これまでの放送

2017年8月30日(水)

伝統の花火に「新たな風」

高瀬
「8月もあと2日。
今年(2017年)も各地で夏の夜空を彩る花火大会が行われました。」

直径およそ300メートル。
夜空に咲く大輪の花。
赤、青、緑。
暗闇を彩る日本の伝統の花火です。
先週土曜日、秋田県で開かれた「大曲の花火」。
全国の花火師の技が詰まった、1万8,000発が夜空を照らしました。

和久田
「日本有数の規模を誇る『大曲の花火』。
今年は前日までの大雨で会場が水につかり、一時は開催が危ぶまれましたが、地元の皆さんの努力で何とか打ち上げることができました。」

高瀬
「そうした中、この伝統の花火に新たな風を吹き込もうとする花火師の姿がありました。」

世界の花火を体感

リポート:岡肇記者(秋田局)

地元・秋田で130年以上続く老舗花火会社の5代目、小松忠信(こまつ・ただのぶ)さんです。
花火を打ち上げる筒など、機材の多くが水につかる中で、翌日の本番に向け復旧に追われていました。

花火師 小松忠信さん
「やれる環境を整えなければならない。
何とかなる。」

今年の大会はぜひ多くの人に見てもらいたい。
小松さんには、ある理由がありました。
そのきっかけとなったのが、今年4月に行われた花火師たちが交流するシンポジウムです。

参加したのは、アメリカやヨーロッパ、アジアなど、世界37の国と地域から400人余り。
花火の安全技術や経済効果などの研究成果が発表されました。
これに合わせて、日本と世界の花火が披露されました。
この中に、とりわけ日本の花火師が注目した海外の花火がありました。
欧米ではポピュラーな、音楽に合わせた演出です。
それがこちら。

ピアノの旋律に合わせ、まるで鍵盤を叩いているかのような花火。
音の1つ1つに合わせて、花火を打ち上げます。
スペインの会社が手がけました。

花火師 小松忠信さん
「われわれと違う芸術性の、リズミカルなものを演出していた。
世界の花火をここで体感できたのは、いい経験になったと思う。」

日本とスペインの花火が融合

岡肇記者(秋田局)
「日本の花火師に刺激を与えた花火は、あちらの工場で作られました。」

スペインの花火師、リカルド・カバジェールさん。
130年以上続く老舗花火会社の4代目です。
ピアノの旋律に合わせた花火は、リカルドさんが作りました。
制作は、すべてコンピューターで行います。

画面の赤色の波形が音楽の強弱を表し、青いマークが花火を打ち上げるタイミングです。
どのタイミングで打ち上げると音楽と調和するか。
ぼう大な時間をかけて、綿密に練り上げていきます。
こうした技術を使って、リカルドさんは世界各地の花火大会で数々の賞を受賞してきました。
そのリカルドさんが今、最も力を入れて制作しているのが、日本のような鮮やかに色が変化する花火です。
4月の日本で行われたシンポジウムで目の当たりにしたものです。

スペインの花火師 リカルド・カバジェールさん
「黄色から青に変わる花火を作っている。
まず青を入れて、そのあときらきら光る黄色の火薬を入れる。」

リカルドさんは、火薬の調合をグラム単位で変えるなど、およそ100種類の組み合わせを試しました。

リカルド・カバジェールさん
「(日本で見た花火は)われわれ花火師にとっては言葉で表せないほど感動するものだった。
日本から帰国したあと、挑戦したい気持ちになった。」

スペインのリゾート地、サン・セバスティアンです。
リカルドさんが花火を打ち上げる日がやってきました。

岡記者
「日本の影響を受けたというスペインの花火。
その花火を見ようと、会場は世界中から集まった観光客であふれかえっています。」

まずは、リカルドさんが得意とする音楽に合わせた花火です。

そして、いよいよ日本の技を取り入れた花火の打ち上げです。
色の変化はまだまだ日本には及びませんが、リカルドさんの花火がスペインの夜空を彩りました。

リカルド・カバジェールさん
「今回、日本とスペインの花火が融合できていたのであればうれしい。
これからも改良を重ね、日々努力を積み重ねていきたい。」

花火の進化へ切磋琢磨

そして、日本。
大雨を乗り越えて開催にこぎつけた「大曲の花火」が当日を迎えていました。

スペインの花火に刺激を受け、今年の花火大会の準備を進めていた小松さんです。

花火師 小松忠信さん
「リカルドが今年の春やってくれたものは、こういう新しい分野もあるんだと(感じた)。
ああいった分野も取り入れていかないといけない。」

この日のために、小松さんたちは花火に合う曲を選び、どのタイミングで打ち上げれば効果的なのか計算してきました。

夕方5時。
およそ74万人の観客が会場に詰めかけました。
日本の技が詰まった花火が、次々と打ち上がります。
そして、いよいよ小松さんたちの打ち上げの番です。
スペインの技を取り入れたパートがやってきました。

リカルドさんと同じように激しい音楽にあわせて、3秒ほどで99発もの花火を連続させました。
およそ1万キロ離れた2つの場所で打ち上げられた日本とスペインの花火。
自らの花火を進化させようと切磋琢磨する花火師たちの思いが込められていました。

花火師 小松忠信さん
「何かを生み出そうという気持ちがないと、『伝統』で何かを伝えることはできない。
これからもっともっとそういった演出、さまざまなものを見ながら、取り入れながら、世界の花火シーンのレベルアップをやっていきたい。」

 

高瀬
「圧巻でしたね!
花火というのは本当に日本が世界に誇る芸術なんだなと思いましたが、スペインの風をすぐに取り入れて、また新しいものを生み出す、その懐の深さもすばらしいなと思いましたね。」

和久田
「初めての挑戦でも、完成度が高かったですね。
秋田の花火師の小松さんは、今後は花火の打ち上げを音符1つ1つに合わせるように技術を高めていきたいということです。
一方、スペインの花火師のリカルドさんも、今後は日本の花火のように、より複雑な色の変化にも挑戦していきたいと話していて、お互いに高めあっていくことで、ますます魅力的な花火が生まれていきそうですね。」

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