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2017年8月20日(日)

“現役世代” なぜ孤立死?

二宮
「『孤立死』。
一人暮らしの人が、会社や家族、近所など、社会的なつながりから孤立し、誰にも知られずに亡くなることで、『孤独死』とも言われます。
阪神・淡路大震災の後、高齢者の間で相次いだことから、これまで主に高齢者の問題と考えられてきました。
しかし、その『孤立死』が20代から50代の、いわゆる『現役世代』にも少なくないことが分かってきました。」

林田
「こちらをご覧ください。
昨年度、東京23区内で孤立死したと見られる人の数です。
最も多いのは70代ですけれども、50代より下の世代も2割以上いることが分かります。」

二宮
「会社や家族など、さまざまな人との接点が多いと思われがちな『現役世代』が、なぜ孤立死するのか。
その実態を取材しました。」

“現役世代”が なぜ孤立死?

リポート:宮川俊武(おはよう日本)

東京、新宿区にあるアパート。
やってきたのは、遺品整理会社の社員です。
遺族からの依頼で、亡くなった人の遺品を仕分け、引き渡しや処分を行います。
先月(7月)、この部屋で1人の男性の遺体が見つかりました。
死後およそ20日が経過していました。
 

遺品整理会社 社員
「30代後半の方。」



 

男性は39歳。
遺族によると、病死とみられています。

遺品整理会社 社員
「結構おしゃれ、時計とかサングラス。
食べるものがなかったんでしょうね。」

一人暮らしだった男性は、去年(2016年)仕事を辞め、その日の暮らしにも困っていたといいます。
 

アパートの大家
「ニュースで孤独死とかあるので、40歳以下を対象に入居させていた。
若い人が孤独死するとは思ってもみなかった。」


 

男性の部屋を片づけた遺品整理会社です。
年間およそ1,700件の依頼があります。



 

遺品整理会社 吉田太一社長
「この方は若くて47歳。
死後3日で発見されている。」

かつて孤立死は高齢者が中心でしたが、10年ほど前から現役世代が目立つようになってきたといいます。

遺品整理会社 吉田太一社長
「65歳以下の孤立死のほうが、それ以上の年の人よりも上回る月も多々ある。
(孤立死する)年齢層は、40代〜30代まで広がっているかも。」

 

こうした傾向を裏付けるデータも出てきています。

今、多くの保険会社から発売されている「孤立死保険」。
賃貸住宅のオーナー向けに、孤立死が起きた部屋の修繕費用や家賃を補償します。
今年(2017年)業界団体が、その運用実態を調査しました。

過去2年間に保険金が支払われた孤立死のケース1,095件では、男性が8割を占め、平均年齢は60歳でした。
さらに、年代別に見ると、4割以上を現役世代が占めていたのです。


 

日本少額短期保険協会 杉本茂也さん
「20代から50代まで、まんべんなく孤独死が発生している。
高齢者だけの問題と断定できないという実情が分かった。」


 

なぜ、現役世代が孤立死してしまうのか。
遺族の許可を得て、遺品整理会社が扱ったケースの1つを追いました。

神奈川県藤沢市にあるマンション。
その一室で6月、一人暮らしの54歳の男性が亡くなっているのが発見されました。
死因は肝硬変による心臓発作でした。
部屋の一角にあったのはサーフボード。
趣味はサーフィンでした。
男性が生前、通っていたサーフショップを訪ねました。

「よく通っていたようだが。」

サーフショップ 店長
「覚えている。」


 

20代の頃、毎週のように海に通っていたという男性。
友人も多く、社交的だったといいます。

サーフショップ 店長
「明るくて、元気で、仲間とわいわいやっていた。
スポーツを通じての仲間は多かった。」

28歳で結婚し、子どもも授かりました。
しかし、39歳で離婚し、一人暮らしに。
男性は、この頃から徐々に孤立し始めます。

男性の地元の友人です。




 

男性の友人
「俺だ、これ。
スキー行った。」


 

よく一緒にスキーなどに行っていましたが、男性が40代になると、お互い仕事が忙しくなってきたこともあり、次第に付き合いはなくなっていったといいます。

男性の友人
「だんだんとつきあいが薄くなっていく。
年をとれば責任がついてくるから、やることも増える。
彼も忙しかったのか、その辺から連絡を取らなくなった気がする。」

40代後半の時には、両親が相次いで亡くなり、たまに実家で会っていた兄弟とも疎遠になっていきます。

さらに、男性が孤立を深めたのは3年前。
51歳で糖尿病を発症したのです。
神奈川県内のガス機器メーカーに勤めていた男性は、仕事をたびたび休むようになり、翌年、退職に追い込まれました。
男性は、体調に合わせた仕事を何とか探そうとしていたといいます。
しかし、再就職先を見つけることはできませんでした。
 

ハローワーク藤沢 荻原聡次長
「病気で、完全に治っていなくて、就労可能だとしても、本当に勤められるか懸念する会社もあるので、なかなか採用に至らない場合は出てくる。」

 

男性は、次第に部屋に閉じこもるようになりました。

中にあったのは、大量の酒のボトル。
そして今年6月、亡くなっているのが見つかりました。
遺品整理の際、薬や健康保険証など、病院に通っていた形跡はなかったといいます。

 

片隅には、友人たちとサーフィンを楽しんでいた、若い頃の写真が残されていました。
疎遠になっていたという男性の妹に話を聞くことができました。
男性からの連絡はなく、病気のことも知らなかったといいます。

男性の妹
「連絡を取らなくなったのが一番いけないのかなと思う。
いつまでも元気だと思って、ほったらかしにしちゃっていた。
電話をかけてあげればよかったとか、悔しさはある。」

 

結婚もし、仕事も持っていた状況から少しずつ孤立し、死に至った男性。
専門家は、現役世代の孤立が高齢者と比べて発見されにくく、今後、孤立死が広がる可能性もあると、警鐘を鳴らしています。

明治学院大学 河合克義教授
「高齢者の場合、民生委員や民間・住民の主体的な活動で見守りをしようと動いているが、現役世代の方は、その手法と比較すると、ほとんど手つかず状態。
現役世代が孤立している状態を把握して、どういう手だてを組むかが求められる。」

 

二宮
「私、今30代ですが、日ごろ、会社で働いていたり、自分の家族ができたりすると、関係がかなり限定的になりがちだなと思っていて、もし、それがこの先なくなった時、どうなるんだろうなというのは思いましたね。」

林田
「まさに人ごとではないなと感じますよね。
気になるデータもあります。
シンクタンクのニッセイ基礎研究所が一昨年(2015年)行った『世代ごとの孤立リスクの高さ』の調査結果が、こちらです。

この調査では、一緒に暮らす家族ですとか、近所づきあいなどが少ないほどリスクが高いとされているんですが、グラフでは色が濃いほど、そのリスクが高いことを示しています。
いわゆる『ゆとり世代』、そして『団塊ジュニア世代』で、リスクの高い人が多いことが分かるんです。

調査を行ったニッセイ基礎研究所の井上智紀(いのうえ・ともき)さんは、『若いうちから、家庭や職場だけでなく、趣味や地域での活動など、社会の中にさまざまな“つながり”をもっておくことが重要だ』と話していました。」

二宮
「近所づきあいですとか、地域のつながり、煩わしいと思いがちかもしれませんが、大切ですね。」

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