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2017年6月20日(火)

有権者・行政に戸惑い

高瀬
「『けさのクローズアップ』。
昨日(19日)に引き続き、『区割り変更』について、お伝えします。
今月(6月)16日、『改正公職選挙法』が公布され、『一票の格差』を縮めるため、衆議院の小選挙区の区割りが見直されることになりました。」

和久田
「見直されたのは、19の都道府県、97の選挙区。
実に全体の3分の1、過去最大規模となります。」

高瀬
「中でも、新たに複数の選挙区に分割された自治体では、有権者や行政に戸惑いが広がっています。」

シリーズ 衆院“区割り見直し”② 戸惑う有権者・行政は

リポート:川本聖(NHK松山)
     古賀さくら(NHK横浜)

松山藩の伝統を受け継ぐ、愛媛県松山市。
今回、区割り変更の対象となったのは、松山市南部の浮穴・久谷地区。
1区の松山市から切り離され、今治市を中心とした2区に組み込まれることになりました。

山あいにある、久谷地区です。
松山藩ゆかりの祭りが今も根づいています。
歴史や文化、生活圏も異なる地域に編入されることに、地元の人たちは戸惑いを隠せません。

 

地元の人
「なんで、なんでや。
非常に松山市とのつきあい、歴史もあると思うんですけど。」 


 

地元の人
「やっぱり、いきなり変わっても。
人数的には、わずかな地域ですけど、どうすればいいんだろう。」

地域の声を国政に届けようと活動してきた人たちは、危機感を持ち始めています。

久谷地区で代々農業を営んできた、平岡量二(ひらおか・りょうじ)さん。
地元の集落では過疎化が進み、空き家や耕作放棄地などの問題に悩まされています。
こうした課題を直接訴えたいと、平岡さんは、1区選出の国会議員を15年ほど前から熱心に応援してきました。
 

平岡量二さん
「ここが集会所。
一般の人に来てもらって、国政報告などをしていました。」


 

国会議員とは、年に2、3回意見交換会を開き、地域ぐるみで信頼関係を築いてきました。

平岡量二さん
「(議員は)顔だけ出して、10分でも20分でも来て、それから次のところに行く。
そういったことを、よくしてくれていた。
地域と議員の関係があったのではないか。」

区割りが変更されることで、地域とはなじみのない候補者とゼロから関係を築かなければなりません。
平岡さんは今後、地元の実情を国政に伝えていくことが難しくなるのではないかと懸念しています。

平岡量二さん
「現場のことが分かっている人と分かっていない人と、その難しさはあるのかなと。
将来、地域をどうにかしないといけないという人も多くいる。
そうした声が、なかなか反映できない。
こういう区割りにすることは、地域の将来のためにならないと思う。」

有権者の意志と関係なく行われた区割り変更。
地域の人たちからは、政治に対する不信感につながりかねないといった声もあがり始めています。

地元の人
「選挙はどうでもいい(となる)。
結局われわれの意見は聞いてくれない。」

地元の人
「自分も選挙には行きますが、白票にします。」

地元の人
「国民の政治に対する関心が薄れる。」

区割り変更を受けて、自治体も戸惑いを隠せません。

人口およそ13万人の神奈川県座間市です。
これまで全域が13区に入っていましたが、今回の変更で、北側の一部地域が、隣の16区に編入。
全国的に見ても、20万人以下の市で新たに2つの選挙区に分割されたのは座間市を含めて5か所しかありません。
今回の区割り変更は、座間市にとっては、寝耳に水のできごとでした。
今年(2017年)4月、区割りが公表される前に、座間市が国から来た書類を細かくチェックした際に、2つの選挙区に分けられていることに気づいたのです。
国から事前の連絡はありませんでした。

座間市 遠藤三紀夫市長
「ひと言で申し上げれば“言語道断”。
直接やりとりをする場もなく、こうしたことが決まる。
非常に理不尽だ。」

 

座間市の選挙管理委員会です。
普段は「文書法制課」として公文書の管理などを行い、選挙の業務に携わることは、ほとんどありません。


 

担当の白井政明(しらい・まさあき)さん。
突然の区割り変更を受け、まだ日程も決まっていない衆議院選挙に備えて、4月から準備を始めています。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「普通であれば“選挙が起こる”と言ってからで十分間に合うが、そうはいかない。」

有権者への告知や、別々に開票を行うための準備など、新たにやらなくてはいけないことが山積みです。
課題は2つ。
1つは、選挙区の変更を有権者に確実に伝えること。
この日、白井さんが向かったのは、区割りの境目となる地域です。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「ここの交差点から向こう側が13区。
こちら側が16区になる。」


 

白井さんが気にしているのは、この一帯。
地区の境界線で、13区と16区に分割されることになりました。

しかし、16区側の地区は県道で分断されているため、一部が13区側に食い込んだ複雑な形になっているのです。
しかも、実際に現地を確認しないとわからないこともありました。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「ここの豆腐屋さんもアパートなんだ。」

地図では、店舗と表記され、有権者はいないと思っていましたが、店の上に人が住んでいることが分かったのです。
白井さんは、この住宅にも間違いなく、選挙区の変更を伝えるよう部下に指示しました。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「こんなに住宅があると、わからなかった。
見ておいて良かった。」

もう1つの課題は、開票作業です。
開票所に使っている市内の体育館。
今度の選挙では、同じ会場を13区と16区の2つにわけて開票作業を行うことになります。
白井さんは、さっそくレイアウト図を作って、配置を確認しました。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「票を混ぜないことが、数え間違いをしないということの大前提。
スペ—スが十分取れるかどうか。
結構いっぱい。
本当はもう少しスペースが欲しい。」

作業にあたる人手をどうやって確保するのかも大きな問題です。
これまでより50人ほど多く必要になります。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「(人手が)足りないですね。
動員できる事務職の職員も、ほぼいない。
今でもほぼ全職員があたっているような状況。
消防や保育士にも、お願いせざるを得ない。」

開票所が増えることで、経費がかさむことも悩みです。

票を自動で仕分ける機械です。

座間市選挙管理委員会 白井政明係長
「237万6,000円。
これが86万4,000円。」

人手が足りない座間市で開票をスムーズに行うために欠かせません。
衆議院選挙のためだけに、新たに500万円分の機械を購入する必要があるのです。
区割りの変更を盛り込んだ改正公職選挙法が施行されるのは、来月(7月)16日。
座間市は、それまでに準備を終えようと、作業を急いでいます。

座間市 遠藤三紀夫市長
「非常に大変な思い、焦燥感もある。
このつらさをわかって頂きたい。
前線で、どれだけ苦労しているのか。
まさかこんなことになるとは思わなかった。」
 

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