁判所に訴えたことから、月に一度、面会交流を行うようになりました。
しかし、息子は面会交流の前になると急に泣き出すなど、精神的に不安定な状態が続いています。

山田とも子さん
「(父親が)私の悪口を言ったり嫌なことを言ったり、負担になってるみたい、息子にとっては。
面会交流を行っている以上、その時間を目いっぱい子どもと楽しんでもらえたらありがたいんですけど。」

長年、面会交流の研究を続ける専門家は、離婚した当事者だけで面会交流をすることの難しさを指摘しています。

早稲田大学 法学学術院 棚村政行教授
「(離婚は)プライベートなことだから(親どうし)でやらせる、そういう風潮が日本は特に強い。
お子さんを含めた当事者の支援を充実させていくのは非常に重要なことだと思う。」

“面会交流” 当事者だけの危うさ

小郷
「面会交流にはいろいろなトラブルがあるようですが、こんなにも危ういことが多くあるんですね。」

二宮
「取材をした神戸放送局の堀内記者です。
面会交流は危うさも秘めているということで、専門家の方も支援が必要だとおっしゃっていましたが、現状では当事者だけに任されているということなんですね。」

堀内新記者(神戸局)
「そうなんです。
面会交流をするかしないかは、両親の話し合いで決めることができます。
しかし、合意できなかった場合は裁判所に申し立てることもあります。
そして、裁判所で面会交流すると決まったら、それを拒むことはできないんです。

というのも6年前、民法が改正され、『面会交流』は必要だと規定されたからです。」

小郷
「法律で定められているということなんですね。」

堀内記者
「そうなんです。
ところが、面会交流をどう進めるかについて支援体制は整っておらず、両親の話し合いに任せるという考えなんです。」

小郷
「そうしますと、なかなか第三者が支援に入るというのは難しくなってきますよね。」

堀内記者
「そこで重要なのが、離婚前の支援なんです。
欧米などでは、面会交流を円滑に進められるよう、離婚の前、夫婦が離婚を考えている段階から公的機関など第三者が関わり、支援するのが主流なんです。

こうした世界の流れを受け、面会交流のトラブルを未然に防ごうと、離婚前の支援に力を入れている国があります。」

“面会交流” トラブル防ぐ支援とは

10年前、夫婦の離婚に国が積極的に介入する制度を始めた韓国です。
離婚の前には、すべての夫婦は家庭裁判所での面談を義務づけられています。

「ここが面談室です、3部屋あります。
当事者に未成年の人がいる場合といない場合に(分けて)面談を行っています。」

面談では、親の心理状態や面会交流の内容、子どもの養育方針などを確認します。
面談の結果、精神的に問題があると判断すれば、治療やカウンセリングにつなげます。
さらに、面会交流のトラブルの事例についても学び、未然に防ぐ取り組みにも力を入れています。

“子どもの前で相手親の悪口を言ってはダメ。”

この取り組みを始めた、家庭裁判所の専門調査官の宋賢鍾(ソン・ヒョンジョン)さんです。

家庭法院 ソン・ヒョンジョン専門調査官
「この仕組みが、面会交流によるトラブルを減らせたというのは事実だと思います。
国が離婚問題に介入することで、子どもをきちんと守ることになり、それはすなわち国の未来のためになります。」

リポート:馬場勇人記者(高松局)

離婚前の支援の仕組みがない日本では、民間団体に頼らざるを得ないのが実情です。

この親子の面会交流を支援しているのは、高松市にあるNPOです。
月1回、親子は、子どもが好きな公園で3時間めいっぱい遊びます。
NPOの支援員は35人。
香川県内の家庭裁判所の元調査官や臨床心理士などの専門家です。
4年前から活動を始めました。
今は、市から委託を受けています。

親同士の関係がこじれ、調整が難しい場合、支援員が間に入って連絡をとり、交流時の子どもの受け渡しを行います。
場合によっては、支援員が面会交流を見守ることもあります。
こうした支援によって、親の心理的な負担が軽減され、子どもも楽しい時間が送れるようになったといいます。

面会交流した父親
「(母親と)面と向かうと何かとけんかになったり、今後の摩擦になったり、直接会わなくていいし、気持ちよく純粋に子どものことだけを考えられる。」

NPO面会交流支援センター香川 増田卓美代表
「今の社会的なニーズがある限り支援を続けて、子どもの福祉を優先した親子関係につなげていけたらいい。」

“面会交流” 悲劇を繰り返さないために

二宮
「韓国のケースを見ると、やはり早い段階で何かしらの支援をするというのが必要だと感じましたね。
家庭裁判所が、夫婦が離婚を考えている段階から関与していくという取り組み、国民はどう受け止めているんでしょうか?」

堀内記者
「取材したソウルの家庭裁判所によりますと、面会交流で子どもの命が奪われるような事件は起きていないということで、国民の多くは支持しているということです。」

小郷
「これに対して、日本ではNPOが支援に関わっているんですね。
高松のNPOを取材した高松放送局の馬場記者です。
日本では国は関わっていないということですが、支援の仕組みは十分と言えるのでしょうか?」

馬場勇人記者(高松局)
「十分とは言えません。
NPOのような民間の団体では、継続して運営していくための資金面や人材の獲得などで限界があります。
現在、こうした支援の団体は全国に50以上ありますが、利用料が有料であったり、その存在自体を知らない人も多く、なかなか利用は広がっていません。」

小郷
「とはいえ、日本ではこうした団体に頼らざるを得ない現状があるということですよね?」

馬場記者
「そうなんです。
ただ、最近になって、ようやく自治体も動きはじめています。

兵庫県明石市では、去年(2016年)の10月から全国に先駆けて支援に乗り出しています。
しかし、こうした動きはまだごく一部です。
日本では、まだ離婚や面会交流は当事者の問題と捉えられがちです。
しかし、面会交流は子どもの将来にとっても非常に大事な取り組みですので、社会全体でしっかりと支援のあり方を考えていくことが大切だと感じました。」

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