これまでの放送

2017年4月14日(金)

熊本地震1年 避難者4万7,000人 仮設住宅は

高瀬
「熊本地震の仮設住宅についてお伝えします。
地震直後に避難生活を送っていた人たちは18万人。
1年たった今でも4万7,000人が住宅の再建などができず、仮設住宅などで生活を送っています。」

和久田
「現地から、熊本放送局の北嶋アナウンサーが中継でお伝えします。」

北嶋
「益城町のテクノ仮設団地です。
県内で最も多い516戸の仮設住宅が建っています。
今もここで1,300人余りが避難生活を続けています。
地震から1年となる今日(14日)、静かな朝を迎えました。
避難している方の中には、1日も早く住宅の再建をしたいと考えている人もいます。
ただ、解体作業の遅れなどもあって再建のメドが立っていないという方も多くいます。
この仮設団地は町の中心部から車で20分ほど、広い土地を必要とするため郊外につくられました。
ただそれでも、少しでも便利に、豊かに生活をしてもらおうと、こうした飲食店など、仮設の店舗が軒を連ねています。

避難生活を送る4万7,000人のうち、およそ4分の1の方が、こうしたプレハブ型などの応急仮設住宅に住んでいます。
それ以外の多くの方が避難生活を送っているのが、「みなし仮設」。
民間の賃貸住宅を仮設住宅とみなしたものです。
3万人以上が暮らしています。

すでにある空き物件を使うので、避難所からすぐに入居することができることなどが特徴で、また建設費がかからないというメリットもあります。
この『みなし仮設』、今後の災害での活用が期待されています。
実際にみなし仮設に避難している方々は、どのような暮らしを送っているのでしょうか。」

みなし仮設 被災者は

リポート:本庄真衣(熊本局)

益城町にある賃貸アパート。
この一室が「みなし仮設」として使われています。 川島トキヱさん、86歳です。

川島トキヱさん
「あそこが炊事、こっちが寝室。」

住んでいるのは一般的な仮設住宅より広く、間取りは3DK。
地震直後は車中泊を強いられていましたが、みなし仮設を選んだことで、いち早く生活を落ち着かせることができました。

川島トキヱさん
「うれしかったです。
すごくうれしかったです。」

「みなし仮設」の仕組みです。
被災者は、自ら不動産屋を訪ね、物件を選びます。
家賃は熊本県が負担しますが、1人暮らしの場合、上限は月6万円と決められています。
川島さんは古くてもいいので、広い家を探しました。
自宅は失いましたが、せめて思い出のある家具を使い続けたいと考えたからです。

川島トキヱさん
「(このベットは)もう10年目、ことしで。
みなし仮設はたくさん自分の荷物を持ってこられる。
うれしいです。」

みなし仮設に課題

北嶋
「この『みなし仮設住宅』ですが、これまでに課題も見えてきています。
それは1人暮らしのお年寄りなどの孤立です。
みなし仮設は県内の広い範囲に分散しています。
支援が届きにくいという現状があります。
阪神淡路大震災や東日本大震災でも、特に1人暮らしの高齢者の孤立が孤独死に結びつく大きな問題となりました。
益城町で取られている対策を取材しました。」

みなし仮設 孤立のリスク

リポート:吉元明訓(熊本局)

益城町から委託を受け、活動する一般社団法人「よか隊ネット熊本」です。
15人のスタッフが働いています。
みなし仮設で暮らす3,900人の町民の健康状態を把握しようとしています。
相談員は、まず入居者の持病や地震後の体調など、健康面での不安や悩みを丁寧に聞き取ります。

「持病はあります。
震災があってから体が、私も弱くなっちゃって。」

団体によるこれまでの調査で、健康に問題があるなど「継続支援が必要」と判断した世帯が35%に上ることが分かりました。
しかし、支援は思うように進んでいません。
その理由の1つが、移動の多さです。

みなし仮設は熊本県の各地に散らばっています。
益城町から100キロ近く離れているところもあります。
この日は4軒回るのに、移動時間だけで3時間かかりました。


 

