これまでの放送

2017年8月31日(木)

夏休みを大幅短縮する理由

高瀬
「8月も今日で終わりですよね。
夏休み最終日というお子さんも多いのではないでしょうか。」


 

和久田
「夏休みって、子どものころ、どうやって過ごしていました?」

高瀬
「前半は特に遊びまくって、終盤、宿題に追われる。」

和久田
「そうですよね。
みなさん、思い思いに過ごしていると思うんですが、小学校などの夏休みといえば、だいたい7月下旬から8月いっぱいの、およそ40日間でした。
ところが、この夏休みを来年(2018年)から16日程にしようという自治体が出てきました。」

高瀬
「“そんなぁ”という子どもの声が聞こえてきそうですけれどもね。」

和久田
「いったい、どんな狙いがあるのでしょうか。」

夏休み 大幅短縮 町のねらいは

リポート:和田麻子(NHK静岡)

来年から、大幅な夏休みの短縮を予定している静岡県吉田町です。
子どもたちは…。



 

「遊ぶ時間が少なくなって、残念。
悲しくなる。」

「短くなるなら、宿題を減らしてくれるならいい。」


 

なぜ吉田町は、夏休みを短くするのか。
その背景にあるのは、国の「ゆとり教育」の見直しです。
この見直しで、必要な授業の時間は、小学校の6年間で合わせておよそ300時間増えました。
今後は、さらに140時間増える予定です。
この時間を週末に割り振るのか、あるいは平日に積み増すのかなど、やり方は自治体や学校に任されています。

吉田町はまず、平日に積み増すシミュレーションを行いました。
すると、6時間目までの授業が週3回となり、子どもの集中力などに支障をきたすと懸念されました。
そこで、従来の夏休みに授業を割り振る方法を考えたのです。

教育委員会の担当者
「夏休みが、平日10日間だとすると、土日も合わせると16日間。
その削った分を授業日にあてるということを、現在考えております。」


 

吉田町の夏休みの短縮には、もう1つ狙いがあります。
教員の労働時間の削減です。

吉田町の場合、小学校の教員の定時は朝の8時から夕方4時半。
6時間目まで授業をした場合、夕方4時頃まで授業を行うことになります。
そのあと、テストの採点や翌日の授業の準備などを行うと、どうしても残業することになってしまいます。
その合計は、平均して月およそ58時間にのぼります。 

教諭
「授業の準備も、もっと(時間を)かけて、子どもたちの力になるような授業をしたいが、まだまだ(時間が)足りていないのが実感。」


 

吉田町は、1日あたりの授業を減らし、夏休みに振り分けることで残業時間を月40時間以内に削減できると試算しています。

吉田町 田村典彦町長
「先生の多忙感を下げてやらないと、授業に対しての時間配分が、ますます難しくなる。
それでは、子どもの授業内容の質が下がる。
この町に生まれた子どもたちが、競争社会の中で、ほかの町の子どもよりも、すぐれた形で世の中に出てもらいたい。」

夏休み短縮 なぜいま?

和久田
「取材にあたった、静岡放送局の和田記者とお伝えします。
夏休みを短くする狙いはよく分かったんですが、そもそも夏休みの期間はどうやって決まるものなんですか?」

和田麻子記者(NHK静岡)
「国は、小中学校に必要な授業の時間などを定めています。
自治体の教育委員会や学校が、これらを元に授業の日数やカリキュラムを作成して、残りの時間を休みにあてていて、自治体によって、夏休みの期間はまちまちなんです。」

高瀬
「ただ、ゆとり教育の見直しで必要な授業自体が増えているということですけれども、これは吉田町以外の、他の自治体はどうしているんでしょうか?」

和田記者
「土曜日を使って授業を行うところもあるんですけれども、今後は小学5、6年生で英語が正式な教科になるなど、さらに授業の時間は増える予定です。
吉田町の場合は、この授業の時間と、教員の長時間労働の両方の問題を解決するために、大幅に夏休みを減らす計画なんですけれども、ほかの自治体でも授業の時間を確保しようと、1週間程度夏休みを短かくするところは、全国でも増えているんです。
一方で、子どもたち、そして家庭の中には複雑な思いを持つ人もいます。
どのように受け止めているのか、取材しました。」

夏休み 大幅短縮 子ども 親は?

