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2017年4月26日(水)

“ミッフィー”に魅せられて

和久田
「けさは世界で読み継がれてきた、こちらの絵本についてです。」

先週、東京・銀座で始まった展示会。

中澤
「『ミッフィー』の作品で、世界中で愛されているディック・ブルーナさん。
会場には多くの皆さんが訪れて、作品に見入っています。」

今年(2017年)2月、89歳で亡くなった、オランダの絵本作家、ディック・ブルーナさん。
代表作の「ミッフィー」は、世界50か国で翻訳されてきました。

来場者
「もともと大好き、ふたりとも。」

来場者
「現代でも色あせないようなものだと思うので。」

ミッフィーが初めて日本に紹介されたのは昭和39年、東京オリンピックの年でした。

50年以上がたった今も、子どもたちを夢中にさせています。
ミッフィーは、この人にも影響を与えています。

アート・ディレクター 佐藤可士和さん
「ものすごく刺激を受けた一発目がこれ。」

世代を超えて愛されるその理由は、いったいどこにあるのでしょうか?

中澤
「こちらが、ブルーナさんが日本で出版してきた本の数々で、全部で63冊あります。
その主人公となっているのが、『ミッフィー』です。
日本の絵本の中では『うさこちゃん』と呼ばれています。

絵本の作品を1つ、ご紹介しましょう。
『うさこちゃんとうみ』という作品です。
あらすじは、うさこちゃんがお父さんと海に遊びに行くというも内容です。
うさこちゃんは、水着に着替えます。
砂浜で大きな山をつくったり、海に入って遊んだりして、1日中過ごします。
そして最後の部分。」

“でもあたし まだくたびれない。
もっともっといましょうよ!
でも おうちまでかえるとちゅうで
うさこちゃんはねむくなりました。”

中澤
「こんな経験、皆さんもあるのではないでしょうか?
この素朴さゆえに、ブルーナさんの作品は多くの人に感銘を与えてきました。
作品に魅了されたという3人に、お話を伺いました。」

“ミッフィー” シンプルの持つ力

ブルーナさんのトレードマークといえば、シンプルなデザイン。
東京で始まった展示会では、原画やスケッチなどおよそ500点が集められ、その秘密に迫っています。
実はブルーナさんの絵本、「ブルーナカラー」と呼ばれる赤・青・黄色など6色だけで描かれています。

表現もシンプルそのもの。
この絵では、ブルーナさんは傘の周辺に13の雨粒を描くことで、どしゃぶりの様子を伝えています。

キュレーター 服部彩子さん
「(雨粒が)少なすぎても感情が揺さぶられることはない。
多すぎると状況の方が気になってしまう。
ブルーナさんは考え抜いて、この数になっているのかなと。」

こうしたブルーナさんのデザインに、大きな影響を受けている人がいます。
アート・ディレクター、佐藤可士和さんです。

佐藤さんは、企業や美術館などからの依頼で、人々の印象に残るデザインを数多く手がけてきました。




 

アート・ディレクター 佐藤可士和さん
「明らかに他の絵本と違うなと。
『かっこいいな』って思っていました。」

佐藤さんがブルーナさんの絵本に出会ったのは2歳のころ。
今でも、色や線を極限まで減らすブルーナさんの手法に驚かされるといいます。

アート・ディレクター 佐藤可士和さん
「これ空と服の色、一緒なんですよ。
普通一緒だと、ここが抜けちゃうと言うか。

だけど同じで表現していても、ミッフィーの存在感はちゃんとある。
この少ない色数で、これだけの世界が表現できるのは本当にすごいですよね。」

佐藤さんは、デザインを手がける際、ブルーナさんのように、簡潔で優しさのあるものを目指してきたといいます。

アート・ディレクター 佐藤可士和さん
「企業のロゴとか、最低50年間くらいもつことをイメージして考えて作っている。
シンプルで明快で強いことと、温かみがあってとっつきやすいことの両立。
そういうことはブルーナさんから学んでいると思います。」

2月に亡くなったブルーナさん。
絵本を制作している、貴重な映像が残されています。

ブルーナさんはアシスタントをつけず、絵本はすべて自分の手で描いていきました。
色は、さまざまなパターンを試しながら、最もよい組み合わせを選びます。

ミッフィーはもともと、ブルーナさんが自分の子どもに話して聞かせていた物語の主人公。
等身大の子どもの象徴として、絵本で描くようになります。
好きな絵を自由に書く喜び。
大切にしてきたものをなくした時の悲しみ。
幼いころに、誰もが心を動かされた日常の出来事を描いてきました。

ディック・ブルーナさん
「私は絵本を通して、子どもたちに温かい気持ちを届けてあげたいと思ってきました。
そうした気持ちを子どもたちが感じてくれたら幸せです。」

ブルーナさんが届ける “温かな思い”

6年前、日本で東日本大震災が起きた時は、被災地の子どもたちに、涙を流すミッフィーの絵とともに祈りのメッセージを送りました。

被災地の人たちはブルーナさんの思いを、絵本を通して受け止めています。
陸前高田市にある図書館では、ブルーナさんの作品が小さな子どもたちに一番の人気です。

「うさこちゃんの何のお話が好きだっけ?」

子ども
「えーと。」

「一番最初のね。」

この図書館は、被災地の子どもたちに読書の機会を作ってあげたいと、全国からの寄付で建てられました。
開館した時からの図書館司書・中井佳織さん。
これまでの日常を奪われた子どもたちに、ブルーナさんの作品を読ませてあげたいと、まっ先にそろえました。

『ちいさいおうち』司書 中井佳織さん
「ブルーナさんの絵本は押しつけがましくなく、大事なものを教えてくれるよう気がします。
家族と出かけたり、友だちと過ごす中で気づきがあったり、当たり前のことが当たり前にできるって幸せなことですから。」

五味太郎さんが語る“ミッフィー”

最後に、日本を代表する絵本作家・五味太郎さんを訪ねました。
22歳の時に「うさこちゃんとうみ」を偶然手にした五味さん。
読み手の想像力を広げるその表現に、衝撃を受けたといいます。

絵本作家 五味太郎さん
「これ見た時、22歳の俺は『寂しいな』って思った。
俳句の世界みたいな感じがあって、自分の中にざわつきがあって。
彼は、もうこれ以上はそぎ落としてはいけないという、全部そぎ落としたもの、それが残っている。
シンプルゆえのキャパシティーがある。」

五味さんは一度だけ、同じ絵本作家としてブルーナさんと会ったことがあります。
絵本への考え方で、意気投合したと言います。

絵本作家 五味太郎さん
「すべて読み手の力だよ、読み手に力がないと本は成り立たない。
『君もそう思うか、俺もそう思う』って話した覚えがある。
永遠のものであって、子どもの頃から読める本かもしれないけど、何度も読んだ方がいい、人生の中でね。」

読み継がれる ブルーナさんの絵本

和久田
「シンプルなのに温かいものが伝わってくるというのが、不思議ですよね。」

中澤
「絶妙のバランス、シンプルさという表現を皆さんされていましたが、取材の中で印象に残ったのが、『自分自身が小さい頃に読んでいた、大好きだったブルーナさんの絵本を、今、子どもに読んでいます』とか、また、お孫さんに読み聞かせしていますという声もあったんです。
ブルーナさんが亡くなってもなお、作品は生き続けていくのだなと感じました。」

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