よか隊ネット熊本 江崎太郎事務局長
「仮設団地だと、1軒行ったらその次も、その次もという形で順番にできるかと思うが、(みなし仮設は)そうできない。
なんとかコミット(関わる)していく取り組みが必要なのかなと思う。」

 

地震から1年。
孤立のリスクが高まる高齢者が増えています。
熊本市内で1人暮らしをする、中村貢榮(なかむら・つぐえ)さんです。
住み慣れた益城町に物件がなく、自宅から15キロ離れた家を選びました。
今も家に積まれたままの荷物。
中村さんは足が不自由なため、1人で整理できずにいます。

中村貢榮さん
「段ボール箱の大きいのもあるし、ちょっと抱えるのも大変だし、これを(整理)するには誰かに手伝ってもらわないと。」

かつては隣近所の人と支え合いながら暮らしていましたが、今はそのようにはいきません。
最近、相談員が心配しているのは、中村さんの持病です。
中村さんは高脂血症を患い、益城町に住んでいたころは毎月通院していました。
しかし、熊本市に移ってからは足が遠のいています。

相談員
「どうですか、体調のほうは。」

中村貢榮さん
「状態はちょっとですね、最近は足も痛い。
益城町に行くのは1時間ぐらいかかるし。」

この日、相談員はこのまま放っておけないと判断しました。
その場で近くの病院に連絡し、中村さんを車で連れて行きました。
久々の病院、病状は…。

医師
「悪玉コレステロールとか中性脂肪もかなり高くなっている。
治療の再開が必要です。」

新たな環境に馴染めず、閉じこもりがちになる被災者。
体調のちょっとした変化などに気を配り、手厚いケアを続けることが必要です。

中村貢榮さん
「助かりました。
病院なかなか行かないからですね、勧められてですね。
おかげさまで、行ってよかったです。」

仮設住宅の研究を行っている、熊本学園大学の高林秀明教授です。
2年目以降は、孤立するリスクがさらに高まるのではないかと危惧しています。

熊本学園大学 高林秀明教授
「見通しがないという不安のなかで、さまざまなストレスで生きる力や希望を失うことも起こりうると思う。
みなし仮設に入っているから大丈夫という認識は変えていく必要があるだろう。
きちんと支援をしていく体制をつくっておくべきだと思います。」

避難生活の課題は

北嶋
「孤独死をいかに防ぐか、熊本地震でも大きな課題となっています。
先月(3月)、同じ益城町内の仮設団地でも60代の男性が亡くなっているのが見つかりました。
孤独死とみられています。
さらに今月(4月)に入って、県はみなし仮設で1人暮らしをしていた13人が死亡したことを発表していて、その原因を緊急に調査するよう市町村に求めています。
ここからは吉元記者とお伝えします。」

高瀬
「これまでの大きな災害で、もともとあった高齢化や過疎化など、地域が抱える問題が一気に表に出る、加速するということが指摘されてきましたが、熊本地震から1年、今はどうなっているのでしょうか?」

吉元明訓記者(熊本局)
「住み慣れた町を離れるという物理的な問題ももちろんあるのですが、これまでに培った地域とのつながりが断たれることによって、大きな問題が生じていると感じました。
みなし仮設は、今後想定される首都直下地震などでも積極的に活用することが国の検討会でも議論されています。
しかし、大都市部にも1人暮らしの高齢者など孤立するリスクの高い人は多くいるため、その支援を早急に検討する必要があると感じました。」

和久田
「こうしたみなし仮設も含めて、熊本では今も多くの方が仮設住宅で生活されていますが、今後の住まい、生活再建の見通しはどうなのでしょうか?」

吉元記者
「熊本県内では昨日(13日)、仮設宅のあと移り住むための災害公営住宅の受付が初めて行われました。

ただ、ほとんどの災害公営住宅がこれから建設される予定です。
多くの被災者が不安を抱いているのが現状です。
被災者に寄り添った、きめの細かい支援が求められています。」

 

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