これまでの放送

2017年8月4日(金)

中山間地での避難 難しい現実

高瀬
「明日(5日)で九州北部豪雨から1か月になります。」

和久田
「今回の豪雨で、福岡県と大分県では山あいの集落を中心に大きな被害が出て、福岡県の朝倉市と東峰村、大分県日田市であわせて36人が犠牲となりました。
福岡県朝倉市の避難所から、中澤アナウンサーが中継でお伝えします。」

中澤
「私がいるのは、朝倉市の杷木池田にある避難所です。
最新の情報では、現在94人の方が避難生活を送っています。
台風5号が九州に接近すると予想されていますが、けさは晴れています。
しかし、こちらに避難している皆さんの間では、新たな土砂災害が発生したり、また川が氾濫したりするのではないかという不安が広がっています。
話をうかがった方は『あの豪雨から、雨は恐怖の対象でしかありません。もう雨は十分です』と話していました。
九州北部豪雨から明日で1か月。
今、皆さんが最も気にしているのは、これからの住まいに関してです。
あちらの掲示板には、『住宅関係』と書かれたコーナーがあります。
そこには今週から募集が始まったばかりの、応急の仮設住宅の申し込みに関する案内が貼られています。

福岡県によると、すでに61件の申し込みがあったということです。
被災した人たちが今、どのような思いで過ごしているのか。
取材しました。」

九州北部豪雨 あす1か月 被災地は今

中澤
「朝倉市・杷木地区です。
土砂災害の被害が大きかった地域です。
土砂が流れ込んだ家々が建ち並んでいます。」

豪雨から1か月になる今も、流木や土砂が至るところに残っています。
住民たちは連日、その撤去作業に追われています。

土砂が流れ込み、自宅に住めなくなった女性です。
今は娘の家に身を寄せながら自宅に通い、たまったドロを外に運び出しています。
しかし、せっかく片付けても、雨が降るとすぐに家の中に大量の泥水が流れ込んでしまうといいます。

「ここに住めるかどうかもわからない。
二次災害とか、きのうの雨でこうなっていく。
やっぱり気持ちがめいりますね。」

続いて訪ねたのは、創業220年の老舗の酒造会社。
一見、工場内はきれいに見えますが、生産ラインは今も止まったままです。
工場の心臓部とも言える制御盤が浸水し、故障してしまったからです。

老舗酒造会社 篠崎倫明さん
「全く作動していないので、これも特注品なので、まるごと交換。」

機械の被害額だけで、2億円以上に上っています。
今は、残った在庫商品の汚れを落とし、再出荷することしかできないといいます。

老舗酒造会社 篠崎倫明さん
「これからどうなるのかという不安が強い。
社員の生活もあるので、やるしかない。」

高瀬
「なかなか復旧は思うように進んでいないということが分かりますね。」

中澤
「そうなんです。
幹線道路や街の中心部は順調に復旧しているように見えるんですが、住宅地などは住民の方みずからが流木などを撤去しなければならないんです。
そのため、ボランティアの皆さんに頼らざるをえないのが現実です。
また今週に入って、この辺りは大雨によって避難指示が出ました。
さらに今、台風5号が接近しているという状況です。
前を向いて進みたいのに、なかなか復旧が進まずに、もどかしさ、苦しさがあります。
改めて、九州北部豪雨の被害です。

福岡県から大分県にかけての『中山間地』に被害が集中しました。
実はこの地域一帯は、5年前にも豪雨による被害を受けています。
その際、課題となったのが、中山間地における避難です。
通常、土砂災害などの危険が高まっている時には、住民は自治体が設置する『指定避難所』に避難します。
ところが中山間地の集落では、これまでの経験から近くの公民館などを『自主的な避難所』とするところが少なくありませんでした。
今回の災害では、その自主避難所をめぐっても課題が見えてきました。」

九州北部豪雨 あす1か月 見えてきた避難の課題

リポート:西園興起(大分局)

