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2017年8月24日(木)

子どもたちがプレハブに集まる理由

高瀬
「全国各地の夏の表情を見つめた『夏点描』です。」

和久田
「4回目の今日(24日)は、兵庫県尼崎市にある、こちらのプレハブ小屋が舞台です。
ここに、次々と子どもたちが集まってくるんです。
自然と笑顔が広がる、ちょっと不思議な空間で過ごす子どもたちの夏です。」

子どものびのび プレハブ文庫

リポート:菅原紀子(神戸局)

住宅街の一角。
子どもたちが集まるプレハブは、この民家の片隅にあります。

ここ、小さな小さな図書館なんです。
6畳半の部屋に、童話や絵本、図鑑など、およそ6,000冊。
「プレハブ文庫」と呼ばれて親しまれています。
小学生を中心に、毎日およそ10人の子どもたちが思い思いに過ごします。
本を読みふける子。
夏休みの宿題をする子。
クーラーがない小屋は30度以上になりますが、子どもたちは気にしません。

子ども
「本も読めるし、勉強もできる。」

「夏休み、どれくらい来る?」

子ども
「あと100回!」

「おっちゃん」と呼ばれる、この男性。
「プレハブ文庫」のあるじ、辰巳秀盛(たつみ・ひでもり)さん、75歳です。
地域に子どもたちの居場所がないと感じていたおっちゃん。
いつでも遊びに来られる場所を作ろうと、仕事を退職した後、8年前に「文庫」を開きました。

辰巳秀盛さん
「毛も白くなっとるし、シワも寄っとるんですけど、元気、パワー、力を感じる。
その源は何かと言ったら、ちびっ子。
私は逆にちびっ子に元気をもらって。」

お姉ちゃんの役割 少し忘れる場

夏休み、いつも一緒にくる姉妹がいます。
しっかり者の姉・偲衣佳(さいか)ちゃんと、おてんばな妹・友奈(ゆうな)ちゃんです。

母親が病気で療養しているため、姉の偲衣佳ちゃんが朝から夜まで妹の世話をしています。
この日、おっちゃんが用意したビニールプールで、みんなが遊ぶのを見ていた妹が…。

友奈ちゃん
「暑い!プール入りたい。」

偲衣佳ちゃん
「あかんて!」

でも、お姉ちゃんが許しません。

偲衣佳ちゃん
「動きすぎやから。
動いたらもっと足が腫れてしまう。」

妹が足首を痛めていたのを、気遣っていたのです。
姉の偲衣佳ちゃん。
本当は自分もプールに入りたいけれど、一緒に我慢していました。
その様子を見ていた、おっちゃん。
姉の偲衣佳ちゃんに、「好きな本を読んであげるよ」と声をかけました。
偲衣佳ちゃん、ずっと読んでほしかった本を、迷わず持って来ます。

おっちゃんを独り占めした短い時間、「お姉ちゃん」の役割を少し忘れることができました。

辰巳秀盛さん
「妹の面倒みなあかんと気をはってますから、多少はここ来たらおっちゃんおるし、ちょっとは開放されるとこがあるかも分からん。」

「もうひとつの家みたいな感じ」

おっちゃんに、反抗的な態度をとる女の子がいました。
小学6年生のなゆたちゃん。
実は、もうすぐ、別の町に引っ越すことになっています。

なゆたちゃん
「まだ荷物とかあるし。」

辰巳秀盛さん
「まだ箱は入れてないの?」

なゆたちゃん
「入れてないって言ってるやん、耳遠すぎる。」

辰巳秀盛さん
「おっちゃんは非常に寂しいんやけどな。
しゃあないな、いつまでも“寂しい寂しい”言うてもあかんな。」

辰巳秀盛さん
「こんなかわいいときあったんやで。」

両親が共働きで、家で1人過ごすことが多かった、なゆたちゃん。
小学1年生のころからずっと「プレハブ文庫」に通い続けてきました。
寂しいとき、いつでも笑顔で迎えてくれたのが、おっちゃんだったのです。

なゆたちゃん
「ひとりっ子やから相手誰もしてくれへんし、ママも仕事忙しいし、パパも仕事忙しいから、おっちゃんが相手してくれる。
もうひとつの家みたいな感じかな。」

引っ越しが近づいた今、どうしても素直になれません。

引っ越し当日。
なゆたちゃんを見送ろうと、「プレハブ文庫」の仲間が集まっていました。
ところが、出発の時間が近づいても、おっちゃんの姿がありません。

なゆたちゃん
「業者来たから、来て!」

おっちゃんに電話をかけました。

なゆたちゃん
「来んねやろ?
時間ないって、はよ来てな!」

10分後。
おっちゃん、ギリギリで間に合いました。

辰巳秀盛さん
「最後のお別れ。」

なゆたちゃん、やっぱり素直になれません。

辰巳秀盛さん
「握手しよ。」

なゆたちゃん
「やっぱりいい、嫌や。
嫌っていうか…。」

母親
「恥ずかしいんやろ。」

辰巳秀盛さん
「最後まで抵抗してましたね。」

プレハブで過ごす おっちゃんとの夏

朝から夕方まで、途切れることなくやってくる子どもたち。

辰巳秀盛さん
「ひとり寂しそうにしている子もおります。
あえて“どうしたの?”と言わんでも、ふだんどおりゲームしたり本読んだりしてると、にこやかに。
それでええんやと思ってます。
そんなのの積み重ねですわ。
いざというときに頼れるおっちゃんになったらええなと思うだけ。」

6畳半の「プレハブ文庫」で過ごす夏。
みんなの「おっちゃん」が、子どもたちの成長を見守ります。

高瀬
「甘えるのも反抗するのも、全部受け止めてくれる『おっちゃん』なんですね。」

和久田
「うまく言えなかったさみしい気持ちも感謝の気持ちも、きっとおっちゃんは分かってくれてますよね。
『おっちゃん』こと辰巳さんは、本が増えすぎたので、庭にもう1つプレハブを建ててあげようと計画しているそうです。」

 

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