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2017年2月28日(火)

日本の漁業脅かす「不審船」の正体は…

阿部
「日本海で、国籍不明の船が、かつてない規模で違法操業を行っていると見られています。」

世界的な不漁で、価格が高騰しているスルメイカ。
その漁場で去年(2016年)秋から、不審な船が相次いで目撃されています。


日本海に姿を現すようになった国籍不明の船。
日本の漁師が撮影しました。
古びた木造船の甲板には、大量のイカ。

別の船に書かれていたのは…。
不審船の数は多い時で200隻を超え、かつてない規模となっています。

漁師
「怖い、気持ち悪い。」

漁師
「死活問題。」

日本海に押し寄せる不審船。
その実態に迫ります。

阿部
「こちらは日本の『排他的経済水域』。
日本の船だけが漁を行える場所です。

この水域で、去年10月頃から、不審船が相次いで目撃されている場所があります。
日本海の中央、『大和堆(やまとたい)』と呼ばれるエリアです。
暖流と寒流が交わる、国内有数の豊かな漁場として知られています。」

和久田
「不審船はどこからやって来たのか?
漁師が撮影した不審船の映像を分析すると、その正体が見えてきました。」

日本海に続々と出没 「不審船」の正体は…

リポート:吉岡桜子記者(金沢局)

不審船を度々目撃しているという漁師に会うため、石川県能登町の漁港に向かいました。
年間で5,000トン以上のイカが水揚げされる、全国有数の港です。

船長の府中雄信(ふちゅう・たかのぶ)さんです。
去年の秋以降、日本の水域で数えきれないほどの不審船を目撃しました。
30年以上漁を続けてきて、初めてのことです。

漁師 府中雄信さん
「このくらいの映像にしか映ってないけど、これ以上の船がいる。」
 

去年12月、大和堆のエリアを記録したレーダー画像です。
赤い線の内側、日本の水域に映る小さな点。
そのほとんどが国籍不明の船だと言います。

漁師 府中雄信さん
「3~4回、網を上げているのを見た。
危ないからこっちがよけたり、そういう状態を何回もやっている。
われわれが、自国の排他的経済水域だけれども遠慮している状態。」

 

漁師たちが撮影した不審船の映像をよく見ると、ハングルのような文字が書かれています。
朝鮮半島情勢に詳しい専門家に、映像を分析してもらいました。



 

聖学院大学 宮本悟教授
「北朝鮮の北東部の地名。」

チョンジンは、北朝鮮の北東部にある漁業が盛んな町です。
不審船は、ここから500キロ離れた大和堆まで来ていたと見られます。
宮本さんが注目したのが、小型の船であるという点です。

聖学院大学 宮本悟教授
「もともと遠洋漁業をするための船ではなくて、近海用の漁船。
無理に日本海の遠洋まで出してきた。
冷蔵施設もついていないはず。
船上でイカを干して持って帰る作業をしている。」 

北朝鮮は国内の食糧不足を補うため、数年前から水産業の拡大を目標に掲げています。
軍は漁師にノルマを課し、水揚げの多い者を表彰。
こうした国の政策のもと、多くの漁師が危険を冒して漁を行っていると見られています。


 

聖学院大学 宮本悟教授
「命がけで来ているので、そう簡単に引くことはない。
大和堆は日本海で有数の良い漁業地。
もっと多くの漁船が大和堆に押し寄せる可能性がある。」

 

漁師が撮影した映像の中には、北朝鮮とは別の国のものとみられる船も映っていました。
船尾にはためく赤い国旗。
中国です。

撮影された写真からは、北朝鮮よりも大型の船であることが分かります。





ひときわ目を引くのが、船から突き出たアームのようなもの。
「かぶせ網」と呼ばれる中国独特の漁法に使うものです。




かぶせ網漁は、強い光でイカや魚を集め、アームにつるした網で魚を一気に巻きあげる漁法です。
1匹ずつ釣り上げる日本とは異なり、乱獲につながるおそれがあります。
漁師たちは、かぶせ網漁を目撃していました。

