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2017年8月19日(土)

急がれる警戒区域の指定 〜広島土砂災害から3年目 教訓を生かすために〜

林田
「77人が犠牲となった広島市の土砂災害から、明日(19日)で3年になります。
被害拡大の背景には、被災した地域の多くが『土砂災害警戒区域』に指定されておらず、その危険性が住民に十分伝わっていなかったことがあります。」

二宮
「その『土砂災害警戒区域』。
自治体が指定して防災態勢づくりを進めますが、対象になるとみられる区域は、急しゅんな地形など、全国で66万6,000か所余りに上ります。
しかし、地形の調査に時間がかかり、地価の下落や過疎化を心配する住民の理解を得るのが難しいといった問題に直面しています。
広島県では、より早く危険性を伝えようと、新たな取り組みを進めています。」

土砂災害のリスク レーザー光線で把握!?

リポーター:大石理恵(NHK広島)

土砂災害が起きる危険性のある場所はどこなのか。
土砂災害警戒区域を新たに指定するため、広島県は航空機を使った作業を進めています。

「コース進入、計測を開始。」




 

県が災害後に導入した測量技術です。
航空機から地表にレーザー光線を当て、地形のデータを取得。
土砂災害の恐れのある場所を特定します。
警戒区域を指定するのに必要な基礎調査です。

これまでは、がけや谷に分け入って測量してきました。
広島県は、警戒区域と見られる場所が、全国で最も多い5万か所に上ります。
すべてを指定するには、少なくとも17年はかかるとされていました。

 

白羽の矢が立ったのが、最新の測量技術。
調査の大幅なスピードアップを目指します。

航空測量の担当者
「実際には下の面、機体の下に穴が開いていて、こちらから実際に(レーザーを)照射している。」


 

航空機から地表に、1秒間に最大50万発ものレーザーを当てます。
地表から戻ってくるレーザーの時間差を利用して、地形を計測します。



 

この技術で作成した、広島県北部の立体地図。
わずか数週間で地形を把握できます。
立ち入りが難しい急しゅんな山も、正確に測ることができます。

広島県 土砂法指定推進担当 大本直樹主査
「明確に高低差が分かってくるので、傾斜がきついところを抽出することができるし、土石流が流れ落ちてくる谷を、簡単に把握することができる。」

 

このデータを踏まえ、土砂災害の恐れのある場所を、黄色の「警戒区域」に。
建物を押しつぶすほど危険性が高い場所を、赤色の「特別警戒区域」に指定するのです。

調査が終わると、その都度、住民説明会を開き、先に危険性を伝えます。
新たな測量を取り入れたことなどで指定にかかる期間は5年程度と、大幅に短縮。
平成31年度末までに、すべての指定を終える見通しです。

 

広島県 土砂法指定推進担当 古川信博課長
「1日も早く県民の皆様に土砂災害のおそれのある区域を示すことを肝に銘じて取り組んでいきたい。
県民の皆様が、みずからが命を守る行動につなげていくことが一番の目的。」
 

警戒区域の指定をきっかけに、防災対策を加速させている地域があります。

廿日市市宮内の明石集落です。
最新の測量調査の結果、今年(2017年)2月、4割もの住宅が「特別警戒区域」に指定されました。
斜面に160軒余りの住宅が建ち並び、420人余りが暮らしています。
特別警戒区域になると、住宅を新築する場合などに規制がかかるため、当初は住民から反対の声も出たといいます。

明石町内会長 石塚宏信さん
「県からいきなり特別警戒地域(区域)だとレッテルをはられ、ショックはショックだろうと思う。」


 

さらに、課題となったことがありました。

集落唯一の集会所も、特別警戒区域に指定されたのです。
大雨が降るたびに住民たちが身を寄せてきた集会所が、避難所として使えなくなったのです。
住民の間で危機感が強まりました。
住民たちは、集会所に代わる安全な避難先を、自ら探しました。
 

平たん地にある病院と交渉。
一時的な避難先として利用させてもらうことにしました。
24時間、患者の対応にあたる病院なら、夜間でも避難が可能だと考えたのです。

 

今年6月には、200人の住民が参加して、病院への避難訓練も実施。
集落から病院までの道のりを、どう安全に避難するのかという新たな課題も見えてきました。
1人で身動きが取れないお年寄りたちを誰が運ぶのか、役割分担について検討しています。

住民
「誰がどのようにここまで連れてくるか決めたほうがいいのではないか。」


 

病院関係者
「院内のマニュアルも作成していきたい。」



 

明石町内会長 石塚宏信さん
「早めの避難で、どのようにここを活用できるかが、今後の課題。
町内会でできる災害時の弱者対策が、今からすぐ進めなくてはいけないことだ。」

災害の危険性が十分に知らされないまま、多くの人が犠牲となった広島市の土砂災害から3年。
最新の測量技術をもとに警戒区域の指定が進むことで、土砂災害のリスクを少しでも減らそうという動きが地域に広がっています。
 

二宮
「警戒区域に指定する必要性ももちろん感じますし、ただ住んでいる方にすると、『ここがそうだと言われても』と戸惑う気持ちも理解できますよね。」

林田
「今回ご紹介した、このレーザー測量なんですが、従来の航空写真の測量ではよく分からなかった木がうっそうとした場所の地形も把握できるということです。
住民からは『本当にうちの裏にこんなに深い谷があったのか』と、高い精度の測量で納得感も得やすいといいます。」

二宮
「自主的な防災につなげるためにも、やはり住民がより納得できることが重要だと感じます。」

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