吉田町の小学校に通う、鈴木綸(すずき・りん)ちゃんです。

「夏休み減ると、どう?」

鈴木綸ちゃん
「イヤ!」
 

「どうして?」

鈴木綸ちゃん
「学校に行くから。」

 

綸ちゃんの両親は、共働き。
同じ会社で働いています。
母親の加奈子さんは、特にお盆の時期が忙しいといいます。

鈴木加奈子さん
「(仕事を)始めて以来、お盆を休んだことは、まだ一度もない。」



 

夏休み中も、わずかな時間しか、綸ちゃんと遊ぶことができない鈴木さん一家。
夏休みの短縮に、当初は賛成していました。

鈴木加奈子さん
「給食が出て、預かってくれるなら。
学校のほうが、のびのび楽しくできるのかなと思う。」

しかし今、少し考えが変わりました。
例年、鈴木さんたちは忙しいお盆の時期を避けて、夏休みの前半などに家族旅行を行ってきました。

仮に、綸ちゃんの夏休みが16日程になると、お盆の時期と重なり、旅行に行く機会がなくなると感じているのです。

鈴木加奈子さん
「休みを合わせるのが難しいので、もう旅行は無理かなと思っている。」

夏休みの短縮は、地域活動にも影響を与えています。

静岡県内の強豪サッカークラブチームです。
4つの市と町から、子どもたちが集まっています。
これまで夏休みは、7月下旬に強化試合、8月上旬に合宿を組み、お盆は休みにしていました。

 

「吉田中学校の人、学校始まるよね。」




 

吉田町が休みを16日程にした場合、従来のスケジュールでは多くの選手が強化イベントに参加できなくなってしまうのです。

吉田町の中学校に通い、プロを目指す中田万葉(なかだ・かずは)くん。
夏休みの短縮は大きな痛手です。

中田万葉くん
「頭をよくしてくれるのはいいけど、夏休みを使うのは、ちょっと嫌だなと思う。」

吉田町の選手が抜けてしまうと、チームの活動自体にも影響が出るのではないかと、監督は感じています。

監督
「そこまで短くなってしまうのかというのが正直な印象。
夏休みの期間に(サッカーを)1か月できるのは、子どもの成長にとっては、すごく大事だと思う。」

 

夏休み短縮 今後どうなる

高瀬
「VTRでは、夏休みの短縮に否定的、あるいは戸惑うという声も出てきましたが、実際はどうなんですか?」

和田記者
「共働きの家庭の中には、学校だと子どもを安心して預けられると、賛成する声も多くあるんです。
ただ、家庭の価値観によって、いろいろな考え方があって、賛成か反対かは、意見がまとまらないのが現状なんです。
国の中央教育審議会で議論してきた専門家は、子どもにとっての夏休みの意味を考え直す時期が来ていると話しています。」

中央教育審議会 委員 無藤隆さん
「野山を子どもたちが駆けめぐって、昆虫採集をしたりして、わんぱくに過ごす時期だよ、といわれても、都会の子どもに、そんなのはないですよね。
もしかしたら、40日間ゲーム三昧かもしれない。
そうだとすれば、それよりは学校へ行ったほうがいい。
夏休みの過ごし方を今後どうするかは、学校だけではなく、家庭、さらには子どもも含めて考えないといけない。」

和田記者
「吉田町では今回の夏休みの短縮をきっかけに、住民同士のほかにも、住民と教育委員会との意見交換の場も生まれています。
吉田町のケースは、社会的に大きな問題となっている、教員の長時間労働も背景にありますが、社会が大きく変化する中で、夏休みのあり方はこれまであまり議論されてきませんでした。
これを機会に、子どもにとっての夏休みの意義を本質的な意味で議論する時期にきていると思いました。」

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