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2017年5月17日(水)

“働き方改革”模索する企業

高瀬
「職場での長時間労働に、これまで以上に厳しい目が注がれています。」

夜10時、都内のオフィス街。
就職活動中の大学生が向かったのは、就職先として検討している企業です。

大学4年生
「人が動いている、スーツかかってる。」

残業をしているか、自分たちで確認しているのです。

大学4年生
「いま午後10時か、ばっちり残業してるね。」

大学4年生
「自分が入ることになる会社がブラック企業かホワイト企業か、すごく気にしている。」

学生の働く環境への意識の高まりは、企業の採用活動にも変化をもたらしています。
どの企業も残業の少なさや休暇の充実をアピール。
学生の売手市場が続く中、人材を確保しようと、必死です。

「最大9連休、平日5日間休み。」

「働く時間を適正に管理している。」

企業に「働き方改革」をアドバイスする会社には、この1年で200社以上から相談が殺到しています。

コクヨワークスタイルイノベーション部 鈴木賢一部長
「(企業の)働き方改革の熱量が増している。
どのような働き方ができるかも“企業のイメージ”を位置づける重要な機能に。」

高瀬
「学生が双眼鏡片手に、企業の残業をチェックしていたのには本当に驚きましたね。」

和久田
「政府も時間外労働の上限規制の導入を目指していて、企業の『働き方改革』は待ったなしの状態です。」

高瀬
「しかし、その実践は容易ではないようです。
働き方の見直しを模索する、ある企業を取材しました。」

迫られる“働き方改革” 模索する企業に密着

リポート:太田竣介(名古屋局)

この4月から本格的に「働き方改革」を始めた大手建材メーカーです。
この日、人事部長が改革の必要性を管理職に訴えかけました。

人事部長
「長時間労働を削減していく。
この取り組みが不十分な場合は、社会や市場の評価も下がる。
勝ち残っていくためにも、全社をあげて進めていく。」

会社は新たに9つの規則を掲げました。
「残業をする際の事前申請の徹底」「定時以降には会議や他部門との電話を禁止」など、各職場での実践が指示されました。
住宅や家具に使われる資材の製造と販売を手がけている、この会社。
取引先からの注文に合わせたオーダーメード生産を売りに業績を拡大してきました。
新たな規則を守りながら、売り上げをどう伸ばしていくか。
現場では戸惑いが広がっています。

営業部門で大口顧客の担当チームを束ねる、前田靖人課長です。
受注を増やすため、これまで部下たちは深夜まで残業することもしばしばでした。
チームの平均残業時間は会社平均の3倍、仕事のやりくりに頭を痛めています。

アイカ工業 前田靖人課長
「どう(仕事を)回していくか日々考えている。
自分の中で葛藤がある。」

部内でトップクラスの成績を誇る沢田啓介さんです。
沢田さんが担当する取引先は全部で40余り。
その多くを自ら開拓してきました。

この日も複数の商談を掛け持ちし、時間に追われていました。

アイカ工業 前田靖人課長
「きょうのスケジュールどうなってる?」

沢田啓介さん
「夕方4時に営業を。」

終業時間は5時45分。
沢田さんは営業に出たまま戻ってきません。

アイカ工業 前田靖人課長
「(残業の)事前申請は来ていないですね。」

午後7時すぎ、沢田さんが戻ってきました。

アイカ工業 前田靖人課長
「沢田お疲れさん。」

沢田啓介さん
「お疲れさまです。」

アイカ工業 前田靖人課長
「残業するときは事前申請しないと。
それが『働き方改革』の中でやっていこうという必須項目になっているから。」

「働き方改革」をどう進めていけばいいか。
前田課長は部下と話し合いを進めることにしました。

「手間ひまのかからない商品をできるだけ多くして販売効率を上げる。」

沢田さんからは不安の声もあがりました。

沢田啓介さん
「夕方帰ってきてから見積もりや商品の問い合わせが来て、夜遅い時間に仕事のビジネスチャンスの話が来るので、そういった売り上げの数字も確保できないという心配はある。」

