これまでの放送

2017年4月8日(土)

生きた証しを伝えたい 亡き人をしのぶ“遺品”

二宮
「皆さんは、『遺品整理士』という仕事をご存じでしょうか。
亡くなった人の遺品を、家族に代わって片づける専門の仕事です。」

小郷
「近年、急激に増え、現在、全国におよそ1万7,000人が活動しています。
その現場に密着しました。」

生きた証しを伝えたい 亡き人をしのぶ“遺品”

リポート:猪俣英俊(富山局)

あるじのいなくなった部屋。
ここで1人暮らしをしていた86歳の男性が遺体で見つかりました。
いわゆる「孤独死」で、すでに死後2週間が経過。
病死と見られています。
部屋の片づけをしているのは、遺品整理士の三國健司(みくに・けんじ)さんです。

遺品整理士 三國健司さん
「お風呂上がりにくつろいでたら、急におそらく苦しくなって倒れたのか。
どういう気持ちで倒れていたか、助けを求めていたのか、いろいろ考える。」

部屋から見つかったのは、旅行のパンフレットや大量の写真です。

遺品整理士 三國健司さん
「満面の笑みだね。
本当に遺族いらないのかな。」

整理を依頼したのは、男性の息子でした。
父の遺品に思い入れはないと、全て処分するように伝えていました。
男性は、経営していた会社の倒産をきっかけに、家族関係が悪化。
30年にわたり、妻や息子と疎遠になっていました。
片付けを始めて8時間。
全ての遺品の運び出しが終わりました。

遺品整理士 三國健司さん
「悲しいというか、いろんな思いがある。
お一人で亡くなられて。」

今、三國さんへの依頼で増えているのが、「孤独死」の現場です。

遺品整理士 三國健司さん
「去年、孤独死で亡くなられた方たちのファイル。」

去年は、168件の依頼のうち2割が「孤独死」のケースでした。
その多くが、家族がいるにも関わらずつながりが希薄で、遺品はすべて処分してほしいという依頼です。

遺品整理士 三國健司さん
「イメージ的には、本当に天涯孤独な方がそのまま亡くなるイメージだが、実際そうではなくて、近くに身内がいたりとか。
僕が感じるのは、あまり行き来がなかったのかなとは思う。」

以前は消費者金融の仕事をしていた三國さん。
借金の取り立てのために、借り主やその家族を追い込む日々にむなしさを感じたといいます。
本格的に遺品整理の仕事を始めたのは4年前。
遺品を扱うことの大切さに気付くできごとがありました。
亡くなった夫が大切にしていたものを探してほしいと、ある女性から依頼を受けました。
大量の遺品の中から、なんとか探し出したのは、手袋でした。
夫は幼いころ、母親に編んでもらったその手袋をいつもうれしそうに見せていたといいます。

遺品整理士 三國健司さん
「その人の今まで生きてきた人生というか、そういうものがかいま見える。
そういう気持ちに寄り添っていかないとダメだなと。
それが(この仕事の)神髄かなと。」

 

遺品は、亡くなった人の生きた証しだと考えるようになった三國さん。
あの孤独死した男性の遺品の一部を、悩んだすえ持ち帰っていました。

遺品整理士 三國健司さん
「渡すことによって、どういう反応というか、逆に傷つけてしまうこともあるかもしれないとか、自分との葛藤というか。」

先月(3月)、三國さんは男性の息子のもとを訪れました。

遺品整理士 三國健司さん
「すべて処分してほしいということを聞いていたわけなんですけど、こういった満面の笑みでカメラ見て笑顔をされているのは、どうしても僕の中では、お渡しした方がいいかなって思いがあったので。」

男性の息子
「あまりつきあいはなかったんですけど、いろいろしていたんだなと。
いろいろしていただき、ありがとうございます。」

遺品整理士 三國健司さん
「結果的によかったと思う。
僕も一安心できた。」

遺品と向き合い続ける三國さん。
希薄になった家族の関係を見つめ直してほしいと考えています。

遺品整理士 三國健司さん
「ふとした時に思い出すものじゃないが、こういった写真とかを見て、何かを感じてもらえたら。
何か感じ取ってもらえる部分があれば、それはそれで僕の仕事の1つだと思う。」

生きた証しを伝えたい 亡き人をしのぶ“遺品”

二宮
「三國さんのような遺品整理士の仕事が増える背景には、孤独死の増加があります。」

小郷
「三國さんは今、生きているうちに身の回りを整理する『生前整理』にも力を入れています。
誰に何を残したいか考えることをきっかけに、人とのつながりも見つめ直してほしいと話していました。」

Page Top