漁師 入口茂さん
「こちらがイカを釣っているところへ(来て)40メートルくらいあるアームを四方にかけて操業していた。
俺らからすれば脅威、網は脅威。」


 

もともと中国は日本海に排他的経済水域を持っていないため、自由に漁を行うことができません。
そんな中国漁船が日本海に進出する「足がかり」を与えたのが、北朝鮮だとみられています。

去年(2016年)8月、韓国で報じられたニュースです。
中国の漁船が北朝鮮から日本海での漁業権を買い取ったという内容でした。




契約書には、1隻当たり200万円で、300隻の船が3か月間、北朝鮮の沖合で漁を行うことができると書かれています。
アジアの海洋政策に詳しい専門家は、中国の日本海進出の背景には、自国水域での水揚げが大きく落ち込んでいることがあると指摘します。



 

東海大学 山田吉彦教授
「中国の漁船が東シナ海で魚を取り尽くしてしまう。
魚やイカを求めて日本海に入ってきて、大和堆あるいは北海道沖まで進出して密漁をしている。
日本の水産資源の行く末が心配になる。」

相次ぐ違法操業 どう取り締まる?

こうした不審船をどう取り締まるべきか。
日本と同じように違法操業に悩む韓国は、警戒を強めています。
去年10月、警備艇の武器使用の規制を緩和。
その翌月には、違法操業を行う中国の漁船に対し、発砲も行われました。

 

安全保障に詳しい 韓国のシンクタンク リ・キボム研究員
「武器使用で中国漁船が恐怖を感じ、違法操業が減ったのは事実。
効果があったと世論や政府も判断している。」


 

日本国内でも、対策を求める声が高まっています。
先月(1月)違法操業に悩む石川県の漁師たちが、全漁連に深刻な現状を訴えました。

漁師
「やり方があくどい。
あのやり方だったら、イワシ1匹残らなくなる。」

漁師 府中雄信さん
「生活問題にかかわる。」

こうした声は国にも届けられました。
先月下旬、地元の議員たちが農林水産大臣に取り締まりの強化を求める要望書を手渡したのです。



 

山本農相
「海上保安庁や水産庁の監視船などを駆使しながら、皆さんの不安を少しでも解消できるようにがんばっていきたい。」



 

漁師 府中雄信さん
「他の人にも立ち上がってもらわないと、日本の排他的経済水域は乗っ取られる。
何とか対応して、日本の資源を守るように動いてほしい。」

日本海の違法操業 地元の受け止めは

阿部
「金沢放送局の吉岡記者に聞きます。
違法操業は北朝鮮と中国の船による疑いが強まったわけですが、日本の漁師にとっては切実な問題ですよね。」

吉岡桜子記者(金沢局)
「今回の取材で話を聞いた漁師の方たちは、これほどの数の不審船を見たことがなく、驚きとともに強い恐怖を感じていました。
中には、漁をしている時に不審船が近づいてきて、衝突を避けるために、その場から離れざるをえなかったという漁師も複数いました。
いつ事故が起きてもおかしくないという声もあります。
違法操業の船がどれくらいの量のイカや魚をとっているのかは分かっていませんが、どの漁師の方たちも『かつてない深刻な事態だ』と話していました。」

和久田
「日本海での取り締まりはどうなっているのでしょうか?」

吉岡記者
「日本海でも取り締まり自体は行われています。
ただ、専門家の中には『日本海の大和堆では、これまで不審船の目撃があまりなかったので、取り締まりの回数は尖閣諸島がある東シナ海などに比べて少なかった』と指摘する人もいます。
まずは日本海でもパトロールを増やすべきです。
日本は原則、武器を使用しませんが、取締船が姿を見せるだけで不審船はその場から逃げるので、漁の期間に集中的に行うだけでも一定の効果があります。
漁師たちだけで違法操業を食い止めるのは困難です。
一刻も早い国レベルでの対応が求められます。」