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2017年6月26日(月)

太陽光発電で何が… “買取制度”導入5年

和久田
「先月(5月)から電気料金が値上がりしたのをご存じですか?」

みなさんの元に毎月届く電気料金のお知らせ。
この項目、何だか知っていますか。

 

「分からない。」

「全然知らない。」



 

これは、太陽光など、再生可能エネルギーに関係する費用の一部が電気料金に上乗せされ、利用者が負担しているお金なんです。
今年度は、標準的な家庭で、ひと月およそ700円。
5年前に比べ、10倍以上になりました。

「金額としては大きい。」




 

東京電力・福島第一原発事故の後、急速に広がってきた再生可能エネルギー。
しかし、その柱となってきた太陽光発電が今、曲がり角を迎えています。

太陽光発電 事業者
「プロジェクトを断念しなければならない。
リスクを抱えるようになってきている。」


 

今、太陽光発電で何が起きているのでしょうか。

和久田
「国は今、発電量全体に占める再生可能エネルギーの割合を、2030年度までに22%以上に引き上げる目標を掲げています。」


 

高瀬
「再生可能エネルギーの普及に向けて設けられたのが、『固定価格買取制度』です。
来月7月1日で、導入からちょうど5年になります。
これは、電力会社に太陽光発電などによる電気を買い取ることを義務づけたものなんです。
電力会社は、その買い取らなければならない電気の価格の一部を、月々の電気料金に上乗せしていまして、それを、私たち利用者が負担しているんです。
先ほどもご覧頂きましたように、標準的な家庭で700円。
先月からは100円値上がりしました。
その負担、年間で8,000円を超えています。

そして、こちらは負担金の総額の推移です。
太陽光発電の拡大に伴いまして、年々、私たちの負担は増え続け、今年度は2兆円を超える見込みです。」

和久田
「こうした負担の増加を背景に、国は、買い取り価格の大幅な引き下げを進めています。
これによって、太陽光発電の拡大が厳しくなっているのです。」

太陽光発電で何が… “買取制度”導入5年

岐阜県可児市の工業団地の跡地。
ここに、東京のベンチャー企業が運営している太陽光発電所があります。



 

エンブルー 三浦洋之社長
「パネルで4,400枚ほど。
出力が1.1メガ強のメガソーラーです。」


 

この発電所は、一般家庭およそ280世帯分の電力をまかなうことができます。

社長の三浦さんは今後、この規模の発電所を全国に新たに20か所以上増やしたいと考えています。
しかし今、大きな壁に直面しています。


 

当初、電力会社は、発電された電気を単位あたり40円で買い取っていました。
それが、今後建設される太陽光発電所では、21円にまで引き下げられたのです。
買い取り価格が半額近くになったことで、発電所の新たな建設が難しくなったといいます。

例えば、この京都の候補地。
小高い丘にある土地が安い値段で売りに出されていました。

「2メガくらい(パネルが)置けるから、土地代は安いけど。」

電気の買い取り価格が40円の当時は、平らに造成することも検討できましたが、今では採算が合わないといいます。
さらに別の課題もあります。
 

静岡県富士宮市にある、この土地。

「土地の形としては悪くない。」

エンブルー 三浦洋之社長
「だいぶ平たんそう。」

平らな土地で、大がかりな造成工事は必要ありませんが…。
 

「問題が、すでに真っ赤。」

薄い赤で表示された地域は、発電した電気を送るための送電線の容量がいっぱいになっていることを示しています。
この地域では、他の太陽光発電所などが、すでに送電線を使っているため、新たに使える容量が残っていないのです。
仮に、自前で送電設備を整備すれば、巨額のコストがかかり、採算は合いません。

エンブルー 三浦洋之社長
「新規の発電所を作ろうと、いい土地を見つけてきても、断念しなければいけないケースも激変といえるくらい増えている。」

こうした中で、急激に伸びてきた太陽光発電の発電量の増加に陰りが見えているのです。
再生可能エネルギーの普及と負担の間で、国は難しい舵取りを迫られています。

資源エネルギー庁 新エネルギー課 山崎琢矢課長
「無限の国民負担はありえないので、国民負担と再生可能エネルギーの導入拡大を、どう両立させていくのか。
経済産業省に課された重い宿題だ。」

“買取制度”導入5年 太陽光発電で何が…

高瀬
「では、取材した経済部の中野記者に聞きます。」

和久田
「国が国民への負担を増やせないとして、買い取り価格を下げたことで、今度は太陽光発電を増やすのが難しくなってきているんですね。」

中野陽介記者(経済部 エネルギー担当)
「そうなんです。
買取制度が始まった5年前は、当時の世論の高まりというのもあって、とにかく太陽光発電を中心に、再生可能エネルギーを増やそうと、それを最優先にして、買取価格も高く設定されました。
このことで、確かに太陽光発電は急速に増えたんですが、その一方で、利用者の負担も増大してしまいました。
そこで制度を見直して、買取価格の引き下げを進めてきたんですけれども、それが、こうした状況につながっているということになります。
これは、制度導入から5年がたって、より深刻になってきているということが言えると思います。」

高瀬
「そもそも、私たち利用者が負担しなければならないところがあるというのは分かっていたことですが、理想を言いますと、国民の負担はできるだけ増やさずに再生可能エネルギーをどんどんと広げていくというのが理想ですよね。これは、なかなか難しい?」

中野記者
「なかなか簡単ではありません。
というのも当初は普及につれて、太陽光などの発電コストというのは下がっていくと見込まれていたんですけれども、この5年間を見ますと、日本では太陽光発電の工事などに人件費が高いことなどもあって、なかなか国が当初想定したよりはコストが下がっていかないんですね。
また、VTRにあった送電の問題ですけれども、これも新たに送電網を整備しようとしても、誰がその費用を負担するのかというのは、依然として難しい問題として出てくるわけなんです。
こうしたことを受けて、経済産業省は先月、専門家を集めた研究会を設置して、どうすれば発電コストを下げられるのか、あるいは将来的に買取制度がなくても普及が続くようにするにはどうすればいいのか議論を始めていて、今週中にも論点をまとめて公表する予定です。」

和久田
「ただ、再生可能エネルギーを増やしたいという意識はある程度、利用者も共有していることだと思うんですが、この問題、どう考えていけばいいでしょうか?」

中野記者
「太陽光や風力などの再生可能エネルギーというのは、新しいエネルギー源です。
普及を拡大するには、どうしても新しいコストが発生してしまうものです。
一方で、原発事故もありましたし、地球温暖化の問題もあります。
なので、多くの人たちの間で再生可能エネルギーへの期待というのは高まっていると思うんですね。
そうした中で、新しいコストというのをどこまで、どのように負担していくのか。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度というのが始まって5年となる今、このタイミングで改めて考えるべき時期に来ているのではないかと思います。」