これまでの放送

2017年4月7日(金)

老いを笑い飛ばせ! 老漫談師が行く

高瀬
「けさのクローズアップ。
お年寄りに笑いを届けるコメディアンです。」

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「“錦織”どころか“肩こり”。」
 

「老い」をテーマにした辛口トークが人気のアマチュア漫談師、間六口(はざま・むくち)さん、71歳です。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「自転車に乗って買い物に出かけ、コンビニエンスストアへ入ったとたんに、何を買いに来たのかわからなくなって、すぐ引き返してしまった。
しかも、引き返すとき…、自転車で来たことすら忘れた。」

高齢化が進んだ過疎地を中心に公演を行っています。

「本当、楽しい。」

「ポカポカしている、笑って。」



 

高瀬
「間六口さんが活動するのは、高知県。
高齢化率が30パーセントを超え、全国で2番目の高さです。」

和久田
「間さんはここで10年以上、無償で公演を続けています。
その活動に密着しました。」

老いを笑い飛ばせ! 老漫談師が行く

リポート:杉本郁也(NHK高知)

高知の山あいを走る、間六口さん。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「鶴は千年、亀万年、隣の夫婦は…あと1年。」

地域の町内会などから依頼を受け、どこへでも足を運びます。
この日は、小さな集落の集会所を訪れました。
 

中に入ると、たくさんのお客さん。
人気があるのは、お年寄りの共感を呼ぶ『あるある』ネタです。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「(小さい子を)高い高いもできませんよね。
“高い高い”したら、自分が“他界”したりして。」


 

間さんがお笑いを志したのは、高校生のころ。
プロを目指しましたが、父親に猛反対され、断念しました。
その後、公務員として職業安定所に就職。
しかし、51歳の時、転機が訪れました。

ボランティア活動で高齢者施設をまわった時に、好きだった漫談を披露したのです。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「“間さん、今年何もいいことがなかった。つらいことばかりだったけど、きょうは心の底から笑わせてもらって”、涙を流さんばかりに、喜んでいただいて、お年寄りの皆さんに喜んでもらえたらとやり始めた。」

定年後、間さんは本格的にお笑いの活動を始めました。
老眼や、もの忘れなど、自らも老いを感じることが多くなった時期でした。
間さんは、その「老い」をネタにしようと思いつきました。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「ここで買い物をして、終わったあと(車で来たのを)まったく忘れて、この道を歩いて5分で帰ったが、帰ったら車がないと気がついて、これはネタにできるなと、一つネタにした。」

 

「老いを嘆くのではなく、むしろ受け入れて楽しく生きていきたい」。
間さんはそう考えたのです。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「先が見えない不安しかないというのが現状。
自分がつらかったら、笑うべきじゃないと思う人もいるけど、“笑い飛ばして、前向きに生きよう”ということを発信したい。」

毎年、間さんが訪れている場所があります。
四万十市の玖木地区です。
暮らしているのはおよそ30人。
ほとんどが高齢者です。

この地区にとって、間さんの公演は一大イベントです。
公演を翌日に控え、会場の掃除が行われていました。



 

酒井秋子(さかい・あきこ)さん、84歳です。
毎年、夫婦で間さんの公演に出かけてきました。
しかし3か月前、夫はガンで亡くなりました。
楽しみにしていた公演ですが、今年(2017年)は行くのをやめようかと考えていました。

酒井秋子さん(84)
「お父さんが亡くなったことが、いちばん(つらい)。
何もかもやる気をなくし、年をとってしまった、老いを感じてしまった。」

公演当日。
会場では、地域の人たちが間さんを歓迎する料理を作っていました。
その中に、酒井さんの姿がありました。
ふさぎ込む様子を心配した友人が連れて来たのです。

酒井さんの友人
「家にいたら泣くばっかり。
笑ってほしい、ひとときでも。」


 

待ちに待った公演。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「息子がおやじにぐれてやると言えば、おやじは息子にぼけてやると応酬する始末。」

酒井さんは、なかなか笑うことができません。
自ら見聞きした老いをユーモラスに語り続ける間さん。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「この間の朝も、スリッパがないって一生懸命、私スリッパ探してましたら、どこにもない。
それを家内が見つけて、あんだけに言ってるのにお父さん、もう脱ぐとこ決めとってよって言う怒る家内の足元見ましたら、私のスリッパをはいてました。」

酒井さんも思わず笑顔に。

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「電子レンジのチーンという音に思わず手を合わせる。
お昼のサイレンに思わず防空ずきんをかぶりたがる。
私の友人で、先日、奥さんを車に積んでスーパーマーケットへ買い物に出かけ、(妻を)積んで帰るのを忘れたという方がいます。」

酒井秋子さん(84)
「笑えるように努力して、明るく生きていかないといけない。」

1時間半の公演。
会場は笑顔に包まれました。

酒井秋子さん(84)
「おかげさまで、元気いただきました。」



 

アマチュア漫談師 間六口さん(71)
「1人では笑えない。
どんなときに、人間笑うかというと、親しい友人、そういう輪の中で笑いが出てくる。
1人じゃなくて、みんなで笑える状況を作っていったら、前向きな気持ちになって、少しだけ、心豊かな気分になれる。」

お年寄りに笑顔を届ける、間さん。
ともに笑えるこの場所が、「老い」を前向きに生きる支えになっています。
 

高瀬
「みなさん一緒に準備をして迎えて、一緒に笑って、一緒に見送ってっていう、その機会、場を間さんは提供しているんだなということですよね。」

和久田
「心待ちにしていらっしゃるのが伝わってきました。
間さんは、これまで公演で300か所以上をまわってきました。
そして去年は、アマチュアの落語家など、5人のメンバーと共に過疎地などを巡る公演を始め、さらに活動の幅を広げています。
間さんは、自身も年を重ねて、ネタになることも増えてきたので、今後も公演を楽しみにしてほしいと話しています。」

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