営業目標を下げることなく、労働時間をどう減せるか。
現場は悩みつづけています。

“働き方改革”と業績 両立に悩む企業

和久田
「この働き方改革と業績の両立に悩む企業は少なくありません。
こちらは、民間のシンクタンクがこの春行ったアンケート結果です。

1万2,000社のうち、およそ80%が、残業時間の削減に『何らかの形で取り組んでいる』と答えています。
残業の削減で予想される影響を聞いたところ、従業員の『モチベーションが上がる』というプラスの声もありますが、一方で『仕事の積み残しが発生する』『売り上げが減る』など、悪影響を懸念する声が目立っています。」

高瀬
「こうした中、独自の改革で、業績を伸ばしながら残業の削減に成功した企業があります。」

企業の“働き方改革” 労働時間減らす戦略

リポート:河内康之(経済部)

従業員1万5,000人の大手住宅メーカーです。
6年前から本格的に働き方改革に取り組んできたこの会社。
残業を減らすため、あの手この手の方策を導入しています。
その1つが、パソコンの使用制限です。

「(警告が)出ちゃいました。」

表示されたのは警告文。
事前に残業を申請しないと、定時でパソコンが強制的に使えなくなります。
働けるのは夜8時まで。
時間がくると、オフィスの照明はすべて自動で消えます。

社員
「最初は大変だったが、慣れてくればこんなものかと。」

社員
「ぎゅっと圧縮して仕事ができていると思う。」

以前、この会社では、深夜まで残業の明かりが消えることはありませんでした。
しかし、労働基準監督署から勧告を受けたこともあり、改革に乗り出したのです。
限られた時間で生産性をどう高めるか?
改革の柱として導入したのが、新たな人事評価制度です。
以前は一人一人がこなした仕事を足し上げて、部署全体でどんな成果を挙げたかが評価の基準でした。
そこに、全員の労働時間がどれだけかかったのかという基準を設けることにしました。

1人でも労働時間が長くなれば、部署全体の評価が下がり、全員のボーナスも下がります。
逆に短くなれば、全員のボーナスが増えるという仕組みです。

大和ハウス工業 人事部 菊岡大輔次長
「こちらがイエローカードと呼んでいるものです。」

月に80時間以上残業した社員がいる部署には、人事部から警告としてこの紙が渡されます。
3枚たまると…レッドカード!

長時間労働が常態化している「ブラックな部署」として認定され、ペナルティとして、その部署全員のボーナスが下がります。
社員の間では、仕事を分担しようという意識が高まっています。

課長
「今月彼はいっぱい仕事があって残業が増えているので、きょうの残業30分、主任のほうでお願いできないかな。」

主任
「わかりました。」

会社の業績はこの5年で大きく伸びていますが、残業時間は2割削減することができました。

大和ハウス工業 人事部 菊岡大輔次長
「働き方において、一定のルールの中で利益をあげている会社がきちんと評価される。
その時代の流れから取り残されないように、当社もいろいろな手だてを打っている。」

企業存続のカギ? “働き方改革”

和久田
「人材の確保や社員の健康を守るためなど、働き方改革に取り組む企業の目的はさまざまあるようですが、限られた時間で業績をあげるための工夫は、今後、企業が生き残るためには欠かせないと専門家は指摘します。」

日本総研 チーフエコノミスト 山田久さん
「これまで日本の企業は、質のいいものを時間をかけて丁寧に作ってきた。
それが国際競争力の源泉だった。
ただこれは、人口が増えている時代のモデル。
これからは人が減っていく中で、限られた労働時間の中で成果をあげていく、労働生産性を高めていくことは、企業が生き残るために最も重要な課題。」

高瀬
「急速に進む働き方改革に皆さんの受け止めはさまざまだと思いますが、企業だけでなく、働く私たち自身も、『働く』ということを見つめ直さないといけないという問いを突きつけられているような気がしました。」

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