大分県日田市の中山間地域。
土砂崩れや河川の氾濫で家屋などが押し流され、大きな被害が出ました。
その1つ、日田市北部にある大肥町です。
自治会長を務める堀義幸(ほり・よしゆき)さん。
今回の豪雨で、住民の避難誘導にあたりました。
堀さんが呼びかけたのが、近くの公民館への避難でした。

大肥町自治会 堀義幸会長
「公民館なら水害の関係はまず大丈夫だろうと。」

きっかけとなったのは、5年前の九州北部豪雨です。
この時、家屋が浸水する被害がありましたが、日田市が設置した指定避難所に避難しなかったという人が相次ぎました。
その理由は指定避難所までの距離です。
離れたところでは、2キロ以上あります。
高齢者を中心に「とても遠くて行けない」という声が多かったのです。

そこでこの地域では、やむをえず、近くにある公民館を自主的な避難所として活用することにしました。
そのすべての公民館が土砂災害危険箇所ではあるものの、遠くにある指定避難所まで避難するよりは、危険が少ないと考えたのです。
ところが、今回の豪雨で大きな課題をつきつけられました。
自主避難所の1つとなった公民館です。
堀さんらの呼びかけを受けて、高齢者を中心におよそ10人が避難。
降り続く雨の中、避難者たちは公民館の前の道路に、裏山から土砂混じりの大量の水が流れ込んでいるのを目撃していました。
土砂崩れが起きるのではないかと、身の危険を感じたといいます。

「そこが川みたいになる、その溝が。
石ころや土砂が道路にたまる、(山の)上から落ちて。」

「外を見て“大きいことにならないようお願いします”ってずっと拝んでいた。」

さらに、公民館にたどりつけなかったというケースもありました。
この公民館は、川のすぐ脇にあります。
今回の豪雨で氾濫し、公民館につながる橋は濁流にのみ込まれ、通れなくなっていました。
この男性は、避難を断念せざるを得なかったといいます。

「とても通れる状態じゃない。
上のほう見てもらえればわかるが、川岸の両サイドがえぐれて、大変なことになっている。
家にいるしかなかった。」

住民を安全な場所に避難させるにはどうすればいいのか。
堀さんは、今回の豪雨で中山間地での避難の難しさを改めて感じています。

大肥町自治会 堀義幸会長
「ここは絶対に安全っていうところに移りたいけど、簡単にいかない。」

中澤
「ここからは、取材にあたった大分放送局の古本湖美記者に聞きます。
自治体がつくった避難所は遠くて、さらに地域の皆さんが自主的に決めた避難所は安全面で不安がある。
中山間地の避難というのはかなり難しいんですね。」

古本湖美記者(大分局)
「そのとおりです。
ほかの地域でも、集落内にある公民館などを自主的な避難所とする動きが広がっています。

NHKでは、大肥町を含め、日田市で被害の大きかった2つの地区にある自主避難所について調べました。
白マルが自主避難所です。
集落ごとに公民館など、合わせて26か所が自主避難所になっています。

こちらは、黄色の範囲が『土砂災害警戒区域』など、土砂災害のおそれがある場所を示しています。
赤色のバツ印は、この範囲内にある自主避難所です。
これが全体の8割近くに上っています。
いずれも、やむをえず設置しているというのが実情のようです。
全国的な実態は分かっていませんが、中山間地ではどこも似たような状況だとみられています。」

和久田
「やはり、状況が悪化する前に早めに指定の避難所に避難することが最も大切ですが、こうした自主避難所を少しでも安全な避難所にするにはどうすればよいのでしょうか?」

古本記者
「自主避難所を設ける際、人が集まりやすいという理由で公民館や集会所に設ける場合が多いようですが、専門家は、例え一般の住宅であっても、崖から離れているなど、周囲が比較的安全な建物を選べば安全性は高まるとしています。
鉄筋コンクリートの住宅や車庫など頑丈な建物を選んでおき、一時的に避難するという発想も必要だとしています。
さらに、国の補助金などを使って避難所の裏に崖崩れよけの壁を作るなど、ハード対策を行うことも有効だとしています。
そのため、国も補助制度を使い勝手よく見直すことも求められています。」

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