これまでの放送

2017年8月2日(水)

元暴力団の組長 出所者を支える理由

和久田
「こちらをご覧ください。
一昨日(31日)発表された法務省の統計です。
刑期を終え満期で出所した後、2年以内に再び犯罪を犯し、刑務所に入った人の割合は27%、およそ4人に1人です。
こうした高い状態が10年以上続いています。」
 

高瀬
「課題とされているのが、出所者の『行き場』の確保です。
刑務所では、職業訓練などを行っていて、出所後の受け入れ先があり、再犯の恐れがないと認められた場合などは仮釈放され、社会の中で更生していくことになります。」

和久田
「しかし、受刑者の高齢化などの影響で、帰る家や仕事がないまま、満期で出所するケースが多いのです。」

「行き場がない」 満期出所者は…

熊本市の刑務所です。
満期での出所を控えた70代の受刑者です。
暴力団に所属し、銃刀法違反や暴力事件などで、これまでに4回服役し、合計30年以上を刑務所で過ごしてきました。
この日行われた、ソーシャルワーカーとの面談で、男性は出所に対して複雑な気持ちを口にしました。

ソーシャルワーカー 松永美弥さん
「もうすぐ出所ですけど、どんな気持ちですか?
うれしい気持ち?」

満期で出所する 元暴力団員(70代)
「半分はそうだし、これからどう生活していくか、不安と半々。」

これまで、出所のたびに暴力団から足を洗おうと考えていた男性。
しかし、自力で家を探しても貸してもらえず、新たな仕事に就こうとしても断られました。
結局、暴力団との関係を断つことができず、再犯を繰り返してきたといいます。

満期で出所する 元暴力団員(70代)
「今までの生活はどうしようもなかった。
こういう人間を雇うところはない。」


 

ソーシャルワーカー 松永美弥さん
「(高齢だと)出所時、家族が亡くなっていたり、事件で家族との関係性が壊れたり、帰る先がない人は多い。」


 

出所後の受け皿 どう確保する?

高瀬
「熊本放送局、杉本記者とお伝えします。
このように満期で出所して、受け入れ先が必要な人、年間およそ5,000人いるということなんですね。」

杉本宙矢記者(NHK熊本)
「行き先がない人を一時的に受け入れるために、各地には国が認可した更生保護施設が設置されています。
しかし定員が少ないため、満期出所で利用できた人はわずか4%。
大多数は行き場がありません。
施設を増やそうとしても建設費がかかり、地域住民からの反対もあるため、なかなかうまく進みません。
そこで国は新たな対策を打ち出しましたのが、『自立準備ホーム』と呼ばれる施設で、民間のNPOなどが運営しています。
熊本には、刑務所に服役した経験を持つ人が運営するホームがあり、今、全国から注目を集めています。」

自立めざす施設 元受刑者が運営

リポート:杉本宙矢(NHK熊本)

熊本市にある自立準備ホーム「オリーブの家」です。

3年前から、この施設を運営する理事長の青木康正(あおき・やすまさ)さんです。
青木さんは、元暴力団の組長。
これまで30年近く刑務所で過ごしてきました。
自分と同じ境遇で苦しむ人たちの役に立ちたいと考えていた時に、自立準備ホームのことを知りました。
自立準備ホームの場合、専用の施設を新たに建てる必要はなく、一般のアパートでも運営できます。
1人受け入れると、国から1日あたり4,700円の委託費が出ます。
青木さんは、それを食費や家賃、スタッフの人件費に充てて運営しています。
ホームを作った当初、地域の住民からの反対もありました。
しかし、青木さんは、入居者と近所の掃除を続け、徐々に地域の理解を得ていったのです。

自立準備ホーム 理事長 青木康正さん
「(刑務所の中で)苦労している人をいっぱい見てきましたから。
どんな過去でも、今、これからが大事。
これからしっかり生きればいい。」

6月中旬。

青木さんは、刑務所でカウンセリングを受けていた70代の元暴力団員・田畑さんを迎え入れました。
青木さんの経験を生かし更生してほしいと、ソーシャルワーカーの推薦で入居が決まりました。
田畑さんは半年間、ここで過ごし、仕事や家を探すなど将来に備えます。

元暴力団員 田畑さん(仮名)
「いいですね。
こういうところに入れてもらって助かります。」

青木さんが入居者に必ずお願いしていることがあります。
毎日、青木さんと交換日記をすることです。

これまでの入居者の日記帳です。
同じ経験をした青木さんが積極的に働きかけることで、入居者たちは徐々に心を開いていったといいます。

自立準備ホーム 理事長 青木康正さん
「よくも悪くも頑固者が多い。
一筋縄にいかない。」

入居から1か月。
田畑さんの日記に変化がありました。
実はこの頃、元入居者と口論になり、手を上げるというトラブルを起こしてしまったのです。
この時、田畑さんは初めて素直な気持ちを打ち明けてきました。

数々の「反省」の言葉。
口べたな田畑さんが、ノートいっぱいに内に秘めた思いを綴っていたのです。

元暴力団員 田畑さん(仮名)
「ある程度、理解はしてもらっている。
その気持ちは伝わる。
自分としては、いくらか気持ちが楽になった。」

青木さんが今、力を入れているのが、仕事探しのサポートです。

この日、元入居者やスタッフを交えて農業の体験会を企画しました。
青木さんは、地域で自立準備ホームの活動に理解がある人を探し、さまざまな職業体験を積む場所を作りたいと考えています。
高齢で将来の仕事に不安を抱えていた田畑さん。
農作物の収穫方法や農機具の操作方法を教えてもらいました。
作業を体験したことで、農業への興味が深まったといいます。

元暴力団員 田畑さん(仮名)
「1日ひとつ何か覚える。
毎日やっていれば、なんとか(前に進む)。
それからが自分の本当の一歩という感じ。」

青木さんは元受刑者が、自立に前向きな気持ちを持てるよう、さまざまな取り組みを続けていくことにしています。

自立準備ホーム 理事長 青木康正さん
「前科者、悪ガキとレッテルを貼られたら、なかなか立ち直ることができない。
どんな人も変われるわけだから、常に手を差し伸べてやるのが一番。
やっぱり受け皿ですよ。」
 

自立準備ホーム 成果と課題は

高瀬
「青木さんの活動ですけれども、実際にこれまで、どのような成果というのが出ているんですか?」

杉本記者
「青木さんのもとからは、3年間で50人以上が社会に復帰していきましたが、再犯率は1割ほどで、一定の成果を上げていると言えます。
一方で、施設を出た後もケアが必要な人もいて、長期的な見守りも課題となっています。」

和久田
「今後、こうした取り組みを、さらに広げていくには何が必要でしょうか?」

杉本記者
「自立準備ホームは年々増えていて、現在、全国で370か所以上登録されています。
ただ、施設の多くは、限られた予算や人員でやりくりをしていて、決して安定した運営とは言えず、関係機関との連携が欠かせません。
その上で、仕事や住まいを見つけるためには、地域社会が元受刑者の境遇に理解を深めることが必要で、それが再犯の防止につながっていくと感じました。」

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