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2017年4月27日(木)

福島 避難指示解除から1か月 町は…

和久田
「6年の歳月が町を一変させていました。」

高瀬
「福島第一原発の事故に伴う避難指示の解除から、まもなく1か月。
ふるさとに戻った住民を待ち受けていたのは…。」
 

今月(4月)中旬。
避難指示解除から2週間たった、浪江町の住宅街です。

「でかい。」

白昼堂々、イノシシが歩き回っています。
6年間、人が住むことができなかった原発事故の避難区域。
急速な勢いで野生動物が繁殖してきました。
住民が戻りたいと願ったわが家。
そこに住みついた野生動物が新たな脅威となっています。
 

避難した住民
「動物が町の主みたい。
(町には)帰れないかな。」


 

原発事故がもたらした未曾有の事態。
避難指示解除から1か月の現実です。

避難指示解除の町 野生動物が…

リポート:藤松翔太郎(おはよう日本)
     右田可奈(NHK福島)

原発事故以来、7年ぶりの「桜まつり」が開かれた富岡町。
ふるさとの桜を一目みたいと、8,500人が集まりました。



 

「やっぱりわが家はいいな。」

「この花を見ただけで涙が出る。」



 

祭りの人混みに現れたのは、キツネ。
人を恐れることなく、堂々と道を横切りました。

同じ日の浪江町の中心部。
人が戻り始めた住宅街に現れたのは、重さ100キロを超えるとみられる巨大なイノシシ。
本来は警戒心が強い動物ですが、このイノシシは私たちを前に逃げようとしません。
さらに追跡すると。
 

「家の中に入っていく。」




 

慣れた様子で住民がいなくなった空き家に出入りしていました。
追跡を始めて1時間半。
このイノシシは、10軒を渡り歩きました。
野生動物の専門家は、この6年でイノシシに大きな変化が起きたと指摘しています。

人一倍警戒心が強い子育て中のイノシシ。
授乳をしているのは、民家の隣にある畑でした。
人里で繁殖を繰り返すことで、山での暮らしを知らず、人を恐れないイノシシが誕生したのです。

 

福島県 野生動物調査専門官 溝口俊夫さん
「(人が)危険じゃないということを認識したから、彼らは学習をしていく、親から子に伝わっていく。
町が自分の生息地になっているから、人が戻っただけでイノシシが本来の所に戻るというわけにはいかない。」
 

他にも危険性が指摘されている動物がいます。

凶暴な性格のアライグマです。
人に伝染するウイルスなどを保有している可能性があります。
どこに生息しているのか、専門家が1匹のアライグマに発信器を取り付け調査しました。

 

緑で示されたのが、アライグマがいた場所です。

避難区域で野生動物を調査 奥田圭さん
「住宅地だけを使っている。
複数の家を転々と移動し使っているので、住居の侵入被害が広がってしまっている。」

かつては、この地域にいなかったアライグマ。
巣を作るのに適した屋根裏などで爆発的に繁殖したと見られています。

避難区域で野生動物を調査 奥田圭さん
「人が空き家に帰ったときに、ふん尿が住居にあると、そこから何かの拍子に、人間に経口感染してしまうとか、そういった感染症のリスクが非常に高いのではないか。」

 

繁殖した野生動物を住民はどう受け止めているのか。

蒔田幹男(まきた・みきお)さんです。
避難指示の解除後、自宅の片づけに訪れました。



 

蒔田幹男さん
「あの壁突き抜けて、(扉が)吹っ飛んでた。」



 

イノシシがエサを探すため、倉庫の扉を破り、中を荒らしていました。
家の中は至る所に、ネズミの糞が散乱しています。

妻 郁子さん
「ここに来ると体の調子が悪くなって、すぐに帰ろうという感じになる。
いまは動物がこっちの主みたいになっているような気がして。
帰って来たいと思うけど、帰れないかな。」
 

地元の自治体は、急ピッチで新たな対策を始めています。

右田可奈(NHK福島)
「すぐに町に戻る住民が少ない中でも、浪江町は野生動物から住民を守る対策を始めています。」


 

浪江町で今月始まったのは、住民の家や畑を敷地ごとフェンスで囲う事業。
費用は、すべて町などが負担します。
まだ試験段階ですが、動物を防ぐ効果が確認されれば、今後普及させる方針です。
役場では、野生動物の問題に対応する職員を2倍に増員。
通報があれば、一軒一軒、職員が訪問します。
被害の情報を集めるとともに、イノシシを追い払うための住民の協力を呼びかけています。

浪江町 産業振興課 主査 北原厚徳さん
「イノシシには、人がいるからここはいちゃいけないと教えないと、どこまでも来ちゃう。」


 

町は、県や研究機関と野生動物の行動の分析も行っています。
イノシシやアライグマが長時間滞在する場所を特定。
身を隠す藪や空き家を無くすことで、町から追い払おうというのです。

浪江町 産業振興課 主査 北原厚徳さん
「ここが鳥獣の住処(すみか)じゃないと教えて、人と鳥獣のすみわけを6年前のあるべき姿に戻すこと、それが我々が進めていかなければいけない事業。」
 

高瀬
「この地域では、野生動物を駆除するほかにも新たな対策が検討されています。」

和久田
「まず1つは、対策を担うインストラクターの育成です。
急増した動物に対応するため、県独自の資格制度を作り、役場職員や帰還した住民などを教育して対策の担い手に育てたいとしています。
 

また、浪江町では、ドローンの活用を検討しています。
赤外線カメラを取り付けて、上空からイノシシを見つけたり、イノシシが嫌がる音をドローンから出して追い払ったりする方法も検討するということです。」

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