これまでの放送

2017年8月25日(金)

都心の“青空将棋” ひと夏のふれあい

高瀬
「全国各地の夏の表情を切り取る『夏点描』。
今週、シリーズでお伝えしています。」

和久田
「5回目の今日(25日)は、東京都心の、ある場所が舞台です。
将棋を通したひと夏のふれあいを見つめました。」

サラリーマンの町の“青空将棋”

リポート:野口真郷(映像取材部)

大都市・東京。
高層ビルの谷間で行われているのは…。

新橋名物、青空将棋。
駒の大きさは通常の5倍、盤面は畳の半分以上あります。
開催されるのは、毎週土曜、昼12時から。
集まってくるのは、腕に自信ありと見受けられるおじさんたち。
8月、気温が低い日が多い中、ここだけは熱い闘いが繰り広げられていました。

「あららららら…逆転か!」

会の主催者、真部和昌(まなべ・かずまさ)さん。
目の前のビルで、飲食店を経営しています。
サラリーマンの町、新橋。
人がへる土曜日に、なんとかお客を呼び込みたいと、45年前に青空将棋を始めたのです。
しかし、いつしか暇を持て余したおやじたちのオアシスになりました。

青空将棋の主催者 真部和昌さん
「地方からでてきた方とか、単身赴任の方とか、ひとり暮らしの方なんかも結構増えてきました。
地域のコミュニケーションを広くしようというふうに、だんだん変わってきた。
ここまできた以上は、やめるわけにいかない。」

この夏 ちびっこ棋士が増加

この青空将棋、今年(2017年)の夏は、ちょっと違います。

おじさんたちにまじって、子どもたちの姿が。
大きな盤面に、めいっぱい手を伸ばして駒をすすめます。
今、ちびっこ棋士の、憧れの的。

連勝記録を30年ぶりに更新した藤井聡太(ふじい・そうた)四段。
この活躍で、青空将棋にやってくる子どもたちが増えています。
ある一角で、見物客が集まる対局を見つけました。

8歳と69歳、年の差61。
青空将棋、注目の対局です。
小学校3年生の菊地飛呂(きくち・ひろ)くん。
藤井四段のような棋士になりたいと、1年前からここで腕を磨いています。
対戦相手の髙橋勇(たかはし・いさむ)さん。
将棋歴60年以上の大ベテランです。
会えば必ず対局する2人。
ハンデをつけても、菊地君が勝つことはほどんどありません。

髙橋勇さん
「いつものさえがなかった。」

この日も、熱戦むなしく負けてしまいました。
髙橋さんは、丁寧に解説を始めます。
髙橋さんが指摘したのは、斜めに動ける角の使い方。
菊地君は角の通り道に自分の駒を置いていたため、動くことができなかったのです。

髙橋勇さん
「角を使おう。
角を使うと、またよくなるよ。」

髙橋さんは、角を生かした戦いかたを宿題として与えました。

青空将棋は 自分の生活の励み

鉄道会社を10年前に退職した髙橋さん。
2人の子どもは成人し、奥さんと2人暮らしです。
人との交流がめっきり減ってしまった中で、青空将棋は数少ない外出の機会になっています。

髙橋勇さん
「藤井聡太さん、すごいですね。」

若い世代が夢に挑戦する姿に活力をもらえるという髙橋さん。
青空将棋で出会った菊地くんを教えることが生きがいになっているといいます。

髙橋勇さん
「自分の生活の励みになる。
新橋にいって将棋を指す、いつも指しているメンバーではなくて、新しい人が若い小学生。
それが楽しみの1つ。」

夏休みの宿題「角をどう使うのか」

将棋歴4年の菊地くん。
お盆はお母さんの実家に帰ります。
ただ、髙橋さんから出された宿題、「角をどう使うのか」。
その答えを見つけるため、おじいさんからもらった将棋の専門書を、田舎に持って行くカバンに詰め込みました。

「重さはどう?」

小学3年生 菊地飛呂くん
「これだけだったら、あんまり重くない。」

菊地飛呂くん
「夏休みは将棋が結構できる。
髙橋さんとかは特に丁寧に教えてくれる。」

都心の夏 ひと夏のふれあい

2週間後。
菊地くんは、お盆で帰省していた兵庫県から直接、お父さんと一緒に青空将棋にやってきました。

早速、髙橋さんとの対局です。
髙橋さんは、菊地君に出した宿題、角をうまく使えるのかが気になります。
序盤、菊地君はこの間指摘された角の通り道を早速あけ、攻撃をしかけます。

その後、髙橋さんの攻めをしのぎます。
そして、終盤。
角で王を追い詰めました。

髙橋勇さん
「負けました。
強くなったね。」

「飛車」「角」の2枚落ちというハンデがあったものの、この日、菊地君は髙橋さんに勝ちました。

髙橋勇さん
「角の転換というんだけど、これがうまくできた。
練習してきたんだろ、角の使い方を。」

菊地飛呂くん
「うれしい。
角で(攻める)手があったなと思いだして、いったらいいんじゃないかと。」

髙橋勇さん
「来週は来たらやろうね。
ぜひ頑張って、またよろしく。」

また一歩成長を見せる菊地君の姿に、髙橋さんは満足そうでした。

菊地飛呂くん
「元気なうちは続けていきたい。
そうすれば菊地くんも強くなるし、自分の好きな将棋をさして、いろんな人と交流できるのは至れり尽くせりの楽しいところ。」

子どもからお年寄りまで集う新橋名物・青空将棋。
都心の夏にうまれた、ささやかな心の通い合いです。

 

和久田
「お見事でした!勝ててよかったですね。
菊地くんも静かに喜びをかみしめてましたけど、髙橋さんもちゃんと宿題を克服してきた姿をうれしそうに見てらっしゃいましたね。」

高瀬
「私も先週、実家に帰省した時に、おい・めいと将棋をしたんです。
やっぱり将棋って歳関係なく盤上でコミュニケーションできるんだなとあらためて思いました。
子どもたちにとって夏って大事なんだなと思いますね。」

和久田
「この『青空将棋』、新橋駅の目の前で行われていて、4月から11月の毎週土曜に開催されています。
  腕に自信ありの方は、参加されてみてはいかがでしょうか。
誰でも無料で参加できます。」

 

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