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2017年7月25日(火)

“医療的ケア児” 支援どう広げるか

高瀬
「人工呼吸器の使用やたんの吸引といった“医療的ケア”が必要な子どもたちと、家族の支援についてです。」

都内で暮らす2歳の女の子です。
たんが詰まると呼吸が止まってしまうため、“医療的ケア”が欠かせません。
体調が悪い時には、昼夜問わず、たんの吸引を5分おきに行わなければならないといいます。」

母親
「こっちも疲れてきたりする。
(将来を)考え出すと不安。」

こうした中、去年(2016年)4月、医療的ケアを必要とする子どもを一時的に預かる専門の施設、「もみじの家」がオープンしました。
ここでは看護師が24時間態勢で子どもに対応。
家族は日頃の緊張から解放され、休息をとることができます。

さらに、保育士などの専門職が常駐。
子どもたち一人一人が楽しい時間を過ごせるよう工夫しています。

母親
「(子どもが)めちゃくちゃ笑っていたので、こっちまでうれしくなる。」

「もみじの家」がオープンして1年余り。
多い時には、定員の2倍以上の予約があり、受け入れを断らざるを得ず、十分ニーズに応えられない状況になっています。

「できればすべての希望に応えたい。」

医療的ケアが必要な子どもたちや家族への支援を、どう広げていけばよいのでしょうか。

高瀬
「『医療的ケア』を必要とする子どもたちは、全国で1万7,000人以上。
医療技術の進歩によって救われる命が増えたこともあり、この10年で2倍近くになっています。
その多くは、症状が落ち着いている時は、家族のケアを受けながら自宅で過ごしています。」

和久田
「しかし、医療的ケアは医師や看護師などの医療者と家族しか行えないため、子どもたちを夜間に預かってくれる施設は全国的にほとんどありません。
こうした中、『もみじの家』の開設をきっかけに、今、各地で新たな支援の動きが始まっています。」

“医療的ケア児” 支援どう広げるか

リポート:川﨑敬也カメラマン(映像取材部)

今、もみじの家には全国から視察が相次いでいます。
この日やってきたのは、宮城県の福祉担当の職員と、病院の看護師です。
県内でも支援を求める声が高まる中、自治体として何かできることはないか、模索しているといいます。
宮城県では、まず既存の施設を活用した新たな取り組みを始めることにしました。
医療的ケアが必要な人の一時預かり先として、県が病院の空きベッドを確保。
その費用を負担します。

病院なら医療設備もスタッフも整っているため、1人利用者を受け入れても対応が可能だと考えたのです。
今回協力したのは、最大49人が入院できる病院です。

先月(6月)、初めて1泊2日で1人の男性を受け入れました。
豊澤圭太(とよさわ・けいた)さんです。
圭太さんは、たんの吸引や胃ろうなど、頻繁な医療的ケアが必要です。
病院では圭太さんを受け入れるにあたって、通常より1人看護師を増やしました。
医療的ケアを万全に行うだけでなく、圭太さんと関わる時間を増やそうと考えたからです。
ところが…。

病棟に救急患者が運ばれてきました。
看護師は圭太さんの元を離れざるを得ませんでした。
病室では、栄養の注入が終わったことを知らせるアラームがしばらく鳴り響いていました。
しかし、看護師が戻ってきたのは、救急患者の対応が一段落した後のことでした。

看護師
「一緒に見られないけど、辛抱して。
アンパンマン見てて…。」

この日、圭太さんは長い時間、1人きりで過ごすことになりました。

翌朝。
看護師たちは、圭太さんに十分関われていないと感じていました。
そこで、時間を作って集まり、圭太さんの大好きな歌を歌うことにしました。

ようやく圭太さんの表情がほぐれました。
病院と県の担当者は、今回の取り組みの課題を出しあうことにしました。
現場のスタッフからは、この体制で受け入れることに不安の声も上がりました。

「今後、一般の入院患者さんを受け持ちながら圭太くんをみられるか、ちょっと難しいかな。」

「1泊2日だったので、今回はどうにか。
それが1週間になってしまうと…。」

それでも宮城県と病院では、改善を重ねながら何とか取り組みを続けていきたいと考えています。

登米市立米谷病院 遠藤敏院長
「困ってる状況の人に何かお手伝いをしていく。
できる範囲でやっていくしかない。」

“医療的ケア児” 支援どう広げるか

高瀬
「取材にあたった川﨑カメラマンです。
『もみじの家』をきっかけに、医療的ケアが必要な子どもたちへの支援が始まっているようですが、なかなか簡単ではないようですね。」

川﨑敬也カメラマン(映像取材部)
「現在の制度では、医療的ケアが必要な子どもを病院や施設が一時的に預かる場合に、福祉サービスとしての費用が一部出るものの、医療費が出ないため、必要な経費の全額がカバーされない仕組みになっているんです。
医療的ケアが必要な子どもが増え続ける中、制度が実情に追いついていません。
これまでにない新たな仕組みが必要になってきていると感じます。
こうした状況を国はどうみているのか。
担当者に聞きました。」

厚生労働省 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室 髙鹿秀明室長
「特に“医療的ケア児”は、医療と福祉の垣根を低くして、それぞれの分野が連携した包括的な支援が重要になる。
“医療的ケア児”の支援を迅速に進めていく。」

和久田
「こうした支援をさらに広げていくためには、何が必要なのでしょうか?」

川﨑カメラマン
「国も課題は認識しているようですが、医療費などについて具体的にどうするかはまだ決まっていません。
ただ、医療的ケアが必要な子どもや家族を支えるには、公的支援だけでなく民間の力も活用しなければなりません。
例えばイギリスでは、『もみじの家』のような専門施設が国内に40か所あり、その運営費の8割が寄付で賄われているんです。
私は1年にわたって、医療的ケアが必要な子どもたちや家族を取材してきました。
1年前にお会いした時には思い詰めていた表情をしていたお母さんが、最近お会いした時には見違えるほど明るい表情で、『もみじの家があって本当に救われました』と話してくれたことがとても印象的でした。
こうした家族を支える場所が広がっていくことが、本当に必要なことだと感じています。」